2017年11月9日
続・スーパーカブ大全
スーパーカブ世界生産累計1億台達成!「今日も世界中で続々生産される」
●撮影−依田 麗・衛藤達也・富樫秀明・松川忍・青山義明
2017年、ついに生産累計1億台を達成したスーパーカブシリーズ。中国生産から日本生産へと移管され、日本向けに丸目ヘッドライトの新型スーパーカブが11月から発売される。東京モーターショーはクロスカブが市販予定車として発表された他、初代C100をイメージしたデザインながら、現代の装備を満載したフラッグシップモデルC125もコンセプトモデルとして展示されていた。1億台達成は、スーパーカブ新時代の幕開けともいえるような出来事といえようか。
生産累計1億台を超えますます元気なスーパーカブ。
気軽で使い勝手がよく、故障も少ないシティコミューター。世界中で愛され今日も走り続けるスーパーカブ。
初代スーパーカブC100が登場したのは1958年。早いもので来年(2018年)には、なんと60周年を迎える。その間に、日本だけではなく、世界各国に輸出され、海外生産も開始され、幾度もモデルチェンジ、マイナーチェンジを繰り返し、バリエーションモデルも多数誕生した。
途切れることなく世界各国で生産され続けた、スーパーカブシリーズの世界生産累計が2017年10月、ついに1億台を突破した。1億台達成を記念して、10月19日に熊本製作所で開催された記念式典は、盛況のうちに無事終了した。その模様は即報のとおり。
記念式典では、スーパーカブ世界生産累計1億台目のラインオフ記念車に、八郷社長自らライディングして登場。
こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/PoIjPCis9Ng
今年の第45回東京モーターショーホンダブースでは、スーパーカブの1億台達成を記念して、歴代のスーパーカブシリーズを一堂に展示。
その隣には、スーパーカブ110をベースに、1971年の鈴鹿製作所1000万台記念を現代風にアレンジしたゴールドカラーで、特製エンブレム、メッキメーターリング、クロスカブのマフラーカバーなどを特別装備した、熊本製作所でお披露目された1億台達成記念車とは異なる仕様の1億台記念車も展示された。
市販予定モデルとして公開されたワールドプレミアモデルのクロスカブ110。110プロがベースなのは、先代のクロスカブと同様だが、レッグシールドは未装備で、要望の高かった二人乗り仕様となった。二人乗り仕様のためアップマフラーではないが、イメージ的には1968年のCT50に近い雰囲気。
コンセプトモデルのスーパーカブC125。初代C100のイメージでデザインされた125ccモデルで、17インチキャストホイール、LEDライト、スマートキー、電動シートオープナー、液晶メーターなど、今までのスーパーカブにはなかった充実装備のスーパーカブシリーズフラッグシップ的存在。
急激な需要増に対応するため専用工場を建設。
希代の名車スーパーカブは、1958年に埼玉県和光市にあった大和工場(現在の和光本社)で生産を開始した。それまでの常識をことごとく覆すような扱いやすく高性能で壊れないスーパーカブは、あっという間にコミューター市場を席巻、翌年までに早くも20万台近くが生産された。
増え続ける需要に対応するため、三重県鈴鹿市の旧海軍工廠跡地(約21万坪)に、わずか1年でスーパーカブ生産専用工場の鈴鹿製作所を建設、1961年8月から操業を開始した。防音、防塵を徹底するため、空調を完備した窓のない斬新な工場で、生産能力は大和工場の月産2万台から5万台と大幅に引き上げられた。1980年代の最盛期には昼夜2交代で日産6千台を記録したが、1991年に生産性の向上、効率化のため熊本製作所に生産を移管。約30年間に延べ1900万台以上のスーパーカブが生産された。
1958年6月から埼玉製作所の大和工場で生産を開始したスーパーカブC100。昼夜二交代で増産に当たったが急増する需要に追いつくことが出来ず、鈴鹿製作所へバトンタッチした。ラインの右手前でハンドルに手をかけているのは、生みの親の本田宗一郎氏。
1961年8月、スーパーカブ専用工場として操業した鈴鹿製作所。1971年3月に鈴鹿製作所生産1000万台のラインオフ記念式典。この記念車は現在ホンダコレクションホールで動態保存されている。
国内唯一の二輪生産拠点、熊本製作所。
1976年1月、ホンダ4番目の製作所として操業を開始した熊本製作所は、現在日本で唯一、ホンダの二輪生産拠点であり、世界のマザー工場としての責務も負っている。2016年4月に発生した熊本地震では、熊本製作所も大きな被害を受け操業を休止していたが、9月13日には全面復旧(詳細は。こちらで。※PCサイトへ移動します)している。スーパーカブは1991年から生産を開始し、グローバルモデルとなった2012年に中国に移管されるまで生産を行った。その後もリトルカブのみは熊本製作所で生産され、スーパーカブシリーズでは唯一のメイドインジャパンモデルであった。
2017年11月から販売を開始するニューモデルのスーパーカブ50/110と50/110プロ、モーターショーで発表されたクロスカブ、日本郵政向けのいわゆる郵便カブとオーストラリア向けの郵政仕様は、熊本製作所で生産される。熊本製作所にある4つの生産ライン(コミューターライン、マルチライン、ファンライン、セルゾーン)のうち、主に125cc以下の小型モデルを生産するコミューターラインで生産が行われる(ちなみにリトルカブはマルチラインで生産されていた)。
阿蘇山の裾野、熊本県菊池郡大津町にある熊本製作所。東京ドーム約36個分に当たる約51万坪の広大な敷地を持ち、二輪だけではなくATVや汎用エンジン、汎用製品も生産している。
スーパーカブの生産が中国へと移管された2012年以降もリトルカブは、熊本製作所で生産されていた。
最新型のスーパーカブは、再び熊本製作所で生産されるメイドインジャパン。11月10日の販売開始に向けて続々と生産されている。
海外では15ヶ国で生産。
スーパーカブ系モデルの海外生産は、1961年に台湾において行われたノックダウン生産に始まり、1962年にホンダ初の海外工場であるベルギー工場で最初にラインオフしたモデルがスーパーカブC100であった(後にモペッドタイプのC310を生産)。東南アジアにおいては1967年にタイ、1969年マレーシア、1971年インドネシアと次々に生産を開始。生活に欠かせない足として浸透し、世界有数のカブ天国となった。海外生産拠点の増加により生産台数も右肩上がりに増え続け、1974年世界生産累計は1000万台を突破した。
2017年現在、スーパーカブ系モデルは日本以外の、メキシコ、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、フィリピン、中国、インドネシア、ベトナム、タイ、マレーシア、ナイジェリア、コロンビア、カンボジア、ラオスの計15ヶ国16拠点で生産されている。また、ホンダが確認しているだけでも延べ160以上の国と地域(ちなみに日本が承認している国は全部で195ヶ国)で販売された。並行輸入などを含めれば、走っていない国の方が少ないかもしれない。モータリゼーションの先兵としての役割はもちろん、四輪車社会になっても需要が減るどころか、気軽で低燃費なシティコミューターとしての人気はとどまるところを知らない、次なる節目の2億台に向け、スーパーカブシリーズはこれからも増え続けていくに違いない。
世界15ヶ国16拠点で生産されるスーパーカブシリーズ。上は2007年から本格生産を開始した中国の新大洲本田(2008年頃)。下はタイホンダ(2005年頃)の工場。
ホンダ初の海外工場となったベルギー工場では、ヨーロッパ向けに新たに設計されたペダル付きモペッドタイプのC310を1962年から生産した。
東南アジアでは生産開始当初、日本と同スタイルのスーパーカブをベースに現地仕様が生産されたが、次第にニーズに合わせた専用モデルに移行していく。写真は1970年マレーシア生産車C70。
スーパーカブのシルエットを残しつつ、現地のニーズを反映して生産されている海外生産モデル。ブラジルで生産されるBIZ(2002年)。シート下に大容量トランクを持つ。
東南アジアで人気なスポーティなシルエットのWaveシリーズ。写真はPGM-FIを搭載したWave125i(2006年)
かつて日本にも輸入販売されたEX100、通称タイカブがベースのインド向けのStreet(1997)。リアにサリーを巻き込まないようにガードが付くのが大きな特徴。
オーソドックスなスタイルながらASEAN地域で根強い人気を保つDream110(2011年タイ仕様)。
※生産累計に含まれるスーパーカブは、基本的に4ストロークのいわゆる水平エンジンを低床アンダーボーンフレームに搭載し、14インチ以上のタイヤを装着したモデル。ペダル付きモペッドタイプだが、ベルギーで生産されたC310(1962年)は含まれる。カブの名前がついていても、自転車用補助エンジンのカブF型(1952年)や、バックボーンフレームのスポーツカブC110(1960年)などと、アンダーボーンでも、スマイル、ノバなど海外で生産されている2ストロークエンジン搭載車は、生産累計には含まれていない。
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