2018年2月9日
BMW G310GS 試乗 『ほんの少しの変更が こんな大きな差になって 新しい楽しさ、もうひとつ!』
■試乗&文:中村浩史 ■撮影:島村栄二
■協力:BMW Motorrad Japan http://www.bmw-motorrad.jp/
G310Rに続く、BMWの戦略的小排気量モデルは
BMWのベストセラーアイコンである「GS」エッセンス!
普通二輪免許クラスに、アドベンチャー、オフムードを楽しめる
新しい選択肢が登場した!
G310GSは、ありていに言えばG310Rの「GS」バージョン。GSとは、BMWの誇るオフロード・アドベンチャーカテゴリーを指す言葉で、このカテゴリーを創出し、引っ張って来たのはBMWだと言っていい。
ちなみにGSとは「ゲレンデ・シュトラッセ」の意味。ゲレンデとは、英語でいうグランド。山野とか地面とかそういう意味で、シュトラッセは英語でいうストリートですね。「ゲレンデ・シュポルト」の略だって説もあるけれど、少なくともデビュー当時はゲレンデ・シュトラッセと呼ばれていました。Gelandestrasse=ドイツ人の友人が「ゲヘンシュトガーセ」って発音して教えてくれたのを覚えています。
G310GSのベースとなったのは、2017年に日本デビューを果たしたG310R。1955年のR26以来、実に60年以上ぶりに普通二輪免許で乗れるBMWで、インド・TVSモーターカンパニーで生産されている世界戦略車です。
G310Rの試乗はこちらをご参照ください。<http://www.mr-bike.jp/?p=133047>
BMW本社による設計とはいえ、インド生産ということもあって、G310Rの日本での販売価格は、消費税込み58万円。普通二輪免許で乗れるし、VTR250やMT-03と同じ価格帯だからか、日本でも人気が爆発しています。
「いまオーダーをいただくと、1か月以上お待たせしてしまうと思います。なにせ台数が少ないというか、人気があって、それに見合う入荷がないかんじです。当社は国産車も販売しているので、国産車を見に来てG310Rを気にする、という、今までBMWに興味がなかった層にもアピールしているモデルですね」とは、埼玉県越谷市のBMWモトラッドディーラーである原サイクルさん(http://msc-hara.com/)。
そのG310GSは、G310Rをベースに、主に車体面をオフロードテイスト向けにモディファイが施されているモデル。最大の変更点は、フロントタイヤをG310Rの17インチから19インチにしたこと。オフロード向けにはフロントタイヤ径を大きくするのが常套手段で、タイヤ銘柄も310Rのミシュラン・パイロットストリートから、メッツラー・ツアランスに変更。ツアランスは同じBMWのRnineTアーバンGSにも使われているブランドです。
同時にフロントのサスペンションストロークも140mmから180mmに増やし、キャスターもやや寝かせ、結果ホイールベースも延長。これで完全にオフロードバイクになる、っていうわけではないけれど、タイヤパターンの変更もあって、オフロードにも踏み入っていける仕様としています。
エンジンの特性、走行フィーリングは、当たり前ですがほぼG310Rのまま。水冷DOHC単気筒らしく、吹け上がりが軽く、レスポンスが俊敏。低回転域からグッとくる「トルク型」ではありませんが、アクセルを開けた瞬間のツキがいい。4000rpmくらいでグンとひと伸び、6500rpmでももうひと伸びするタイプですが、アイドリングのまま無造作にクラッチをつなぐとあっけなくエンストすることもありました。クランクマスを軽くして、回転馬力を稼ぐような特性としているのか、排気量の310ccという数字よりパワフルに感じます。
車体もコンパクトで、シート高がG310Rよりも高くされたとはいえ、シティランが気楽なストリートバイクです。車体が軽く、小回りも効くし、足つきもいいので、取り回しも楽だし、渋滞路でこっそりスリヌケするのも苦じゃありません。なにより、19インチフロントタイヤを採用することでG310Rより視線が上がり、さらにハンドルが高く設定されていることで視界がいい。これはG310Rとのハッキリとした差でしょう。
この差はクルージングでも快適性という点で現れていて、弱前傾のG310Rと、アップライトのG310GSという感じ。トップギア6速での80km/hは5000rpm、100km/hは6400rpmっといったところで、リラックスして快適にクルージングすることができます。
ハンドリングは、G310Rがやや安定方向に振れたかな、という感じ。もともとG310Rもクイックというよりは安定感があるタイプなので、さらにピシッと安定する感じ。ワインディングに踏み入るとさらに差がわかるけれど、コーナリングのシャープさではG310Rの方が一枚上。これは、装着タイヤの違いも大きいでしょう。
そして、GSのキャラクターとしてのオフロード性も、きちんと確保されています。フラットダートに踏み入ったけれど、G310Rのタイヤではなかなか進まないような路面でも、躊躇なくアクセルを開けていくことができます。ちょっとしたギャップをフワッと乗り越えるのはOK。けれど、これをオフロードバイク的なスピードでヒョイと飛び越えようとすると、サスペンションのストロークの奥の方で自由度がなく、突き上げが来てしまいます。さすがに大排気量のサスペンションとはグレードが違う。あくまでもG310GSは、GSルックのストリートバイクなのです。
さすがにアドベンチャーとは言わなくても、今では少なくなった、オフロードに踏み入るに躊躇なく、荷物満載でロングツーリングに出かけられるロングツーリングバイク。しかもこれが普通二輪免許で乗ることができる――これがG310GSの最大の魅力だ。まったく新しいBMWの魅力に、もうひとつ強いバリエーションが出現した、ということなのです。
(試乗・文:中村浩史)