戸井十月さんと言えば、バイクでの旅。その集大成が1997年に始めた五大陸をオートバイで巡る『五大陸走破の旅』だ。

 北米大陸の旅に始まり、オーストラリア大陸、アフリカ大陸そして南米大陸。最後はユーラシア大陸横断の旅。2009年7月にポルトガルのロカ岬をスタート。4ヶ月後、ロシア沿海州のウラジオストクまで、ホンダ・アフリカツインと共に3万キロ以上を走り、さらにフェリーで富山に渡り、自宅まで自走で帰り五大陸走破の旅を終えたのは11月7日だった。

 この旅の記録は、NHKで『戸井十月ユーラシア大陸3万キロの旅』として4回にわたり放映された(ちなみに今回のバハ挑戦も2月7日夜8時からNHK BSプレミアムにて放映される予定)。

 そんな戸井さんを、昨年の3月病魔が襲った。肺癌の宣告だった。手術を選択しようとした戸井さんに、信頼できる医者は訊いた。

「あなたはこれからも仕事をしたいですか? 世界を旅したいですか? オートバイにも乗りたいですか?」

 片方の肺のほとんどを除去してしまうと、これまでのような仕事は出来ない、バイクで旅することも出来ない、と言われたのだ。

 放射線と抗がん剤治療を選び、6ヶ月間、治療に専念した。

 そして10月、担当医から「すっかり直りました」の太鼓判が。

 治療中から、戸井さんは決めていた。

「直ったらバハを走ろう。その挑戦で自分が元気になったことを確かめよう」