2018年2月7日
MBHCC C5 大神 龍 HERO`S Meeting Report オオカミ男の独り言
第58回 海外編第5章 ISLE OF MAN
国内便にはボーディング・ブリッジはない。ターミナルの外を歩いて自分の乗る機に向かう。
なんだかんだ言ってもやはり近くで見ると旅客機というのは大きいものだ。
と、今更ながらに感心するも不安な気持ちはぬぐいきれない。
だって、プロペラだもの。
タラップを昇り、入った機内で自分の座席を見つけた。しかし……オレの席は窓側でその窓越しにあの巨大なプロペラが。それはまさに至近距離といっていほど目の前で「舐めるなよ。間近でオレの底力を拝ませてやる。」と言わんばかりに鎮座している。
その威圧感はマンチェスター行きの機内でオレの隣にいた黒人の比ではない。
機内アナウンスが終わりいよいよマン島へ向けてフライトの時間となった。
オレの真横でプロペラがブンブンと回り始める。スゲェ怖ぇ~~~~!!
滑走路に進入し助走に入った直後、一気にエンジン音は高回転のものに変わり、機体は怒涛の加速を見せた。強烈なGに背中が押し付けられる。
機体はグングンと速度をあげ、そして離陸。
窓の外を見るとどんなもんだと言わんばかりにプロペラが唸りをあげている。
ええ、お見それ致しました。どうぞこの調子でオレを無事マン島まで送り届けてくださいな。
窓から下の方を見てみる。空からの景色を自分の目で眺めるのは初めてである。
眼下にはイギリス本土の街並みが見える。
しばらくすると海が見えてきた。そしてオレの視界にマン島の片鱗が見え始める。
ついに来た。何かが体の奥から込み上げてくる。もしかしたらオレは涙ぐんでいたかもしれない。
島全体の大半を占める広大な牧草地。海沿いに点在する街。鬱蒼とした山林はなく起伏の緩やかな地形が見て取れる。美しい!!
プラクティスを含めるならTTレースは前日からもう始まっている。世界中から選び抜かれた気の狂った連中があそこを走っているのだ。
過去、100年を超える歴史の中で300人近いライダーの命を飲み込んできた島。
同時に多くのライダーがその栄誉をここで手に入れてもいる。
美しさの裏側で半端な気持ちを受け付けないオーラのようなものをこの島は放つ。
ダグラスの街が見えてきた。機は着陸に向け降下していく。空港の滑走路が間近に迫る。
ゆっくり、ゆっくりと地上が近づいてくる。そして着陸。
バウンドしたのか、二回ほどゴン、ゴンと衝撃が走った。着陸時にバウンドすると車輪の軸が折れてしまう事があるという話だが大丈夫なのか!?
まぁいい。細かい事を気にするのはよそう。とにかく無事に降り立ったのだから。そう、オレはついに来てしまったのだ。ISLE OF MANへ。
タラップを降り、マン島の地を踏みしめる。まさに、まさに、感無量である。
ここからの滞在期間は約一週間。もちろんお目当ては世界的に見ても唯一無二のイカレた公道レースだ。だがここへきてオレはそれだけではない期待感というものを感じ始めていた。レースだけじゃない。ここにはモーターサイクル好きを魅了するもっと大きな何かがある。心臓の鼓動が早まってきた。出発前のあのドキドキ、ワクワクする感覚が再びオレを包み込んだ。
HERO‘S 大神 龍
年齢不詳・職業フリーライター
見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ750?。
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