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第95回 セパン合同テスト TurnThe Page

 2016年最初のプレシーズンテストは、ヤマハファクトリーが他に先んじる形で好調なスタートダッシュを決めた。2月1日から3日まで、マレーシア・セパンサーキットで行われたこのテストでは、ホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ MotoGP)が総合トップタイムを記録。テストに参加した全選手中で唯一、2分台を切る1分59秒580に入れ、2番手につけたチームメイトのバレンティーノ・ロッシを0.976秒も引き離すタイムをマークした。
 当セパンサーキットの非公式最速タイムは、ちょうど1年前のプレシーズンテストでマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が記録した1分58秒867で、公式記録は昨年のレースウィーク予選でダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)がポールポジションを獲得した際の1分59秒053。今回のロレンソのタイムはそれらと比較すればやや遅いようにも見えるが、今年は公式タイヤサプライヤーがブリヂストンからミシュランへと変わった初年度で、しかも共通ECUソフトウェアも導入されていることを考慮すれば、このロレンソのタイムは上々の仕上がりといえそうだ。さらに今回のテストでは、2日目にある選手のソフトコンパウンドのリアタイヤがバーストするという一件が発生したため、以後の走行ではハード側一本に絞られることになった。もしもソフトタイヤのタイムアタックが実施されていれば、選手たちのラップタイムはここからさらにコンマ数秒、あるいは1秒近く短縮されていただろう。
 もちろん、今回のテスト結果だけでシーズン全体の帰趨を占うことはできないが、セパンサーキットはどちらかといえばホンダの得意コースで、ヤマハは総じて苦戦を強いられてきた。その地で大きく他を引き離すトップタイムを記録したことの意義は大きい。
 3日間のテストを終えて、ロレンソ自身もじつに満足げな表情で「いろいろなことがうまく噛み合って、自分たちはミシュランの特性をうまく引き出すことができている」とテスト内容を振り返った。その一方で、サテライト勢のTech3チーム2台がやや苦労をしている様子だったことも指摘して「ヤマハ全体がミシュランにうまく合わせこめているというわけでもなさそうで、そう簡単な話ではないと思う」と留保もつけた。このあたりのコメントには、ロレンソの慎重な性格がよく滲み出ている。
「一回のテストを終えただけだから、自分のライディングスタイルがミシュランに合っている、とまではいいたくないけど、それでも今のところ感じは悪くない。今回のリザルトは2台のヤマハファクトリーが1-2だから、普通以上に意義は大きいかもね。他のコースではドゥカティやホンダもぐっと改善してくるだろうから油断はできないけど、もし明日が決勝レースなら、自分たちが今は最強だと思うよ」
 では、現状の彼らの改善ポイントは何なのだろうか。
「ま、あったとしても、今はまだちょっと言えないね」
 そう言いながらニヤリと笑みを見せる様子からしても、どうやら彼らの開幕に向けた滑り出しは上々、といえそうだ。


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ECUソフトは共通化されても、手元の操作系は昨年同様。

セパン

#93
ケガがなかったのは本当に幸い。 テスト三日目15時40分現在の順位。
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 一方、チームメイトのバレンティーノ・ロッシは、このセパンテストでロレンソが図抜けて速かったことを充分に認めたうえで、「でもまあ、今回はぼくが汚れ仕事(セットアップの模索やデータ収拾等)を受け持って、彼はパフォーマンス発揮に集中していたからね」とも話した。それが悔し紛れの軽口かどうかは措いておくとしても、タイヤや電子制御など様々な条件が大きく変わった状況下でヤマハファクトリーが1-2、しかも自身も他陣営を圧する2番手につけたことに、ひとまずは大いに満足しているようだ。
「2014年(前回の2年契約更新を行い、現役続投を決断した年)も、テストとシーズン前半は自分がまだ続けていける力を持っているかどうかを見極めるために重要な時期だったけど、今回も2番手につけることができてよかった。(まだ現役を)続けたいと思っているのでハッピーだよ。こういう良い位置でいられるために、がんばるよ」
 ヤマハが好調なスタートを切れたのは、共通ECUソフトやミシュランタイヤをライバル陣営よりもうまく使いこなせている点も大きい。これらの要素について、ロッシは「ヤマハの技術者たちは優秀だから、きっとこれくらいのレベルに煮詰めてきてくれるだろうと思ってたよ」「去年のミシュランに合わせたバイクに仕上げてきたけど、ミシュランはさらにそこから進歩している、というのが今の状況。今の自分たちがトップスピードでドゥカティやホンダと比べてどのあたりにいるのかは、まだわからないね。その差を詰めることが今の課題。去年はそこだけがウィークポイントだったから」とも話している。


#46
この年齢でこのタイム。驚異的です。

吉川

中須賀
テストチームの吉川監督と中須賀選手。 なんだかいろいろ試していました。

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 対照的に、やや苦戦気味の出だしになったのがホンダ勢だ。捲土重来のチャンピオン奪還を目指すマルケスは、ロレンソ、ロッシに続く3番手タイムにつけたものの、内容面ではまだまだ課題含みであると話した。
「(ベストタイムの)差はそんなに大きく見えないかもしれないけど、問題はレースのリズム。周回ごとに、ギャップはどんどん広がっていくからね。1周ならまずまずだとしても、レース全体のリズムを見ると、この差は大きいよ」
 残りのテスト日数は、オーストラリア・フィリップアイランドで3日、開幕戦が行われるカタール・ドーハで3日の計6日である。この短い時間に、ライバルとの差をどれだけ縮めることができるのか。
「がんばって詰めていくよ。今回はホンダの得意コースだったけど、苦労した。ダニも、ここは得意コースなのに苦労した。でもこの3日間で、いろいろと詰めることもできた。もっとよくしていなければならないけどね。開幕戦には100パーセントで臨めないかもしれないけど、もしそうだとしても表彰台を目指して全力で戦うよ」
 マルケスが指摘するとおり、チームメイトのダニ・ペドロサは今回のテストでは3日目のタイムが6番手、トップからは1.581秒という厳しい結果だった。特に電子制御は全域にわたって改良の余地がある、と指摘。「進入、旋回、立ち上がり。直線でドゥカティについて行こうとしたけど、ちょっと差が大きいねえ……」
 彼らふたりのコメントから窺えるのは、シーズンオフインタビューでHRC開発室長の国分信一氏が話していた「背中を掻きたくても痒いところまでなかなか手が届かない」という共通ECUの課題が浮き彫りになっていることである。まさに隔靴掻痒。次のフィリップアイランドでは、少しでも指を伸ばして痒いところを掻けるようになっているだろうか。


#26

#93
今年のコンセプトは「サムライ」 「まだ100パーセントにはほど遠いよ」

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 ドゥカティ陣営は、今年からテストライダーとして加わったケーシー・ストーナーの参加がおおいに注目を集めた。公式テストに先立つ1月30日にはプライベートテストで初めてミシュランとデスモセディチGP15にトライ。あっという間に順応してテストメニューを着々とこなし、テスト2日目と3日目にはレギュラーライダー勢に混じって走行。現役時代を彷彿させる……というよりも、いまだに現役として走っても充分に通用する速さで総合5番手タイム。ドゥカティ勢全体では、ファクトリー選手両名を上回るタイムを記録した。
「去年の最終テストからドゥカティは制御とタイヤにうまく合わせてきているし、ぼくと両アンドレア(イアンノーネ&ドヴィツィオーゾ)のコメントも非常に似ているのは良いことだと思う。コースに出て走り込むたびに、バイクはどんどん良くなっている」「自分はエンジニアではないけれども、エンジニアたちと一緒にテストライダーの仕事をしていくのは愉しい。彼らからたくさんのことを学べるのもいいことだと思う」
 コースを走行しているときのフォームも、一日の仕事を終えた後のコメントも、すべてがリラックスしている印象で、ここまで落ち着いた雰囲気は、現役選手時代の彼からはあまり感じられなかった気がする。
 ストーナーの陰にやや霞んでしまった感もあるが、ファクトリーチーム2年目のイアンノーネは3日目のタイムが8番手、ドヴィツィオーゾは13番手。特にドヴィツィオーゾの苦戦が目立つが、その理由について、自身では「自分の乗り方をミシュランに合わせるのが目下の最大の課題」と説明をした。ドヴィツィオーゾといえば、MotoGP全選手中でも屈指の深いブレーキングが身上のライダーだが、どうやらそれがミシュランへの適応の妨げになっている模様。
「自分のスタイルの、特にブレーキング面を今までと反対方向に振る必要があるのだと思う。しっかりとタイヤの特性に合わせて乗らないと、とても遅くなってしまう。フロントのフィーリングがあまり良くないのは、自分がちゃんと乗っていないからなんだろうね。進入で強くブレーキしすぎるとタイヤに課題が出て、旋回速度も遅くなってしまう。適応しようとしているけど、違うラインで走らなければならないし、少し時間がかかるかも……」
 ちなみに、ドゥカティの2016年仕様のGP16については、イアンノーネとドヴィツィオーゾがGP15との相互比較を実施。ジェネラルマネージャーのジジ・ダッリーニャによれば、「(両仕様の)違いは大きいけれども、昨年(GP14とGP15)ほど大きな差ではない。進化形だね。今のところ、すべて順調に進んでいるけれども、GP16はセットアップを詰めていないので、ポテンシャルを完全に引き出すまでには至っていない。フィリップアイランドでも引き続き、着々と仕事を進めて走り込む予定なので、そのテストが終わったら何かしらお話しできることもあるだろう」とのことだ。


#27
#27

#27

#27
「無理せず走って」この速さですから。

#20

#04
「カタールではGP16に専念したいね」 「ミシュランの良さを出せないんだよねえ」

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 スズキも、2016年仕様を軸に2015年型との比較を実施。彼らを巡る大きな話題のひとつは、昨年暮れのセパンテストから採用したシームレスシフトだが、今のところはアップシフトのみで、ダウン側は近々導入の予定だとか。
 初日の走行を終えたアレイシ・エスパルガロは、新型エンジンの手応えは上々で、課題だった加速とパワーが向上している、と好感触を述べた。アップ側のシームレスに関しては「エンジンとの兼ね合いで加速に貢献してくれているけれども、1速から2速、2速から3速がアグレッシブなので、そこはまだ改善の余地はある」のだとか。
 エンジン、車体、制御、などなど様々なマテリアルやテストメニューを試して三日間のテストを終えたマーヴェリック・ヴィニャーレスは「新しい電子制御では、まだかなり苦労を強いられている部分がある。特にエンジンブレーキは、もっとよくしていきたいところだね。加速面でも課題はあるけれども、この3日間でだいぶよくなってきたよ。まだどんどん良くできると思う。車体については、2015年仕様のほうがグリップもいいし、自分のライディングにも合っているような気がするなあ……」とも言う反面、「まだ(2016年仕様の)ポテンシャルを完璧に引き出せているわけではないし、ポジティブな面も多かった。ネガティブなところも、どんどん良い方向に改良していけると思う」とも述べている。テストである以上、良いところと悪いところ双方のコメントがたくさん出てくるのは、今後の開発にとっては意義が高いといえるだろう。


#25

#41
「ミシュランはとても乗りやすいんだ」そうです 「このあと、ちょいと浜松に行ってきます」
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 というわけで、今回のセパンテストのレポートはひとまずここまで。ではでは。


セパン

セパン
熱帯名物、夕刻の豪雨。 おっとこまえセテさんは健在。

セパン

セパン
いやどうもお久しぶりです。 こんなん出ましたけど。

 

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