このWebミスター・バイクで、僕はすでにNinja1000には試乗していて、このZ1000はNinja1000の兄弟モデルなんだけれど、もう、まったく違う。Z1000ってNinja1000のネイキッドバージョンか、なんて思っている人は、早くそのイメージは捨てた方がいい、そんなバイクなのだ。
まずもってスタイリングがイカツい。ヘッドライトからして、丸4灯のLEDランプが、イカツいツリ目のライトハウジングの奥に光っている。ハイビームにした時には、この4灯とメーターハウジングのポジションランプ、計5つが睨みつけてくる。こんなイカツさ、他のどのバイクにも似ちゃいない。
それからフューエルタンクがぐんと盛り上がって、シートに向かってドンと落差があって、ショートのテールカウルがピンとハネ上がっている。もう、猛獣の、しかもこう…獲物をロックオンして飛びかかる寸前のような躍動感。
今回の撮影車の車体色は「メタリックマットカーボングレー×キャンディクリムゾンレッド」、まぁ早い話が黒×赤、またはグレー×レッドなんだけれど、これがもっと明るい発色のツートーンかなんかだったら「これイタリア車」って言い張ってもOKな車体デザインだと思う。この振り切れ感、ずっと日本車に欠けているといわれ続けてきたところだよね。
その走りも、スタイリングデザインのイメージを決して裏切らない。もう、ギュルギュルギュルとチカラをため込んでいて、これはNinja1000と似たキャラクターなんだけれど、Ninjaよりもスロットルに敏感で、よく言えばシャープ、悪く言えばぎくしゃくする。加速も、あれ? なんでNinjaより力強いんだ、と思ったら、ファイナル(2次減速比=ドライブとドリブンスプロケットの歯数比)がショートになっている。うーむ、やっぱりカワサキもZ1000にヤンチャな性格を与えているのだ。
とはいえ、エンジンは荒々しいだけではない。ドンと開けたらギュンと反応するし、そーっと開けたらジェントルに反応する。これはもうECUのセッティングがキレイに決まっているのだ。このふたつのエンジン特性のかけ離れ具合が面白いね。
Z1000は、4000rpm以上になると、タコメーターのバーグラフ位置がヨコ方向に移って、LEDランプが光るようになっているんだけれど、特に2~3速あたりでこの回転数に入れてみると、明らかにトルクをひと乗せしているようなセッティングにしているようだ。さらにその時のサウンドも、特に吸気音がヒューンと遠くから迫ってくるような演出にしてある。これ、Z1やZ2の調子いいエンジンもこんなだよね。さらに6000rpmを越えたあたりでもトルクをひと乗せしてくる、計3段階のパワーフィーリングが味わえるのだ。
Z1000。ライダーの身長は178cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます) |
街中を普通に流して、高速道路にも乗り入れてみる。6速80km/hは3800rpm、100km/hで4500rpmくらい。Ninja1000よりもやや回転数が高いけれど、じゅうぶん平和にクルージングできる快適さがある。もちろん、ウインドプロテクション性の高さは、Ninjaに軍配が上がるけれど、とはいえ法定速度+αで走っていると、走行風がキツいというほどではない。まったくのネイキッドと言うよりも、この独特なヘッドライトケースが防風(というか整流)しているのだ。
ハンドリングは、普通にフロントにしっかり接地感があって、軽すぎない手ごたえがある。決してシャープではない、けれどネイキッドらしく軽さと接地感をしっかり残したような安心感。これも、上手く仕上げてあるなぁ、と思うのは、Ninjaよりもちょっとだけ軽快感があるフィーリングなのだ。安定感と軽さ、フロントヘビーとキレ、そこをいいバランスで両立してある。カワサキって、こういう味付けがめっぽううまい。上手いひとは、こういう味付けのハンドリングで速く走る方法を知っているし、そうでない人には怖さを感じさせない、そんなセッティング。Ninja 1000との乗ったフィーリングの違いはここにあるね。
カワサキは、Z1000をストリートスポーツと色付けしているのだ。高速道路を使ったクルージングならばNinja1000が楽しいよ、ワインディングやサーキットはZX-10Rにしときな、でもストリートを走るなら、見た目のインパクトが相当デカくて、機敏に走るZ1000が一番いいんじゃない?ってこと。
考えてみたら「Z」って、Z1以来ずっと、そういうバイクだ。その意味で、Z1000はまぎれもないZ1の正統継承者なのだ。
(試乗:中村浩史)
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