ハーレーのニューモデル「ロードスター」は、2009年に発売されたXR1200以来の”スポーツモデル”としてのニューモデルであること。また先に発売された、リアに2本サスペンションを持つダイナフレームにスクリーミンイーグル製パーツで武装し排気量を1801ccにまで拡大したニューモデル「ローライダーS」がカリフォルニアで試乗会を行ったのに対し、「ロードスター」は南フランスのワインディングを中心に国際試乗会を行うこと。それらをアタマの中でグチャグチャとかき混ぜて、「ロードスター」が現行ハーレーダビッドソンのラインナップの中でどんな使命を背負って登場するかを想像してみる。するとそれは間違いなく、”スポーツするハーレー”という、ハーレーが創業以来追求してきた世界を体現した物であるであろうし、欧州を中心にアメリカにも飛び火している”ニューエイジ・カスタムシーン”や、ハーレーが世界中で推し進めるハーレーカスタムの新しいキーワード”ダークカスタム”にハマる物なのだろうなぁと。当然、そのライバルとなるのはBMW R nineTでありドゥカティ・スクランブラーであり、トライアンフ・スピードツインやスラクストンと言った新型水冷ツインエンジンシリーズだろうなぁ、とイメージしたわけです。
この想像はある部分では当たっていたし、ある部分では外れていました。
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当たっていた部分は、ハーレーが”ニューエイジ・カスタムシーン”に切り込むための急先鋒が「ロードスター」であると言うこと。ハーレーを手に入れた世界中のユーザーのうち92%が、大なり小なり、カスタムを行うのだそうです。そのカスタムにおけるハーレーの新しいキーワードが、ロードスターも加わった「ダークカスタム」カテゴリーです。いわゆる”見せびらかし系”のカスタムじゃなく、シンプルなバイクらしいエッセンスと操る楽しさに溢れた車両をベースに、カスタムによってユーザーの個性や好みを反映させ、その個性を際立たせるためにベースである車両をあえてブラックアウトしたのが”ダークカスタム”の基本。ビッグでワイルド、というステレオタイプのハーレーカスタムの世界を覆すスポーティでモダンな、ハーレーカスタムシーンの新しいカタチなのです。
それを理解したとき、フロント19インチ/リア18インチというホイールバランスと水平基調のサイドシルエット、そして低く構えたハンドルポジションの理由が理解できたのです。開発陣は”カフェ”という言葉を使っていましたが、それをロッカーズを中心とした”カフェレーサー”カルチャーとイコールにすると話がややこしくなります。現在のカスタムシーンで使用されている”カフェ”や”ボバー”や”チョッパー”や”ブラット”といったカスタムバイク(シーンも含む)のカタチは、その起源からは少しカタチを変え、そのマインドを持ったカタチと言った方がしっくりくるくらい、拡大解釈されています。ですから「ロードスター」が言うところの”カフェ”も、そのマインドを持つスタイル、くらいに解釈すると丁度良いのでは、と思います。
しかしこの前後ホイールサイズとリアサス延長によりグッとリアが上がり、ネイキッドバイク的な軽快なシルエットとなったことで、スクランブラーやトラッカー、そしてそれこそカフェスタイルへのトランスフォームも容易に想像が付きます。もちろんそれはハーレーの狙いであり、これまでアメリカンテイスト系のファクトリーカスタム・モデルのベースとなってきたスポーツスター系を本来のスポーツテイストに戻すとともに、各メーカーが盛り上げる”ネオクラシック系”カデゴリーへと送り込む刺客としたわけです。
また想像と外れていた部分、というか僕が勝手にあらぬ方向に妄想を膨らませてしまい、そのイメージとギャップがあったというのが走りの部分でした。間違った妄想へと進むターニングポイントは前後ホイールサイズに加え、これまたXR1200以来となる倒立フォークの採用、そして開発陣が”アタックモードのライディングポジション”と説明した、バーハンドルながら低く構えたハンドル位置でした。ということは、エンジンをギュンギュン回して、グッとフロントブレーキを掛けながらバンバンっとシフトダウンしてハングオン的な、ロードスポーツのような走りをしてしまったのです。これがどうもしっくりこない。ブレーキのタッチだって良いし、サスもよく動いているのに。
で、いろんなことを試しながら乗っているところ、過剰なフロント荷重をやめ、ワイドなギア比を生かしてシフトチェンジを減らし、エンジンをしっかり回して乗るとじつに気持ちが良い。大排気量2気筒エンジンといえば”ドコドコ感”ばかりが強調されるが、それを高回転まで回すとその鼓動感は爆発間隔の短いビートへと変わり、それもまた大排気量2気筒エンジの楽しさである、と常々思っているのですが「ロードスター」はまさにそんなハーレーエンジンのビートを感じながら、ハーレーらしいスポーツライディングを楽しむことができるマシンでした。
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チョッパー的なスポーツスターより、スポーツするスポーツスターが好きな自分にとっても、この「ロードスター」をベースにスポーティなカスタムマシンがたくさん登場するんじゃないか、と期待が膨らむ1台でした。欧州のカスタムシーンが大好きで、いま興っているシーンにハーレーの影が薄いことに寂しさを覚えていただけに、「ロードスター」によってどんな化学反応が起こるのか、大いに期待したいところです。
(レポート:河野正士)
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ハンドルの高さに対して、ステップはやや前方にある、国産ネイキッドマシンとは異なるポジションだが、違和感があるほどでも無い。個人的にはこのハンドル位置を生かすならもう少しバックステップを、ステップ位置を生かすならダートトラックバーをセットしたい。
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身長170cm、標準的な日本人体型の筆者が跨がり、両足の踵がベッタリ地面に着く。
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「ロードスター」のアンベールとプレスカンファレンスが行われたのはディーラー/ハーレーダビッドソン・マルセイユの店舗内。
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ハーレーダビッドソン社のプロダクト・プランニング・ディレクター/ポール・ジェームス氏。
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「ロードスター」をデザインしたハーレーダビッドソン本社のインダストリアル・デザイナー/ベン・マクギネリー氏
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試乗前、ホテルの前にズラッと並べられた「ロードスター」。休憩先で渡されるミネラルウォーターのパッケージもカスタムされていた。
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2日間の試乗で約300kmを走行。そのほとんどがワインディングだった。ワインディングに向かう市街地で信号につかまった以外はノンストップで走行可能。天気も良く、じつに気持ちが良い。
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φ43mmのカートリッジ式倒立フロントフォークを採用。ABSを標準装備する。
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2本ひと組のスポークがクロスするようにデザインされたアルミキャストホイール。ダンロップ製ラジアルタイヤ/GT502を装備する。
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タンクはスポーツスター・ファミリー共通。リアサスペンションを伸ばしたことでリアが高くなり、水平基調が生まれている。
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バータイプながら低くセットされたハンドル。トップブリッジやアンダーブラケットは、倒立フォーク採用に合わせ専用に開発されたものだ。
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リブ付きのシート。ニーグリップがしづらいタンク形状であるため、ステップを踏ん張り、シートに腰を押しつけるようにライディングすると上体をキープしやすい
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エンジンは1200スポーツスター共通の1201ccのエボリューションモデル。エアクリーナーボックスは”デニム仕上げ”と呼ばれる梨地仕様。
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専用に開発されたショートタイプのサイレンサー。低くセットされたステップ位置がよく分かる。
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ストローク量約100mmのリアサスペンション。自由長を伸ばし水平基調を生み出すシルエットを構築している。
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■Harley-Davidson ROADSTER 主要諸元
全長:2,185mm、ホイールベース:1,505mm、最低地上高:150mm、シート高:785mm、車両重量:259kg、燃料タンク容量:12.5リットル、エンジン種類:空冷4ストローク45度V型2気筒OHV2バルブ「Evolution」エンジン、排気量:1,201cc、内径×行程:88.9×96.8mm、圧縮比:10:01、最大トルク:101Nm/4,250rpm、燃料供給方式:インジェクション、トランスミッション:5速、レイク:25度、トレール:140mm、タイヤ:前・120/70R19 M/C 60V、後・150/70R18 M/C 70V●メーカー希望小売価格:1,540,000円(ビビッドブラック/税込)、1,562,000円(モノトーン/税込)、1,584,000円(ツートーン/税込)
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