2018年4月18日

Kawasaki Z900RS CAFE試乗 『古さと新しさ のんびりと高性能のバランスが絶妙! Z900RS兄弟を ただのレトロバイクだと思うなよ!』

■試乗&文:中村浩史 ■撮影:松川 忍
■協力:カワサキ http://www.kawasaki-motors.com/

 
Z900RS CAFEは
大人気Z900RSのドレスアップバージョン。
ビキニカウルを装着して
ライディングポジションに少し手を入れたCAFEは
スタンダードのRSより、さらにい~い感じで古い。
ただし、このZ900RSの本性って、あんまり知られていない。

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 こんなのZじゃねぇよ――そんな声は確かにある。
 似せてる時点でニセモノだ――そう言う人だっている。それがZ900RS。
 毀誉褒貶っていうのかな、ホメたりけなしたり、みんな注目しちゃうから、ついついひとこと言いたくなる。Z900RSがこれだけ大人気モデルになっちゃったものだから、なおさらだ。ただし、ひとこと言いたくなる人だって、まだまだ実際に乗ったことある人は多くはなかろう。ちなみにこんな仕事をしていると「あのバイク、どーなの? もう乗った?」って聞かれることが多いんだけど、Z900RSは近年まれに見るほど、その連絡が多い! みんな注目しているのだ。
 
 Z900RS CAFEは、そのZ900RSにビキニカウルを装着し、ローハンドルやハイシートを装着しただけのドレスアップモデル。カワサキZのビキニカウルモデルといえば、Z1RやZ1000/1100Rな角Zがイメージされるけれど、Z900RS(系統的には「丸Z」に入るのかな)にビキニカウルだと、グッとレトロコンシャスだ。
 ベースとなったZ900RSから、パフォーマンスという点で大きな変更はない。ごくごく厳密に言うと、ハンドルマウントのビキニカウルの分、ハンドリングがちょっと重くなった? ハンドル低くてシートが高いから、荷重が少し前がかりになって、それも併せて、ちょっとだけ、ホントにちょっとだけ手応えがある。けれど、まーったく気にしなくていいレベルだと思う。
 
 しかしこのZ900RS兄弟、エンジンも足周りも、本当によくできてる!
 エンジンは、低回転から軽やかに回る、トルクある特性だし、2000~3000rpmといった常用回転域のトルクが力強い。ここから高回転まで回すと、低回転のトルクがあるエンジンにありがちな頭打ち感がまったくなく、6000rpmくらいからぐんぐん勢いを増してきて、10000rpmくらいまで軽々と回るのだ! ストリートを走っていて、ふと前が空いた時に不用意にスロットルを開けると、前の荷重がふわーっと軽くなって浮き始めるほどパワフル。またこの時のサウンドがイイんだ! いま並列4気筒の快感サウンドを聞きたかったらZ900RSだ!
 6速2000rpmくらいからネバりあるトルクがあって、のんびり走るのも使いやすいトルクだし、6000rpmあたりを使って、ピックアップのいいパワーを引き出してもいい。もとはZ800をベースとしたこのエンジン、本当に名機だね!
 
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 ワインディングに持ち込んでも、Z900RSは意外な戦闘力の高さを見せる。もちろん、スーパースポーツのようなシャキッとした、ド・シャープなハンドリングを見せるわけではないけれど、生産を終えた1200DAEGよりパワフル&シャープで、Z1000よりもコントローラブル、というポジショニングに近いかな。フロントの接地感がすごくあって、車体剛性もしっかり高いから、ブレーキングで突っ込めるし、バンクスピードも見た目より結構早い。
 バンク中はパイプフレームのしなりが良く出ているのか、路面をしっかりトレースして、路面の凹凸もきちんとシートに伝わりつつ、バイクの動きがわかりやすい。限界は低くとも、そこまでしっかり使える、というかんじ。小さくて軽くて、くるくる曲がる――そんなイメージです。この辺は、旧Z800のエッセンスをきちんと受け継いでいる。
 
 ハンドリングも本当によくできていて、低速域では軽々としたフットワークを見せ、高速域ではしっとりとした落ち着きがある。注意深く感じていると、サスがよく動いていて、フロントタイヤの接地感がしっかりある。これは、キャリアの浅いライダーも安心だと感じるキャラクターで、倒立フォークやリアのモノサスを採用した効果だろうと思う。
 もっと「Z感」を出したかったら、正立フォーク&ツインショックのアイディアもあったんだろうけれど、クラシックイメージに走りすぎなくて正解だと思う。低速でも高速でもホントに軽々とシットリが両立していて、気持ちがいい。
 高速クルージングしてみると、トップギア6速で80km/hは約3000rpm、100km/hは約3900rpmといったあたり。手や足に伝わってくるエンジンの振動がなくて、本当にスーーッと空気の中を突き進んでいく錯覚に襲われるほど。僕は、この瞬間はスゴく好き。優れたツーリングバイクは6速3000rpmくらいで無振動100km/hクルージングできる、って理想を持っているほどで、Zはそれに、かなり近いね!
 その時の車体の動きは、軽快すぎず、重厚すぎず、しっとり、という感じ。ビキニカウルつきの900CAFEは、少しだけ風圧を減らしてくれてはいるが、多くを望みすぎるのはダメ。全伏せ姿勢では、たしかにZ900RSよりプロテクションしてくれるが、これはあくまで、少しだけ防風効果のあるファッションアイテム、と考えるべきだろう。
 
 ストリートを流してよし、ツーリングによし、ワインディングでも結構に速い。Z900RS兄弟は、決してレトロルックスなおとなし目バイクなだけじゃない。カワサキレジェンドのスタリングをまとったスーパーネイキッドなのだ。きっと、このスタイリングじゃなくても、完成度の高いバイクなんだろうな、と思う。Z900RSのあとに国内販売をスタートしたZ900にも、ガゼン興味がわいてくるなぁ。
 
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 Z900RS兄弟は、カワサキレジェンドである空冷Zをイメージしながら、新しい技術を盛り込んだヘリテイジスポーツだ。このスタイリングのままで、パフォーマンスをもっと古っぽく振ることもできたし、最新のパフォーマンスのまま、ルックスだけを古くすることだってできただろう。
 そのバランスが絶妙なのだ。スタイリングも走りも、古すぎないし、新しすぎない。Zのスタイリングで200psってのもスーパーチャージャーってのもピンとこないし、新たに空冷エンジンを新作しました、って大努力をされても、ちょっと違う気がする。
 
 時代の要求、カワサキファンの待望、マーケットの期待――そこまできちんとバランスさせたスポーツバイクなのだ。
 Zがスキでしょうがない、って人はずっとたくさんいる。けれど、大好きなZを手に入れようとすると、40年も前のバイクを200万も300万も出して買うことになる。それを否定はしないけれど、それだけの大枚を果たして得られる満足度は、年々と低くなっているはず。だって、調子のいい空冷Zなんて、1日ずつ少なくなっていくものだから。
 だから約130万円で新車のZが買えるなんて、本当に素晴らしい! そしてこのZ900RS兄弟は、その期待にたがわない完成度を持ったスポーツバイクなのだ。
 
(試乗・文:中村浩史)
 

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レトロっぽいルックスに倒立フォーク+ラジアルマウントキャリパーの組み合わせ。ディスクローターはφ300mmで、このあたりはベースとなったZ900RSと同一。CAFEはリムテープが貼られ、そのリムテープも車体色ごとに異なる、と芸が細かい。


 
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Z900RSから、クランクケースカバー(写真の「DOHC」と書かれているところ)、サイドカバー前のインジェクターカバーもブラックアウト。ケースカバーのDOHCロゴもZ900RSには入っていない。エンジン特性などはZ900RSと共通だ。


 
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リアブレーキはφ250mmローターとニッシン製片押し1ピストンキャリパーの組み合わせ。キャリパー下の配線はABS用のホイールセンサーで、ブレーキング時のホイールロック直前の状態を検知してブレーキ効力を連続的に一瞬緩め、ABSを作動させる。


 
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4本のエキパイが集合し、消音チャンバーを経て1本出しされる、形状も構造も凝った作りの集合マフラー。特に消音チャンバーからサイレンサーカバーにつながる美しさは一見の価値あり! Z900RSはクロームメッキ、CAFEはツヤ消しのヘアライン仕上げ。


 
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Z900RSは黒、CAFEは白のリアサススプリングを使用。Z900RSともども、リアサスはスイングアーム上にマウントされる水平レイアウトで、マスを車体中央部に集中させる。リアサスはプリロードと伸側減衰力調整機構付き。エンジン背面のスペースもうまく埋まる。


 
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Z900RS/CAFEともども、このフューエルタンクを搭載するためにZ900からメインフレームを専用設計。タンクエンブレムは大文字の「KAWASAKI」も純正アクセサリーに設定されている。タンク容量は17L、この取材の実測燃費は25~28km/hをマークしました!


 
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Z900RSとは違う形状の、タンデム部にタックロールの入っていない専用シート。シート高も820mmとZ900RSより20mm高い。シート下には標準装備のETC車載器がセットされ、シート裏には車載工具がボルトオンされている。ライディングポジションも小変更。


 
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ここがいちばんZ1/2らしい! テールカウル付きのテールランプはだ円形で、形状はZ1/2を思わせつつも、ウィンカーとともにLEDランプを使用するという新旧ミックスさがとてもイイ。ドローコード用の荷かけフックも前後で計4か所、これは最低限装備してほしい。


 
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車体色は、このグリーンとグレー。ビキニカウルにもクラシックっぽいラインが入るのは、グリーンの車体色のみ。カワサキのビキニカウルといえば、角Zの角っぽいものが思い浮かぶが、丸Zにビキニカウルは、当時たくさん発売されていた改造パーツの定番だった。


 
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Z900RSがメッキのコンチハンなのに対し、CAFEはブラックのローハンドル。


 
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メーター液晶部はオド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、残ガス走行可能距離、気温、ギアポジション、トラクションコントロール(TRC)モードを表示。


 
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TRCは左ハンドルスイッチで調整。


 
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フロントフォークトップに伸び側、ボトムに圧側の減衰力調整機構ノブが備わる。伸び/圧側とも19段に調整可能。ハンドルマウントのビキニカウルの追加で、ハンドリングに少しだけ手応えが加わったかどうか、という微妙な差はなくはない、というレベル。


 
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●Z900RS CAFE(2BL-ZR900C)主要諸元

■全長×全幅×全高:2,100×845×1,190mm、ホイールベース:1,470mm、シート高:820mm、車両重量:217kg■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ、総排気量:948cm3、ボア×ストローク:73.4×56.0mm、圧縮比:10.8、最高出力:82kw(111PS)/8,500rpm、最大トルク:98N・m(10.0kg-m)/6,500rpm、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:17L、変速機形式:常時噛合式6段リターン、燃料消費率:定地燃費値 28.5km/L(60㎞/h、2名乗車)、WMTCモード値 20.0km/L(クラス3-2、1名乗車時)■フレーム形式:ダイヤモンド、キャスター:25.0°、トレール:98mm、ブレーキ(前×後):油圧式ダブルディスク × 油圧式シングルディスク、タイヤ(前×後):120/70ZR17M/C 58W × 180/55ZR17M/C 73W。
■メーカー希望小売価格:1,350,000円(消費税8%込み)


 


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