31st Annual DUBYA World VET Motocross Championships 2015 中高年モトクロスが世界的ブームに!?20ヵ国から1000台が集結して、モトクロス三昧
●文・写真:高橋絵里

●イベント名:第31回 DUBYA ワールド・ベテラン・モトクロス・チャンピオンシップス
主催:グレン・ヘレン・レースウェイ http://www.glenhelen.com/
開催日:2015年11月6~8日(毎年11月第1週末開催)
会場:アメリカ カリフォルニア州 グレン・ヘレン・レースウェイ

 ロサンゼルス国際空港からフリーウェイを東へ2時間、強すぎる陽射しに乾燥しきったサンバーナーディノという街のはずれに、グレン・ヘレン・レースウェイはある。AMAプロモトクロスやMXGPアメリカラウンドの会場としても知られるサンド路面のマウンテンコースだ。広々として素晴らしく長く、美しい。世界中のライダーが称賛するコースだ。

 そしてここ数年、ワールドVETの盛り上がりがめざましい。健康志向、アクティブ志向で“帰ってきたライダー”流行り、世の中の景気回復傾向もあるのか、世界規模で50歳代、60歳代が青春時代のバイク熱を今再びとばかり、趣味のモトクロスに戻ってきている。そしてワールドVETではノービスから誰でも出れるという気軽さが大きな魅力だ。競技ライセンスは要らないし、クラスが年齢別と技量別に細かく分かれていて、同年代、同レベルでのレースは実力近似で接戦が面白い。エントラントの顔ぶれも色々だ。ピックアップトラックやバンで身軽にやって来る地元のCALライダー。キャンピングカーあるいは巨大なトレーラーを引っ張って大陸を横断や縦断してくるカナディアンや他州アメリカン。さらにヨーロッパ、アジア、オセアニアからの遠征は、飛行機とレンタカーを駆使して現地でレーサーをレンタルする。レースサービス&レンタルを利用すれば、メカニックもガソリンもランチもすべて揃ったピットで、ちょっとしたファクトリー気分が味わえるのだ。

 日本人にも馴染みのあるレジェンドライダーも、仲間とワイワイ言いながらレースを楽しんでいる。ダグ・デュバック、カート・ニコル、ジェフ・マタセビッチ、チャック・サン、ゲイリー・ジョーンズ。ピックアップトラックやバンだけのピットであまりにもさり気なくいるので、見つけたほうが「ホンモノだ!」などと驚いてしまうが、ファンからのサインや写真のリクエストに応じる彼らのカッコ良さは、さすがスターの風格だ。同年代になるダグ・デュバックとカート・ニコル、チャック・サンと日本の伊田井佐夫など、レジェンド同志のトップバトルも熱かった。52歳になるダグ・デュバックは、30歳のときに+30プロクラスのワールドVETチャンピオンになって以来、+40クラス、+50クラスと毎年タイトルを取り続けている。しかし今年はカート・ニコルがダグに代わり+50クラス制覇か?と思いきや、ダグが両ヒートピンピンで勝利、ディフェンディングの意地を見せた。



ドクターD
土曜の+40プロクラスはカート・ニコルに惜敗したが、日曜の+50エキスパートクラスで優勝し面目躍如のアメリカンレジェンド“ドクターD”ことダグ・デュバック。ワールドVETは30歳の時から20年以上に渡りタイトル記録を更新し続けていて、現在もヤマハや自社パーツのテストで日々走り込む52歳だ。※写真をクリックすると、とても52歳とは思えない“ドクターD”の走りが見られます。


ト・ニコル
元WGPライダーのカート・ニコルが51歳になり、ワールドVETに久々の参戦を果たしてデュバックと素晴らしいバトルを見せてくれた。土曜の+40プロクラスはカートが勝利、賞金を持って行った。イギリスの出身だが今はカリフォルニア在住、本業はナイトロ・サーカスのゼネラルマネージャをしている。※写真をクリックすると、カートの優しい笑顔が見られます。

伊田カミカゼ井佐夫と元ライバル”のスコット

伊田カミカゼ井佐夫
日本からは伊田カミカゼ井佐夫59歳(左)が+55クラスと+50クラスのダブルエントリー。#130得意のホールショットを連発した。結果は+55クラス総合4位、+50クラス総合6位で「みんな速い、世界の壁は厚い!でも最高に楽しい! 来年は+60クラス、もっと鍛えてきますよ」と闘志満々。一緒に写っているのは9年前までMTB世界戦で一緒に闘っていた“元ライバル”のスコット、今年モトクロスで感動的再会を果たした。

最高齢ライダー

ウーマンクラス
↑ウーマンクラスも今年から技量別クラス分けがされ、プロ・エキスパート・インターミディ(中級)・ノービス各クラスでエントラント増。マシンは日本だと小型の4スト150ccや2スト85ccが多いが、こちらではオネーサンからおばさんまでフルサイズマシンをブリブリ操り、皆さん実に逞しい。

←最高齢ライダーはテキサス州ヒューストンから遠征のゲイリー爺さん75歳。ゼッケンは「ib75」と書いて「ワシは75歳!」とアピール。「なかなか良いコースだな、楽しいよ!」下り坂では慎重に、ビッグジャンプもフワッと飛び越え、見事完走した。

ピート・ディグラーフ

ウェイティングエリア
これまでワールドVETチャンプを4回獲っているカナダのレジェンド、ピート・ディグラーフ60歳。昨年大ケガをして一度は引退のフリをしてみたものの「治ったらどうしてもまた走りたくなった。やっぱり辞められないねぇ」と2年ぶりの復帰で貫禄のトップ争い。「4人の孫もみんな応援してくれているのよー」と奥さんのジーネット。 スタート前のウェイティングエリアで、『SUN 63』のジャージは80年代のジャパンスーパークロスでもお馴染み、AMA500チャンピオンのチャック・サン59歳。とにかく多くの世界的レジェンドがごく“普通に”走って楽しんでいる、それがワールドVET。

ドローン

ピットスペース
オフィシャルメディア『モトクロスアクション』のドローンが広大なグレン・ヘレン上空を浮遊する。スタートからの俯瞰ホールショット撮影は、第1コーナーまでの距離が長いだけにドローンの飛行速度も全開必死。 キャンピングカーや大型トレーラーがどれだけ来てもゼンゼン余裕なグレン・ヘレンのピットスペース。週末延べ1000台のエントリーにも、区画割りもスペース制限も何もないどころかまだまだ空地は彼方まで続く。まこと羨ましい限り。


2列スタート、3列スタートも当たり前
全35クラス、1日13レースを2ヒートで26レース。これを消化するために複数クラスの2列スタート、3列スタートも当たり前で、とにかくどんどん進行していく。何より凄いのは前のクラスがまだ走り終わっていないうちから次のクラスがスタートしてしまうことだが、トランスポンダ計測だから問題ナイのだ。


三段上り
コースはダイナミックでエキサイティング、かつお年寄りやノービスライダーにも楽しめるよう安全に配慮したワールドVET専用設計。「SHOEIアップヒル」と名づけられた急坂3段登りセクションも好評だった。

オレたち陽気なアメリカン

リムジン
「ヘーイ、楽しんでるかーい!写しておくれよー」 オレたち陽気なアメリカン♪のイメージ通りのお2人、元AMAライダーのジョンとバイクレンタルサービスのデイブ。 このようなリムジンをトランポに使う。屋根にモトクロッサーを積んでアリゾナ州からワールドVETに乗りつける。さすがは自由の国アメリカ。

人々

人々

人々

人々

人々

人々

人々

人々
エントラントと観戦の皆さん。奥さんと、子供と、孫と、ショップの仲間と、ペットと、おじさんグループ、おばさんグループ。モトクロスを楽しむ様子は世界共通だ。そして「年齢?関係ないネ」「好きなんだからいいんじゃないの?何歳だって」「いつか孫と一緒に走れるように80歳までは乗り続けたい」 皆さん、超前向き!

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