2017年11月29日
Honda GOLDWING 技術発表会より 『新世代のゴールドウイング開発は 「The King of Bike」というテーマの見直しから始まった』
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/
先日の東京モーターショーで国内デビューを果たした新型ゴールドウイング。今回は水平対向6気筒エンジンというキーワード以外、エンジン、フレームを含めてすべて一からの再開発とあって大いに注目を集めている。しかもこのニューゴールドウイング、2018年4月にスタートするホンダの新販売チャンネル「Honda Dream」での販売も決定という。で、それに先立ってこのほど新世代ゴールドウイングの技術情報を公開する説明会が報道陣向けに開催されたので早速紹介しよう。
まずはこれまでのゴールドウイングの簡単なヒストリーから。
初代の水平対向4気筒、リッターモデルのゴールドウイング、GL1000は1975年に発売開始されたからなんと40年を超す長寿モデルということになる。そして、この40数年間に発売されたゴールドウイング一族は、なんと約79万5千台(累計生産台数)を数えるという。
そして1980年には排気量アップでGL1100へ、1984年にはさらにGL1200へ。同じ水平対向エンジンながら6気筒に発展したのは1988年のGL1500から。そして2001年にはさらに1.8リッターへ排気量アップのGL1800へ。今回のフルモデルチェンジは排気量こそ同じ1.8リッターだが、第6世代のゴールドウイング誕生と発表されている。
さて、その第6世代のゴールドウイング、開発コンセプトは、40年以上にわたって君臨してきた“The King of Bike”というテーマそのものを見直すところから始まったという。いつの間にかに「立派」であり「豪華」でなければゴールドウイングじゃない、という意識の刷り込みに支配されていたのでは、という。
そこで基本に立ち返って「モーターサイクルの原点」である、
(1)車体:デイリーユースからロングツーリングまで幅広く使いこなせる、より軽量で高密度な新世代車体パッケージング
(2)パワーユニット:スムーズ&アグレッシブな新世代水平対向6気筒エンジン
(3)スタイリング:“Refined Shape Tension Style”洗練された鋭さと張りのある面
(4)制御、電装:“Premium”を実感する先進装備
をテーマとして開発を進めたという。
まずは新世代ゴールドウイングの最大の特徴といえるフロントのダブルウイッシュボーンサスペンションから紹介しよう。クルマではごくごく一般に採用されているダブルウイッシュボーンサスだが、ゴールドウイングが従来のテレスコピックサスからこのダブルウイッシュボーンサスに変更した最大の理由は、テレスコピックサスでは避けられない摺動抵抗から解放させたかった、というのが一番の理由だ。特にゴールドウイング級の超重量車では想像以上の摺動抵抗と闘っていたであろうことは想像に難くない。テレスコピックサスでは、路面からのショックを吸収する機能と、舵を切るという二つの機能をあの2本のフォークが全て受け持っていたのだから。
そこで取り入れられたのが、ダブルウイッシュボーンサスだ。ダブルウイッシュボーンサスは、上下方向の動きはフレーム先端から伸びたアッパーとロアーの両アームが受け持ち、ショックの吸収はロアーアームに取り付けられたダンパー&スプリングが受け持つ構造になっている。一方、転舵機能はフロントフォークホルダーがその役目を担う構造だ。こうして見ると、二輪のテレスコピックサスというのはシンプルでありながら両機能を同時にこなしてしまう優等生といえないこともない。ただ、それも車重次第で、車重が大きくなればなるほど摺動抵抗が増大化してしまう構造でもあった。
さらにダブルウイッシュボーン化することで、全ての軸受け部をベアリング化させられるということも大きなメリットだ。摺動抵抗と転がり抵抗ではそれこそ雲泥の差が出てくる。また、ゴールドウイングでは前輪とハンドル、双方の転舵軸をステアリングタイロッドで繋ぐ構造を取り入れており、それによりライダーの理想のポジションを犠牲にすることなく、自然な操作フィールを実現することができたという。
また、ダブルウイッシュボーンサスの特性として、ホイールの上下の動きをある程度自由にセッティングすることができ、新型ゴールドウイングでは、ほぼ真上方向にストロークするよう設定している。テレスコピックサスではキャスター角をとっているので必然的にサスが沈み込むとホイールがエンジンに近づいていってしまう。ダブルウイッシュボーン化でフロントタイヤとエンジンとのクリアランスをより詰めることが可能となり、理想の重量配分に近づけることにも貢献したという。
もう一つの新型ゴールドウイングの大きな特徴は、第3世代の7速+リバースDCTの採用があげられる。長距離ツアラーとして、高速巡航を考慮、燃費や静粛性をさらに向上させるためDCTの7速化を図るとともに、手元のスイッチで操作できる“微速前後進機能(ウォーキングモード)”を追加し、さらにフラッグシップモデルに相応しいクオリティとして変速時の質感も大幅に向上させているという。
従来の電動式リバース機能では、車両の切り返し時には「R」→「N」→「Low」の操作を繰り返さなければならなかったのに対し、リバースDCTでは、エンジンの駆動力と電子制御クラッチを使うことで、左手ハンドルスイッチの「+ボタン」と「-ボタン」だけで微速前後進を可能としている。またスロットルバイワイヤシステムの採用により、エンジン回転数を一定に保ちながらクラッチのつながりを緻密に制御することで速度をコントロールし、様々なシチュエーションにおける車体取り回し時の安心感も向上させているという。
また、この第3世代DCTの採用によりリバースアイドルシャフトが不要になり、電動リバース関連装置も廃止するなどにより、エンジン単体で約3.9kgの軽量化も達成できている。
全面的に見直したという6気筒エンジンについてもざっと紹介すると、モーターサイクル用量産エンジンとしては唯一無二の縦置き水冷4ストローク水平対向6気筒の基本は継承しながら、大幅な軽量化を図りながらも、重厚感、パルス感を持つサウンドを伴った低回転域で余裕のあるトルク特性による、ゆったりしたクルーズ性能とそこからのダイナミックな加速の実現と同時に、燃焼効率の追求などにより燃費向上も図っている。
スロットルバイワイヤシステムも採用。これまた新たに採用したシーン別ライディングモードシステムと組み合わせることで幅広い走行シーンで、よりライダーの意思にシンクロしたアクセレーションを実現しているという。
シーン別ライディングモードは、スロットルバイワイヤシステムによるパワーフィールの違いに加え、7速DCTのATモード変速スケジュール、トルクコントロール、サスペンションの減衰特性、ブレーキ特性の計5要素で制御するシステムで、各走行シーンにマッチした出力特性と運動特性による「走る」「曲がる」「止まる」を最適バランスを提供するシステムだ。
具体的なモードは「ツアー」、「スポーツ」、「エコノ」、「レイン」の4つで、「1台で4台分の走りのキャラクター」を実現したという。
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