KTM 1290 SUPER DUKE GT
工具がいらず片手で高さが調節できるスクリーンと、尖ったノーズのヘッドライトカウルとシュラウド型サイドカウル(KTMではスポイラーと呼んでいる)で前側はボリュームがあって、跨ると1290 SUPER DUKE Rの面影を感じないほど違う。ヘッドライト、カウル、メーター類は操作の妨げにならないようにフレームマウントになっている。835mmのシート高に変更はないけれど、長距離を考慮してクッションはヒップポイント部分に厚みをもたせてある。アルミパイプを使ったシートフレーム(メインフレームはスチール)は、新設計。これは後ろに乗るライダーの快適性を考え、延長したことと、専用のフレームを用意しなくてもパニアケースをワンタッチで装着できるシステムにしたことで、剛性が必要になったからだ。
シートに腰を降ろして両足を地面に伸ばすと身長170cmのやや短足で、両足のつま先がやっと届くくらい。見た目はかなり迫力があるけれど、重さは国産の4気筒エンジンベースのGTモデルより明らかに軽い。それもあって、片足ステップで、片足が地面に届く状態で支えている状態での不安は小さい。少しだけ下側に垂れたハンドルバーの幅がより広くなっていることで、力点が遠くなり、掴んで支えるのがより軽い力で出来る。
燃料タンクは5L増やした23Lとツーリングモデルらしく容量アップしたけれど、ニーグリップ部分はほとんど変わらずスリムなのが気に入った。軽快な運動性能にこだわったと言うだけあって、それに関するこだわりが随所にある。1290 SUPER DUKE Rと同じ最高出力と最大トルクのままの水冷75°Vツインエンジンもそうだ。しかし、流石にそのままではなく、トルク特性など扱いやすくした専用仕立てだ。ツーリングモデルらしく乗りやすくはしているけれど、速さはそのままでいたいというもの。
走りだすと、確かに加速はパワフルで、『スポーツ』『ストリート』『レイン』と3つある出力特性モードの『スポーツ』にしておくと、低回転からトルクフルで、そのままフラットな特性で高回転域までスムーズだ。そしてアップ側だけ機能するクイックシフターを使ってクラッチレバーを使わずにシフトアップしていくと、矢のように突き進む。
スロットル操作に対してリニアながら過敏すぎず、どこからでも右手捻ればグイっと前に出た。
フレームマウントになったヘッドライトや外装のおかげもあってかハンドリングは軽やか。流石に1290 SUPER DUKE Rと比較すると分が悪いが、つづら折りを右へ左へ倒しこみながら積極的に走りたくなるもの。エンジンも含め基本的にスポーティーな味付けながら、神経質なところはない。このバランスがこのバイクのキモだろう。右手にダイレクトなレスポンスで湧き上がるように回転上昇する爽快さ。乗り始めはライダーによってはイメージするGTモデルよりちょっと過激だと感じるのではないかと思ったほどだが、段々と慣れ、理解が進んでパワフルさが面白くなっていった。
大きな特徴のひとつが前後にセミアクティブサスペンションを採用したこともある。ハンドルスイッチで、『コンフォート』、『ストリート』、『スポーツ』からダンピングが選べ、ハブのセンサーと加減速から判断して挙動を安定させる働きを持つ。舗装の状態がいいワインディングだとダンピングを『スポーツ』にして、エンジンも『スポーツ』で思いっきりGをかけて走ってもへこたれず、俊敏で気持がちいい。しかし路面が荒れたワインディングをそのまま走ると、はっきりと跳ねる感じ。不安定になるまではなかったけれど、単純にそのままだと疲れる。私の好みとしては、ワインディングと街中で走る場合、快適性と安全性でダンピングは『ストリート』にしておくのがちょうど良く感じた。高速など巡航は動きにフラット感が出て、疲れにくい『コンフォート』がぴったり。
MSC(モーターサイクル・スタビリティ・コントロール)によって統括制御される、フロントブレーキをかけると自動的にリアブレーキの入力もするC-ABSとトラクションコントロール。ワインディングの下りや上りでフル減速しても効きと安定感も好印象。ちょっと砂の浮いた滑りやすい部分を見つけわざと走るってみると、トラクションコントロールの介入が分かるが、ベースの1290 SUPER DUKE Rと同じく制御は自然だ。バックトルクリミッターと急坂発進を助けてくれるヒルホールドコントロールなど、ツーリングモデルとしての快適装備も充実。
それでも間違いなくこの1290 SUPER DUKE GTの真骨頂はスポーツライディングだ。スロットルをどんどん開けたくなる走り。いかにもKTMらしい。ツアラーが欲しいけれど、落ち着きすぎず、ちょっと飛ばしても乗りたいとやんちゃな心がうずく人ならうってつけだ。
1290 SUPER DUKE GTのライディングポジション。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます) |
KTM 690 DUKE R
見た目は変わっていないようで、実は完全フルモデルチェンジの690 DUKEと690 DUKE Rは、パワーとトルクが向上していることもさることながら、振動が低減され、ドライバビリティが良くなるなど質が上がったことが印象的だった。特にこの690 DUKE Rは、スタンダードモデルの690 DUKEからフルアジャスタブルのサスペンションや、アクラポビッチマフラーなどパフォーマンスを上げたものだけあって、スポーツライディング好きにはたまらない運動性能を持っている。旧型より剛性感があり、思ったようにコントロールできる操作性に磨きがかかった。150kgを切っている乾燥重量。やっぱり軽いことは大きなメリットだ。
『スポーツ』『ストリート』『レイン』と3種類のライディングモードに、トラクションコントロール、エンジンブレーキを緩和するMSR(モーター・スリップ・レギュレーション)など、高度な制御も加わって、スタビリティは良好。ブレンボのモノブロックキャリパーからなるブレーキのダイレクトな効きとタッチは申し分がない。確実な進化がそのまま気持ちよさと楽しさに繋がっている。せっかくなら見た目も変えて欲しかったと思うのは贅沢かな。
690 DUKE Rのライディングポジション。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます) |
オレンジフレーム、オレンジリム、クロームグラフィック、LEDインジケーター、ピリオンシートカバーなども採用。 | 新デザインのカラーTFT採用ダッシュボード。LC8モデル同様のメニューファンクションコントロール。ライトセンサー内蔵。 | 長距離ライディング時の快適性を向上させたシート。ライダー側は動きやすさを考慮した形状に、パッセンジャー側は快適性を向上。シート幅は抑え気味に。 |
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