2017年9月26日
MBHCC E-1 西村章 MotoGPはいらんかね
Vol.126 第14戦 アラゴンGP Dessert in the Desert
2017年シーズンも早いものでもう第14戦、欧州のレースとしては最後からふたつめとなるアラゴンGPである。「最後からふたつめ」という言い方はなんだかまだるっこしいが、英語では’penultimate’という便利なことばがある。「2017年シーズンの最後からふたつめの欧州のレース」というと悪文の典型みたいになってしまうけれども、”the penultimate European race in the 2017 campaign”というと、とてもすっきりする。同様に、「ラストから2周目」という言い方は”the penultimate lap”、「最終ひとつ手前のコーナー」も”the penultimate turn(corner)”とあらわせる。以上、TOEICには出てこないであろうグランプリ英語講座でした……、といいつつ、penultimateという言葉自体は日常でもけっこう使いでがあるので、覚えておいて損はないだろうし、TOEICにも出てくるかもしれない。知らんけど。ちなみに、「最後からみっつめ」という意味の’antepenultimate’という言葉もあるのだけれども、こちらはそんなに使うことがないと思います、はい。
閑話休題。
いきなり話がよれてしまったけれども、今回の第14戦は、やはりこの人の話題からはじめないわけにはいかないでしょう。8月31日に右脚の脛骨と腓骨をポッキリやってからたった3週間で復活し、あまつさえフロントロースタートでトップ争いさえ繰り広げて見せたバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)である。
土曜の予選終盤で一時トップタイムを記録したときには「おぉ……」というどよめきが起こり、決勝レースでも途中まで表彰台圏内を争う走りを披露して、パドックと満場の観戦客、そしておそらくは世界中の視聴者の目も釘付けにした。38歳という年齢を考えると、骨折から3週間でこのレベルの走りをできるまでに回復させてきたことが驚異的だし、それになにより、今まであれだけの数と年数を勝ち続けてきたにもかかわらず、現在もなお自らが高いレベルで競うことに執着する意志と意思の強さには本当に敬服する。熱狂的なファンも多い反面、毛嫌いする人もそれなりに存在するのがスーパースターのスーパースターたる所以だが、いかなアンチロッシファンといえども今回の彼のレースに向かう強い気持ちと走りの内容には、さすがに脱帽せざるをえないでしょう。ちなみに、このような確固たる心構えをあらわすのに、英語では’determination’という便利なことばがある。スポーツ選手などが結構よく使うことばで、MotoGPの放送などでもよく耳を澄ませていると、ライダーたちがこのことばを使っているのに気づくかもしれない。TOEICに出るかどうかは知りません。
さて、そのロッシはレースを終えて、
「金曜から土曜にかけては、良いステップアップができた。昨日から今日にかけては、疲れたし痛みもあったけれども、それは許容範囲内。スタートもよくいいレベルで走れたし、上手く乗ることができたのでうれしい」
と振り返った。5位で終えたことにより、11点のポイントを加算したものの、チャンピオン争いからほぼ脱落してしまったことは本人も認めている。今回、シーズン5勝を挙げたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)に対しては、以下のような評価をしている。
「(この1勝は)大きな前進になった。ブルノテストのあとで、だいぶよくなってきたみたいだ。ブルノで勝って、オーストリアでは最終ラップの争いに負けたけど、シルバーストーンではエンジンが壊れるまですごく強かった。ミザノではウェットで勝ち、今回も優勝した。彼のライバルにはとても厳しい流れだと思うね」
そのマルケスは昨年もアラゴンで優勝しており、自他共に認める得意コースではあるものの、今回は思っていたほど気持ちよく走れなかったのだとか。
「序盤からあまり上手く乗れなかったけれども、落ち着いて走るように心がけた。フィーリングは最後まであまり良くならなかったけど、好きなコースだからがんばることができた」
とレース後に話した。
「ドビと同じポイント数で今回のウィークに入ったけれども、チャンピオンシップ的にはいいレースになった。ドビは去年かなり苦労していたから、ひょっとしたら今年も苦戦するかもしれない、とも思った。でも正直なことをいえば、自分はもっとラクに走れると思っていた。レースではかなり苦労したけど、どんなコンディションでもどのコースでもトップスリーでレースを終えることができている。そこが自分たちの強み」
そう言いながらも、チャンピオン争いは今後も予断を許さないことは覚悟しているようだ。
「チャンピオン争いは厳しく、ミスをできない。その反面、勝負するときは勝負をしなければならない。今日は勝負しなければ3位だったかもしれない」
一方、マルケスと同一ポイントで今回の第14戦を迎えたアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)は、レース序盤にトップグループの混戦で、想定していた以上にリアタイヤを消耗してしまったようで、その結果、後半にペースアップをできず7位でレースを終えた。現状ではマルケスと16ポイントの差がついてしまったが、「たしかに厳しいけど、まだチャンスはあると思うので最後までがんばる」と、今後4戦の戦いには希望もつないだ。
「今年のチャンピオン争いのいい面は、すぐに状況(リアリティ)が変わること。いい方向にも、悪い方向にも。だから、自分たちにも戦えるチャンスはあると思う」
ここからの三連戦には、昨年優勝を遂げたセパンも含まれている。そこで乾坤一擲の勝負をするためには、まずは次の日本GPでしっかりと好結果を残すこと、直近のライバルであるマルケスよりも上位でフィニッシュすることが、ドヴィツィオーゾにとってはチャンピオン争いに踏みとどまるための最低限の必要条件、ということになるだろう。
というわけで次戦は第15戦日本GP、ツインリンクもてぎである。Moto3クラスは、ここでチャンピオンが決定するかもしれない。ジョアンファンの皆様は準備をよろしく。
■2017年9月24日 第14戦 アラゴンGP モーターランド・アラゴン |
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順位 | No. | ライダー | チーム名 | 車両 | ||||
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1 | #93 | Marc Marquez | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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2 | #26 | Dani Pedrosa | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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3 | #99 | Jorge Lorenzo | Ducati Team | DUCATI | ||||
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4 | #25 | Maverick Viñales | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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5 | #46 | Valentino Rossi | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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6 | #41 | Aleix Espargaro | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | ||||
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7 | #04 | Andrea Dovizioso | Ducati Team | DUCATI | ||||
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8 | #19 | Alvaro Bautista | Pull & Bear Aspar Team | DUCATI | ||||
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9 | #5 | Johann Zarco | Monster Yamaha Tech3 | YAMAHA | ||||
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10 | #44 | Pol Espargaro | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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11 | #36 | Mika KALLIO | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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12 | #29 | Andrea Iannone | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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13 | #43 | Jack Miller | Marc VDS Racing Team | HONDA | ||||
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14 | #45 | Scott Redding | OCTO Pramac Yakhnich | DUCATI | ||||
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15 | #53 | Tito RABAT | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
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16 | #94 | Jonas Folger | Monster Yamaha Tech3 | YAMAHA | ||||
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17 | #42 | Alex Rins | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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18 | #8 | Hector Barbera | Avintia Racing | DUCATI | ||||
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19 | #38 | Bradley Smith | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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20 | #9 | Danilo Petrucci | OCTO Pramac Yakhnich | DUCATI | ||||
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21 | #76 | Loris BAZ | Avintia Racing | DUCATI | ||||
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22 | #22 | Sam Lowes | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | ||||
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RT | #35 | Cal CRUTCHLOW | LCR Honda | HONDA | ||||
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RT | #17 | Karel Abraham | Pull & Bear Aspar Team | DUCATI | ||||
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