2018年4月24日

Kawasaki Ninja400試乗 『「小さい方」をベースに生まれた「大きい方」 Ninja400が日本の400ccマーケットを 変えるかもしれない。』

■試乗&文:中村浩史 ■撮影:南 孝幸/森 浩輔
■協力:カワサキ http://www.kawasaki-motors.com/

 
Ninja250と同じく、フルモデルチェンジで生まれ変わったNinja400。
このヨンヒャク、ちょっと近年まれに見る意欲作。
ニワトリが先か、タマゴが先か――。
2008年にNinja250Rを発売して市場を活性化させたように
Ninja400が日本のヨンヒャクを変えるかもしれない。

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 ともに普通二輪免許枠、Ninja250と400。この両者、ともに既存モデルのフルモデルチェンジだけれど、250と400の内容は大きく違う。それは、250が旧モデルをベースとしたチェンジなのに対して、400はそもそもの成り立ちからして大きく変身したからだ。
 これまでのNinja400Rは、車体/エンジンとも、海外向けの650ccをベースとしたスポーツバイクだった。水冷並列2気筒エンジンを積んだ、あのリアサスが右サイドにオフセットしていたモデルね。車重は211kg、ホイールベースは1410mm、このボディサイズが、650cc同様だった。
 
 歴代カワサキの400ccモデルといえば、空冷Z400FX~400GPも550ccモデルをベースにしていたし、水冷GPZ400R~GPX400R~ZZ-R400は兄弟モデルの600ccモデルが存在した。そういえば2気筒モデルのGPZ400Sも「ハーフニンジャ」って呼ばれたGPZ500と兄弟車だったし、EX4もEX5があったか。
 ’80年代の400ccブーム(ってのがあったのだよ)の頃から、国内400cc市場が冷えている今も、それでも国内に400ccモデルをラインアップしたい、というカワサキの想いがあふれたモデルシリーズだった、ということだ。
 もちろん、650ccの車体に400ccのエンジンだと、重い。ちなみに、パワーウェイトレシオで表すと、ずっと400cc市場をけん引しているホンダCB400SuperFourが201kg/56ps=3.59kg/ps、対して旧Ninja400Rは、211kg/44ps=4.80kg/ps。これが400cc専用設計のCB400と、650をベースにしたNjinja400Rの差だったのだ。
 
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 そしてカワサキは、Ninja250/400の刷新にあたって、大胆な手法に打って出た。新開発にあたってベースモデルを持つのは当然としても、そのベースを、フルモデルチェンジした新Ninja650ではなく、250と共通としたのだ。70年代後半や80年代初頭、かつて400ccモデルをベースに250ccを開発していた時期はあったけれど、250をベースに400ccを作るのは、かなりまれなこと。これは過去の他メーカーにもなかなか例がないことで、かくして「大きい方」が「小さい方」をベースとするニューNinja400が出来上がった、というわけ。
 もちろん、ここまで650ccをベースに400ccを開発していたのは、「大は小を兼ねる」ではないけれど、車体剛性や強度、安全性をきちんと担保していたからだ。大げさに言えば、50ccのフレームに250ccのエンジンを載せたらどうなるか――まっすぐ走らない、車体がたわむ、荷重を受け止めきれない、つまり危険ってことになる。さすがに250をベースに400を積んで、即そんな危ないことにならないけれど、安全性に念には念を入れて、がメーカーの絶対的責務。だから「小さい方」をベースに「大きい方」を開発するケースは少なかった。
 
 その成果はてきめん。ニューNinja400は、数字上では車重167kgに対して出力48ps。旧400Rが211kgに対して44psだったから、出力は4psアップだけれど、車重は44kg減! パワーウェイトレシオは3.48kg/ps、これスゴい! ひとり乗りと、女子を後ろに乗せたタンデムくらいの差があるのだ。
 僕はしばらく先輩の旧Ninja400Rを借り出して乗っていたことがあったから、差がハッキリとわかる。旧400Rは、おだやかなレスポンスにどっしりした安定志向の車体で、スポーツバイク的ルックスなツーリングバイク、という印象が強かった。街中ではもう少しキビキビ走りたいけれど、高速道路でクルージングすると安定感があって、これはこれでいいなぁ、と。やはりER6系の600cc的運動性能だった。
 ニューNinja400は、ここがまず違う。44kg減がものすごく効いていて、完全に別モデルなのだ。もちろん、旧400Rっていうより、新型Ninja250的。当たり前だよね、それが同時開発のメリットなんだから。
 
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 街乗りでは、400ccらしいトルクが250ccより、旧型400Rより上。明らかに軽く、力強くなった効果が出ていて、スピードコントロールも簡単、ギュンギュン回す必要もない。400ccらしくトントンと高いギアに入れて流す、って走り方が可能だ。
 少し回転を上げてみると、回転ごとにぐんぐんパワーが出てくるというより、7000回転から1万回転overまでフラットトルクな特性。パワーの絶対値は違うけれど、新Ninja250の方が上まで回り込んで、盛り上がり感がスゴい。回転は軽く、レスポンスはシャープだ。この軽さが、旧400Rといちばんの違いかもしれない。
 ただし、すごく意地悪に見ると、ちょっと振動が消え切っていない感触があって、パワー感がやや荒い。けれど、これは250ccと同時に乗って初めて感じる些細なこと。回転が荒い=パワー感がある、って捉え方もできる。まったく気にならないといっても問題ない。
 
 ハンドリングの感触も新Ninja250に似ていて、それでもNinja250より穏やかで、安定性志向。コーナーの進入でスパッと寝始める250に対し、一拍タメがあってバンクし始める400、という感じ。これは新Ninja250に比べてタイヤがラジアルになって、リアタイヤが1サイズ太くなっているからかもしれない。ちなみに新250と新400車重の差は1kgで、車重による違いが出ているというよりは、車体の設定でキャラクターを変えているのだと思う。
 
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 ツーリング性能は、さらに軽量パワーアップの効果が出ていて、加速も鋭ければ、巡航中の快適性も400の方が上。トップギアのクルージングでは、80km/hは4800回転、100km/hが6000回転で、車体の安定性も全く問題ない。
 650から250ベースとなっていいことづくめの新Ninja400。じゃぁメリットばかりなの、 デメリットはないのと聞かれれば……うーん、感じなかったなぁ。車体面では、ちょっとペースを上げてワインディングを走っても差を感じなかったし、高速道路のクルージングでもがっしりとした安定感を味わえた。ブレーキが250も400もフロントもリアもシングルディスクだけれど、これもプア感は感じなかった。これは、サーキットを限界まで攻めたら、きっと差が出るだろうと思うけれど、それを感じられるのは、かなりの上級者のはずだ。
 エンジンだって、わずかに、上に書いたように振動が消え切っていなくて、回転上昇に手ごたえがあるフィーリングがあるけれど、これは力感を感じることではあっても、不快に感じることではなかった。
 
 同じ400ccクラスには、現在CB400SF/SBがあり、CBR400R/400X、YZF-R3/MT-03(これは320ccだけれど)がある。スズキはグラディウス400が生産終了となって、それでもSV650があるから、ひょっとして……ね。
 新Ninja400登場に刺激を受けて、負けられるかい、ってホンダがCBR250RRをベースとした400ccを開発したり、ヤマハやスズキがとうとう4気筒モデルを復活させるとかすれば、初代Ninja250Rが250ccマーケットを立て直したように、400ccマーケットも本当の意味で魅力あるカテゴリーになるかもしれない。
 
 Ninja400は、400ccクラスのマーケットを一変させるかもしれない可能性を秘めたニューモデルなのだ。
 
(試乗・文:中村浩史)
 
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フレームはNinja250とほぼ共通。旧Ninja400Rと比べると、エンジンをリジッドマウントし、ショートホイールベース化。ベースボディが650から250となったことで、完全にひとまわりコンパクトになったことがハッキリわかる。旧モデル比でフロントディスクがダブルカラ「シングルとなったが、車両重量は44kg減、シート高は25mmも低くなった。


 
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H2イメージを汲むカワサキらしいチンスポイラーつきデザイン。LEDヘッドライトはロー&ハイビーム、ポジションランプをデュアルで装備し、ここも新Ninja250と同イメージ。


 
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テールランプはZX-10RイメージのLEDランプ。ウィンカーはクリアレンズ+カラーバルブで、ウィンカーステー根元には、荷かけフックが標準装備。ここがカワサキの良心。


 
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これもNinja250同様のギアポジション、時計、液晶ディスプレイ付きメーター。デジタルスピード上にオド&ツイントリップ、下に瞬間&平均燃費、残ガス走行可能距離を表示する。


 
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エンジンは400cc専用の新設計。あらたにダウンドラフト吸気となった水冷並列2気筒は燃焼効率を向上させたことでサブスロットルを廃し、薄肉エキパイの新マフラーを採用。


 
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250ccと共通のφ310mmペタルディスク+片押し2ピストンキャリパーを採用。フロントフォークは正立φ41mm、250よりキャスター角を立ててハンドリングを味付けしている。


 
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シリンダー背面にプレートを連結し、スイングアームピボットとリアサスマウントを兼ねる構造。ピボットレスフレームと同様の剛性、軽量化を達成している。ブレーキはφ220mm。


 
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シート前部をスリムにして足つき性を向上させたシートまわり。シートオープンはキーロック式のタンデムシートを取り外し、プルコードを引くとフロントシートも外れる構造。タンデムシート下にはリッド付きの収納スぺースがあり、ちょうどETC車載器が入るくらいの大きさがあった。タンデムシート下にはヘルメットホルダー用フックを2か所内蔵。


 
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Ninja250が140サイズなのに対し、400は150サイズを履くリアタイヤ。リンク式リアサスは5段階のプリロード調整機構付き。ドリブンスプロケットは250の1丁増し。


 
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ヘルメットフックはタンデムシート下に2か所、独立してキーロック式ホルダーを装備。左右タンデムステップ裏とウィンカーステー前、計4か所の荷かけフックがある。


 
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●Ninja400 主要諸元
■全長×全幅×全高:1,990×710×1,120mm、ホイールベース:1,370mm、シート高:785mm、車両重量:167kg■エンジン種類:水冷4ストローク直列2筒DOHC4バルブ、総排気量:398cm3、ボア×ストローク:70.0×51.8mm、圧縮比:11.5、最高出力:35kw(48PS)/10,000rpm、最大トルク:38N・m/8,000rpm、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:14L、変速機形式:常時嚙合式6段リターン、燃料消費率:定地燃費値 32.0km/L(60㎞/h、2名乗車)、WMTCモード値 24.8km/L(クラス3-2、1名乗車時)■フレーム形式:トレリス、キャスター:24.7°、トレール:92mm、ブレーキ(前×後):油圧式シングルディスク × 油圧式シングルディスク、タイヤ(前×後):110/70ZR17M/C 54H × 150/60ZR17M/C 66H。
■メーカー希望小売価格:669,840円/716,040円(消費税8%込み)。


 


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