2018年2月2日

HONDA GOLDWING/GOLDWING TOUR試乗 『もうオヤジくさいなんて言わせない! 新型ゴールドウイングを テキサスで乗り尽くす。』

■試乗・文:青木タカオ
■写真:HONDA http://www.honda.co.jp/motor/

 
 ゴールドウイング……あぁ、オジサンが乗るオートバイでしょ? いやいや新型を見たらもう、そんなことは言ってられない。デザインはスタイリッシュに生まれ変わっているし、ダブルウィッシュボーン式のフロントサスペンションや7速DCT、取り回しをラクにするウォーキングスピードモードの搭載など新技術が目白押し!
 フルモデルチェンジは待望だったようで、発表するや否やナント年間販売計画台数500台を上回る540台の受注が1月下旬の時点ですでにあるとのこと。アメリカ・テキサスでのメディア向けの試乗会でいち早く試乗し、その魅力を味わってきた!!
 

こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/Euz1HBWUyP4

 

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HONDA GOLDWING TOUR


 
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HONDA GOLDWING


 
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ライダーの身長は175cm。シート高は745mmと従来型より5mm上がっているものの、実際には両足がカカトまでしっかり届き、足着き性はより良くなっている。それはシート座面の内ももが当たるところ、そしてフレームボディのシート跨ぎ部の形状を絞り込むことで実現。ハンドルも近く、大柄な車体にしてはライディングポジションはコンパクトだ。


 

なんといっても気になるのが、ダブルウィッシュボーン式の新フロントサス

 17年ぶりにフルモデルチェンジされたゴールドウイングのジャーナリスト試乗会が、アメリカ・テキサスで開催された。テストライドは2日間およそ440マイル(約700km)に及び、トップケース付きの『ゴールドウイング ツアー』その7速DCT仕様車と6速MT車、そしてサイドケースのみでバガースタイルの『ゴールドウイング』(こちらは6速MT車のみの設定)に乗った。
 
 試乗前からもっとも気になっていたのは、従来のテレスコピック式フォークを改めダブルウィッシュボーン式としたフロントサスペンションだが、ショックを吸収するクッション機能と転舵を受け持つパートを別にしたことで乗り心地が向上し、今回のように長い距離を乗っても疲れ知らずの快適性を実現している。
 違和感はなく、スムーズにストローク。車体のピッチングも穏やかにあって、特に戸惑うことはなかった。加減速、あるいは大きな段差を乗り越えたときも衝撃をしっかり吸収し、グランドツアラーらしいシルキーな乗り味をもたらしている。
 
 基本的にはどっしりと落ち着いたハンドリングだが、コーナーも思いのほか軽快でハンドリングにクセがないことも報告しておきたい。従来モデルより41kgも軽くなった車体は、コーナーにさしかかるとすんなりと寝ていき狙ったラインを外さないし、フロントへの荷重が程良く掛けられギャップを拾っても暴れる素振りを見せない。
 こちらの道はかなり荒れていて、旋回中にうねりや段差に乗り上げるということもザラだが、路面追従性に優れる前後サスが何事もなかったかのように衝撃を吸収し、どんなときも車体は安定しきっていた。直線で前輪の接地を失うほどの大きい段差があったが、それでもフロントサスは落ち着き放っていたことも付け加えておこう。
 
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 2日間のテストライドに同行してくれた開発責任者・中西豊さん(本田技術研究所二輪R&Dセンター主任研究員)によると、ダブルウィッシュボーン式フロントサスのストローク軌跡を真上方向に設定したことで、前輪とエンジン部のクリアランスをこれまで以上に詰めることができ、これによってエンジンを前方に寄せ、前輪分担荷重を最適化することができたという。ホイールベースは従来と同等でありながらフロントへの荷重がしっかりでき、トラクション性つまりコーナリング性能を上げているのだ。
 
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好相性のDCTとライディングモード!

 ゴールドウイングでテキサスを走る。片側3車線以上あるハイウェイを延々と走り続けるんだろうなと渡米前は想像していたが、アメリカホンダのスタッフが先導する道はタイトコーナーも多い片道1車線のいわゆる田舎道。粗悪な舗装に砂の浮くスリッピーな道がほとんどで、しかも不安がちな天候から雨で濡れたあとも所々残っている。
 
 そんな道で、1,833ccもの排気量のある水平対向6気筒エンジンのビッグトルクを存分に発揮できるのかと言えば、それがイエスなのだ。4種のシーン別ライディングモードがあり、それぞれのケースでライディングモードが賢く働き、パワーフィールも異なる。電動プリロードシステムによって初期荷重のみだが、サスペンションまでも特性をアジャストしてくれるから、走りを強力にバックアップしてくれたのだった。
 ウェッティな路面では「レイン」を、トラクションに優れる環境で高回転まで引っ張りたいなら「スポーツ」に、フリーウェイなど日常的には「ツーリング」を選び、さらにより早いタイミングでシフトアップする「エコノ」の設定もある。
 
 それぞれにスロットルレスポンスやシフトチェンジタイミングが異なり持ち味があるのだが、このライディングモードを存分に生かし切るのがDCT仕様車だった。奇数段(1,3,5,7)と偶数段(2,4,6)、デュアルクラッチによって駆動力に途切れのないシームレスなシフトチェンジ、そしてクラッチレバー操作の要らないイージーライディングを可能としているが、2010年登場のVFR1200F以来、第3世代となったDCTは7速化し、クラッチとメインシャフト間にスプリングダンパーを設けることで変速時の音や衝撃が減り、より滑らかなシフトフィーリングを実現。オートマチック感覚の”ATモード”にしておけば、ストレスのないクルージングが楽しめてしまう。
 もちろんシフトチェンジは自分でもでき、ハンドル左にある+(プラス)、ー(マイナス)ボタンで使うギアを好きなように選べる。
 
 テストライドが始まってすぐの頃は雨もパラパラと降り、路面コンディションもツルツルの手強いものだったので「ツーリング」や「レイン」を多用し、エンブレをもう少し効かせたいというときにだけー(マイナス)ボタンでシフトダウンし、あとはバイク任せでという走り方をしていた。
 天候が回復するとワインディングやハイウェイで「スポーツ」も使い、エキサイティングな走りも味わったが、長い距離を走るとなると結局のところ選ぶモードは「ツーリング」に落ち着く。
 
 そしてテストライドも終盤にさしかかり、ペースも単調になったときにわかったのが「エコノ」のテイスティさだった。穏やかなスロットルレスポンスが、最初はつまらないと感じていたが、ロングライドにこれが最適。回転のきわめて低いところで早めにシフトを上げ、エンジンは低回転で心地良く回っている。
 7速DCTの変速ギアレシオは低速側をクロス気味に、高速側は逆にワイドレシオにされていて、「エコノ」にしてノンビリ走るとパワーフィールがピッタリ合う。少しだるいけど、大排気量エンジンのビッグトルクがいい気持ち。このまま大陸横断の旅に出たくなる気分で、いつまでもゴールドウイングで走り続けていたくなるのだ。
 
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ウォーキングスピードモード搭載だから
もう駐車場で苦労しない!

 そしてゴールドウイングというと、取り回しが難点と敬遠されがちだが、それをDCT仕様車では「微速前後進機能(ウォーキングスピードモード)」という新機能で解消している。
 モーター駆動による電動リバースだった従来型ではR⇔N⇔Lowの操作を繰り返す必要があったが、ウォーキングスピードモードでは左手ハンドルスイッチの+(プラス)で微速前進、ー(マイナス)ボタンで微速後進ができてしまう。
 
 今回のテストライドでは、体格に恵まれたアメリカのジャーナリストも同行したが、誰もがこれを使い絶賛していたのが印象的。DCT仕様車でなくとも電動リバースは健在。取り回しに苦労しないゴールドウイング、これって夢のような話なのかもしれない。
 
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オーディオの音量を上げ
バガースタイルでストリートを流せばいい気分!

 さて、冒頭でも述べたとおり7速DCT仕様車は『ゴールドウイング ツアー』にのみ設定され、バガースタイルの『ゴールドウイング』ではマニュアルのみ。『ゴールドウイング ツアー』の場合、DCT車から乗り換えると、6速マニュアルミッションはクラッチレバー操作とシフトチェンジが億劫になる。それほどに、電子制御任せで走れるDCTが気に入っている自分がいるのだ。グランドツアラーとしての位置づけのツアーならDCTがいい。自分なら、そう思う。
 
 ただ面白いことに、より軽快な車体の『ゴールドウイング』の場合、クラッチ操作をしてアグレシッブに乗ろうという気にさせてくれるから不思議。コッチはこれでいい。エンジンを高回転まで引っ張り上げて乗ったり、早めにシフトアップしてノンビリ流したり、気分次第で好きなように乗ればいいのだ。
 
 オーディオの音量を上げつつ、ストリートを気怠く流す。『ゴールドウイング ツアー』で長い距離を走るのもいいが、『ゴールドウイング』で気まぐれに街乗りをするのも気持ちがいい。次に乗るときは、iPhoneのミュージックプレイヤーにお気に入りの音楽をもっと入れておこうと思う。
 
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新型ゴールドウイング開発責任者・中西豊さん(本田技術研究所二輪R&Dセンター主任研究員)。


 
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各部に掛かる応力から求められる板厚をきめ細かく調整した新設計アルミツインチューブフレーム。スイングアームと合わせ、従来比約2kgの重量低減を実現している。


 
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上下アームの角度設定により、ストローク軌跡を真上方向に設定したダブルウィッシュボーン式フロントサスペンション。フォーク部の慣性マスを40%以上低減し、走行時のハンドリングをより軽快にした。


 
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中央から左右に伸びるセンターエクステンションによって灯面を上下に分けたLEDヘッドライト。ロービームが上側、下側にハイとローを兼ねたシグネチャーランプを配している。


 
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左手ハンドルスイッチで無段階に調整できる電動スクリーン。もっとも低い位置にすれば心地よい風を感じられるし、最大に上げれば高いウインドプロテクション性能を発揮する。


 
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タコメーターを右、スピードメーターを左にそれぞれ指針式で配備。メーター中央にはフルカラー7インチTFT液晶画面をレイアウトし、オーディオなどのインフォテイメントシステム、トルクコントロールON/OFF、プリロードアジャストなど各セッティング画面を表示する。


 
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Apple CarPlayへの対応によって、自分が使っているiPhone内のナビアプリ、音楽プレイリストなどの情報コンテンツが、そのまま乗車時にも活用できた。iPhoneなどスマートフォントとの接続は、USBまたはブルートゥースで可能だ。


 
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エンジン前後長を短縮し、搭載位置をより車体前側にした水平対向6気筒エンジン。2バルブを4バルブ化しつつも、エンジン単体で6速MT仕様で従来比約6.2kgの軽量。7速+リバースDCT仕様でも約3.8kgの軽量化を実現した。CRF450Rなどで実績のあるユニカムバルブトレインが用いられ、コンパクト化が図られている。


 
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ライディングモードに連動する電子制御式コンバインドABSを採用したブレーキシステム。ABS作動用に従来2個のモーターが備わっていたが、より小型軽量な還流式ABSモジュレーター1個に置き換えた。前輪はラジアルマウントキャリパーで装備で、制動力・タッチは申し分ない。


 
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高い快適性を確保しながら、向上したスポーツ性能をより積極的に楽しめるよう車体コントロール性に配慮し、シートもライダーが動きやすい形状になった。


 
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2室+音の減衰を図る共鳴室とした構造とし、サイレンサー内部のグラスウールを廃止したマフラー。軽量化はもちろん、大排気量フラット6ならではの重厚さと鼓動感を備えた迫力あるサウンドを奏でる。


 
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操作頻度が高い機能は、グリップから手を離さず操作できるようハンドルにスイッチを集約。右側ではライディングモードやAT/MT切り替え、クルーズコントロールを操作できる。


 
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左ハンドルスイッチでは、スクリーンUP/DOWN、オーディオなどのボリューム、ウォーキングスピードモードの操作、各種設定のセレクト/決定ができるほか、ホームボタンなどもある。


 
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従来ではコクピット左右に分かれていた操作スイッチ類は、より機能を盛り込みながらも手の届きやすいセンターコンソールへ集約された。感覚的に操作できるスティックボタンやヒーター類のスイッチがまとまっている。


 
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フルフェイスヘルメット2個を余裕を持って収納できるリアトランク。スマートキーを身に着けていれば、ボタンを押すだけで、キー操作なく開閉を可能としている。


 
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リアトランクとサドルバッグ合わせて110Lの容量を確保。サドルケースやリアトランクにはダンパーが設けられ、滑らかで上質感のある開閉を実現した。3泊4日、2人分の荷物を想定している。


 
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多眼LEDを採用したテールランプは、左右セパレートタイプの横長構成で被視認性に優れるもの。ウインカーとともにビルトインされ、スタイリッシュなテールエンドを演出している。


 
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●Gold Wing Tour Dual Clutch Transmission 〈Gold Wing Tour〉《Gold Wing》 主要諸元
■全長×全幅×全高:2,575《2,475》×905〈925〉《925》×1,430《1,340》mm、ホイールベース:1,695mm、シート高:745mm、車両重量:383〈379〉《365》kg■エンジン種類:水冷4ストローク水平対向6気筒SOHC4バルブ、総排気量:1,833cm3、ボア×ストローク:73.0×73.0mm、圧縮比:10.5、最高出力:93kw(126PS)/5,500rpm、最大トルク:170N・m/4,500rpm、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:21L、変速機形式:電子式7段変速(DCT)〈常時噛合式6段リターン〉《常時噛合式6段リターン》、燃料消費率:低地燃費値 27.0km/L(60㎞/h、2名乗車)、WMTCモード値 18.2km/L(クラス3-2、1名乗車時)■フレーム形式:ダイヤモンド、キャスター:30°30′、トレール:109mm、ブレーキ(前×後):油圧式ダブルディスク × 油圧式シングルディスク、タイヤ(前×後):130/70R18M/C 63H × 200/55R16M/C 77H。
■メーカー希望小売価格:3,315,600円〈2,959,200円/3,013,200円〉《2,732,400円》(消費税8%込み)。


 


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