2018年3月2日
カスタムシーンのシーズン到来を告げる アメリカ屈指のニューウェイブ系カスタムベント “The One Moto Show”
■レポート・撮影:河野正士 ■The One Moto Show http://the1moto.com
アメリカ・ポートランドで「The One Moto Show(ザ・ワンモト・ショー)」が開催されました。開催は今年で9回目。毎年2月上旬に開催されることから、近年は世界のカスタムバイクシーズンの幕開けを告げるキックオフイベント的な立ち位置となっています。もちろんバイクファンが開催を待ち望み、毎回イベントとしての完成度を高め、期待を越える内容が続いた結果なのです。ここでは、そんなショーをリポートします。
「The One Moto Show(ザ・ワンモト・ショー)」は昨年、ポートランドの中心部から、北部の古い工場地帯にある工場跡地へと会場を移転。130000平方フィートの広い敷地に200台近いカスタムバイクやビンテージバイクが並びました。今年はそのスペースをさらに広げるとともに展示車両も大幅に増加。また昨年まで入場料無料で開催されていましたが、今年からはメイン会場は有料イベントに変更(1日チケット@10ドル/週末通しチケット@20ドル)されました。その理由を主催者であるSee See Motorcycle(シーシー・モーターサイクル)のボス、Thor Drake(トアー・ドレイク)に聞くと「昨年、15000人を越える来場者を集めた。9年前にこのイベントを始めたときは、自分たちの仲間と、その仲間たちが集まる極々小さなパーティだった。しかしより多くの観客を集めるようになり、その期待度が高まるとともに、イベントとしての完成度を高め、安全性を確保する必要があった。そのために協力企業からのスポンサー費とは別に、入場料を徴収することに決めた。いままで入場無料のイベントだったから手を抜いていたわけではないが、有料イベントとしたことで、The One Moto Showのイベントとしての満足度をさらに高めなければならないと感じている」と話してくれました。昨年、僕は初めてこのイベントにやってきましたが、入場料無料でこの規模のイベントを開催していることにおおいに驚きました。
またスケジュールも若干変更されました。一昨年からタイムスケジュールに加わったダートトラックレース「The One Pro(ザ・ワンプロ)」は、日曜日の午前中から土曜日の夕方へと開催日時を移動。レースが開催されるのは、メイン会場から車で40分ほど離れた街、SALEM(セーラム)の街にあるSALEM INDOOR SPEEDWAY(セーラム・インドアスピードウェイ)であること。また近年ではアメリカはもとより欧州でもフラットトラックレースの人気が高まっていることから、メイン会場とレース会場のいずれかに、極端に観客が偏らないようにオーガナイズを試みたもの。そしてそのトライは好結果をもたらしたようです。昨年、大いに混雑した土曜日の夜は、そこにレースを開催することで、メイン会場は盛り上がりを維持したまま混雑を解消。最終日となる日曜日の午前中も多くの来場者を維持しました。こういった観客の流れは、来場者には関係がないものの、ブースを構えるスポンサーや出展ブランドには最重要の項目であり、そこへの配慮と、それによって得られた好結果によって、イベントの価値はさらに高まります。そういった観点からも、The One Moto Showの進化が伺えました。
今年は訳があって参加することが出来なかったのですが、SALEM INDOOR SPEEDWAYでのダートトラックレース「The One Pro」は、相変わらず強烈だったらしいです(なんで見に来ないんだよーと言う、現地にいた友人から事情聴取)。昨年参加したときは、プレスパスを得たことでオーバルトラックの中で撮影することができたこともあり、その迫力ある走りと轟音を間近に感じ、完全に魅了されてしまいました。450ccモトクロッサーベースのフラットトラックマシンを全開で走らせるプロレーサーたちの姿は圧巻。市販車ベースのマシンで争われるフーリガン・クラスはさらに人気を集めています。彼らがコースを走れば、その排気音が屋根で共鳴し、さらに爆音となって降り注ぐため、コース内で撮影していた自分はその爆音で三半規管が揺さぶられ、まっすぐ立っていられないほどでした。今年も、なんとかして観戦すればよかったと、いまさら後悔しています。
スポンサー陣にも変化がありました。昨年メインスポンサーとなったハーレーダビッドソンは、そのままメインスポンサーを継続。しかしそれ以前に2年ほどメインスポンサーを務め、昨年はサブスポンサーだったBMWはリストから姿を消しました。かわってヤマハがスポンサーリストに加わり、大きなスペースを確保。一般エントリーされたヤマハベースのカスタムバイクとともに、欧州で成功を収めたカスタムプロジェクト/Yard Built(ヤードビルト)のマシンたち、そして新型ネオレトロモデルであるXSRシリーズとSCR950を展示しました。ヤマハUSAの担当者に話を聞いたところ、米国市場がネオレトロ系に大きく舵を切ったわけではないが、XSRシリーズやSCRシリーズなどヤマハの新型車と親和性が高いニューウェーブカスタムシーンと融合を図り、注意深くその動向を見守りたい、と現状を話してくれました。
また今回は、日本のデニムブランド「IRON HEART/アイアンハート http://www.ironheart.jp 」と愛知のカスタムファクトリー「Ken’s Factory/ケンズ・ファクトリーhttp://kens-factory.com 」がコラボレーションし、アメリカで展開する新ウエアブランド「IRON HEART IGNITION/アイアンハート・イグニッション https://www.instagram.com/ironheartignition/ 」が、この会場にブースを展開しました。アメリカでのプロモーションの出発点として、あえてこのイベントを選び、準備を進めてやってきたのでした。The One Moto Showが、アメリカ進出を試みるインターナショナルなブランドにとっても重要な位置づけとなって居ることもじつに興味深いです。
来年、開催10回目のアニバーサリーを迎えるThe One Moto Show。その一大イベントを前に、今年は地盤を固めるかのように新しいことにチャレンジし、成功を収めたと言えるでしょう。先に出た主催者のThor Drakeは、来年の10周年記念イベントには、エントリー車両や出展ブランドをさらにセグメントすることで、より質の高い、そしてより楽しいイベントを目指すと語っていました。そんなことを聞けば、いまから来年が楽しみで仕方がありません。開催は2019年の2月上旬です。