2017年11月13日

KAWASAKI VERSYS-X 250 TOURER 試乗 『街乗りならZ250SL スポーツランならNinja250 そして長距離を走るならヴェルシスだ、という カワサキの適材適所戦略』

■試乗&文:中村浩史 ■撮影:依田 麗
■協力:カワサキモータースジャパン http://www.kawasaki-motors.com/

 
250ccアドベンチャークラス、といわれても
僕はちょっとこの呼び名に反対です(笑)。
わかりやすく言えば、250ccミドルクラスのツーリングバイク。
このカテゴリーの人気モデル、ヴェルシス-X 250 ツアラーに
2018年ニューカラーが追加されました。

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 ニューカラーの正式名称はマトリックスカモグレー、通称黒カモ。うん、いまストリートファッションにも使われているカラーグラフィック、旬ですね。限定400台発売なので、オッと思われた向きはお急ぎください。今回の試乗にも、手持ちのヒョウドウプロダクツさんのイージーライドカモフラージュパンツを履いてみました^^ 合わせすぎたかな(笑)。
 
 ヴェルシス-X 250 ツアラーは、ヴェルシス-X 250にパニアケース、エンジンガード、ハンドガードやセンタースタンドを標準装備したバージョンで、コレがいま人気! 追加装備が総額12万円近くにもなるのに、ヴェルシスXより5万4千円しか高くないお買い得ってこともあるんでしょうね。ヴェルシス買うならX 250 ツアラー、ってオーナーが多いみたいです。
 
 しかし、人気の秘密はやはりその走り。これが、とてもいい! いまヴェルシスのライバルと目されている中では、僕はこれイチオシです。つまり、CRF250RallyよりもV-strom250よりもミドルクラスのツーリングバイクとしての完成度が高い、と思っています。
 ミドルクラスの良さっていうのは、そもそもの車両価格がお手頃、車検がないから維持費も安い、軽量コンパクトだから乗る人のスキルを問わない、ってポイントがあると思う。そこでロードスポーツとかストリートバイクとかオフロードバイクがあると思うんだけれど、ヴェルシスはそこに誕生した「ロングツーリングバイク」ですね。
 もちろん、この「250ccロングツーリングバイク」っていうカテゴリーは新しいものじゃなく、「長く途絶えていた」的なニュアンスです。僕が言うこのカテゴリーは、ホンダXL250Rパリダカールや、ヤマハTT250Raid、スズキDJEBEL200とか、その時代のモデルたち。カワサキはKLE250アネーロってモデルがあったなぁ。
 
 そう、僕はヴェルシス-X 250にKLE250アネーロの影を見たのだ。乗り味がソフトで、長距離ランに向いているサスペンション、車体姿勢、燃料タンク容量があるスポーツバイク。そこに「特化」している姿勢が、すごくいいのだ。
 250ccという枠の中で、キビキビ走ったりワインディングを駆けるならNinja250の方が楽しいし、オフロードをメインに走るならKLX250がいいしね。その中で「遠くまで快適に、時には荷物もたくさん」って使い方に特化しているのが、ヴェルシス250Xであり、Vストローム250なのだ。CRF250Rallyはちょっと違うセンを狙ってるかな。
 
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 ヴェルシス-X 250は、Ninja250をベースとしたロングツーリングバイクだ。エンジン、フレームをベースとしてエクステリアデザインを専用として、まったく違うモデルに仕立て上げている。これだけでも別モデルとして成立しているのに、前後にワイヤースポークホイールを履いて、ホイールサイズも前19/後17インチ(Ninja250は前後17インチ)と専用設定。車体姿勢はNinja250の前下がりから前後フラットに近く設定され、シート高も815mm(Ninja250は785mm)に上げられている。
 
 しかもヴェルシス-Xは、ベースとなったNinja250とエンジンフィーリングもちょっと違う。これは、マフラーが専用設定されていることと、ファイナルがローギアード寄りに変更されているからで、Ninja250に比べてドリブンスプロケットが2丁増やされている。出足がグッと強いのは、車重が増えるし、Ninja250よりもタンデムや荷物満載のことを考えているからだろう。こういうのを「正常進化」というのだ。
 さらにホイールサイズや重量配分の変更でハンドリングも変わっていて、Ninja250よりも重量感があって、それが低重心にまとまっている感じ。それでも重ったるい感じはなく、高速クルージングに入ると、直進安定性がピシッと出ていて、重量感もなくなる印象。
 
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 高速道路を100km/hで走っていて、トップギア6速、7800rpm。エンジンはうなりを上げるというより、振動も騒音も抑えられて、快適にクルージングできる。もちろん、このスピード域ならば大排気量モデルの方がいいけれど、250ccには大排気量モデルにはないメリットもたくさんある。250ccだからこれくらいでガマンだな、ってことはたくさんある。けれど、ことロングツーリングをそこそこのペースでとなると、ガマンすべきことはそうそう多くはないのだ。
 
 カワサキ250ccはこれで、選択肢もグッと増えた。街乗りをメインにするならZ250SLがいいし、スポーツランやツーリング、時にはサーキットも走るならNinja250がいい。そして、とことん旅をするならヴェルシス-X 250、しかもパニアケース標準装備のツアーがいい。もちろん、ヴェルシスで街乗りも、Z250SLで長距離ランOKだけど、いちばんフィットするのが、ってこと。
 
 やっぱりこれは、クルージングに特化したモデルなのだ。こういうモデルが出ることで、バイクってやっぱり楽しいなぁ、って思い返してくれる人が増えることをうれしく思います。
 
(試乗・文:中村浩史)
 
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フロントブレーキはφ290mmのペータル(波形)ディスク。ABSは標準装備で、2018年モデルからは、車名の「ABS」を省略するようです。Ninja250の前後17インチキャストホイールから、前後ワイヤースポークに、フロントはサイズを19インチに変更。タイやもヴェルシス-X用に専用設定。


 
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ヴェルシス-X 250 ツアラー専用のニューカラーは、この「マトリックスカモグレー」。いや、もっとシックな方がいいです、って人にはツアラーにブラックが、ヴェルシスXにもブラックとマットグリーンがラインアップ。ツアラーには写真のエンジンがードが標準装備で、フォグランプはオプション(3万9096円/税込)。


 
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エンジンはNinja250と共通の水冷並列2気筒。ヴェルシスXとなって車両重量が増えた分、特に発進時に出やすいようにか、ドリブンスプロケットを2丁増やし、ローギアード(=加速型)にして、そのぶん高回転の伸びはNinjaに軍配。バランサーを装備しているのも、Ninjaよりヴェルシスに合っているかも。


 
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リアホイールはNinjaと同じく17インチ。タイヤ幅は130/80と専用設定(Ninjaは140/70と限定車は150/60)され、オフロードの走破性も上げている。もちろん、オフロードの走破性はKLXには劣るが、NinjaとD-TRACKERよりも上(のはず)。スプロケットはドライブ14/ドリブン46丁。リアブレーキはφ220mmのペータルタイプで、Ninjaのときにはあまり気づかなかったけれど、リアブレーキを多用するオフロードなどで使いやすい!


 
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スイングアームピボット部には、フレームカバーが装備されている。これは、オフロードランの時に、特にスタンディングするときなど、ブーツやシューズでくるぶしグリップするあたりで、このカバーがないと、すぐに塗装がはげてきちゃうのを防止するもの。本格的な親切装備だ。


 
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ヴェルシス-X 250 ツアラーには、樹脂製のパニアケースが標準装備される。開閉はメインキーで出来るため便利で、単体で購入すると税込5万2164円もするため、ヴェルシス X 250 ツアラーの方がお得。パニアのブラケットも付属で、写真のトッププレートだけでも、荷物をグッと積みやすくなる。トップケース(税込1万584円)はオプション。


 
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マフラーはおそらくNinja250と同一か、小変更だけを施したもの。タイヤは、Ninaよりもオフロード走行を意識したもので、17インチサイズのチューブレスタイプを採用。


 
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特に高速クルージング中に気に入ったのが、この大型スクリーン。Ninjaより高さがあって、アップライトなライディングポジションでもウィンドプロテクション性が高かった。 ツアラー標準装備のハンドガードは林道走行時などに、枝葉で手をヒットする痛いのを防いでくれるだけでなく、冬の防寒効果も高いのです。


 
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Ninjaよりも表示部が大きく、視認性の高いメーター。液晶部にはスピード、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、残ガス走行可能距離などを表示する。燃費のいい走行状態の時は「eco」ランプが点灯。このランプが点灯するのが楽しみで、ついつい好燃燃費走行してしまうという狙いにハマっちゃいます。


 
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●VERSYS-X 250 TOURER(2BK-LE250D) 主要諸元
■全長×全幅×全高:2,170×860×1,390mm、ホイールベース:1,450mm、シート高:815mm、車両重量:175kg■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ、総排気量:248cm3、ボア×ストローク:62.0×41.2mm、圧縮比:11.3、最高出力:24kw(33PS)/11,500rpm、最大トルク:21N・m/10,000rpm、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:17L、変速機形式:常時嚙合式6段リターン、燃料消費率:国土交通省届出値・定地燃費値 31.0km/L(60km/h、2名乗車時)、WMTCモード値 24.8km/L(クラス3-2、1名乗車時)■フレーム形式:ダイヤモンド、キャスター角:24.3°、トレール:108mm、ブレーキ(前×後):油圧式シングルディスク × 油圧式シングルディスク
■メーカー希望小売価格:629,640円/640,440円(消費税8%込み)


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