2017年9月27日
添乗員ヨッティのバイクツアー裏レポート
その30「チベット・聖山カイラス巡礼 ヒマラヤ横断ツーリングの巻」
標高3700m。富士山とほぼ同じ高さのラサから聖山カイラスを目指して、巡礼の旅が始まる。高山病、大規模道路工事、検問などさまざまな難関が我々を待ち受けていたが、ヒマラヤの白い峰はいつも我々を幸せな気持ちになるように導いてくれた。そう、これは神々の領域を走るツーリングなのだ。
天上の国、チベットを走る。2017年の道祖神特別企画だ。「特別企画」と名がつくからには、チャレンジングなルートなのだ。普通に終わるはずがないことは容易に想像できる。それを裏付けるかのように、出発1カ月前になって「予定していたルートが大雨災害復旧工事中のため通行止め」との一報が入る。迂回路として、数100km南へ迂回するルートを通らなければいけないらしい。しかし、これは朗報でもあった。走行距離は確かに長くなるが、ヒマラヤに近づくことになり、運がよければ世界最高峰チョモランマも見ることができるかも? というルートだった。我々以上に、道祖神リピーターのコアなお客様は大喜び。たとえ工事が無事に復旧していてもぜひ迂回ルートで行きたい! との声多数。さすが道祖神のリピーター様もタダモノではない。
ところで。スタート地点のラサではポタラ宮の前にバイクを並べてカッコよく出発式の記念写真を撮れ! と社長命令が下っていたのだが、現在のチベットはそんなことをすれば逮捕されかねない。ラサの中心部、ポタラ宮やジョカン地区といったチベット人にとって聖地なエリアは残念ながら警察だらけで、とてもバイクを並べて写真なんて撮れない。けっこうピリピリした空気が漂っている。しかし、それはラサ市内だけの話。そんなわけで、我々のバイクツアーはラサ郊外までトラックでバイクを運んでからスタートすることになる。いったん田舎に出てしまえば、平和な空気なのである。
果たして、災害復旧工事はまだ完了しておらず、予想通り南周りのヒマラヤ山麓コースを行くことになった。峠をいくつも超える。気が付けば標高は5,000mを突破している。ポンコツと評判の中国製バイクは、空気が地上の半分しかない高地でもグイグイとよく走る。
そして、チョモランマのベースキャンプ近くの町に来た。目の前には夢にまで見た世界最高峰の姿がはっきりと見えた。森林限界を超えているので、周囲に木々は一切ない。草原地帯を羊の群れが歩き、そのまま稜線は万年雪を抱くヒマラヤへと続いている。ヨーロッパ・アルプスとは全く違う、ダイナミックな風景の中、175ccの非力なバイクでのんびりと走る。時間が止まっているようだった。やがて、我々の目の前に聖山カイラスが顔を見せてくれる。白く光るその姿は、確かに神様だった。誰もが言葉を失う。
旅は折り返してラサへ向かう。迂回ルートにすることで、もとの工程より数100km長くなってしまっている。1日の走行距離は軽く400kmを越える計算。175ccのビジネスバイクで400km走るのははっきり言ってキツイ。当初の計画ではカイラス山麓で連泊して休養日のはずだったのだが、少しでも1日の距離を少なくするため、連泊を止めてラサを目指して走ることにした。毎日の目的地は「行けるとこまで。」ホテルの予約なんてしない。日が暮れるころ、辿り着いた町で宿を探す。パッケージツアーとは思えないこのノリ、旅をしているんだなぁ、という気持ちにさせてくれる。実はこの他にもトラブルやハプニングはたくさんあった。ガソリンスタンドでガソリンを売ってくれない、検問で公安にイチャモンをつけられるなど、毎日のように日替わりメニューがてんてこ盛り。でも、試練があればあるほど燃えるぜ!という現地ガイドやスタッフのおかげで旅は大成功のうちに終わり、無事にラサに戻りました。
デリケートな地域の旅は困難を極める。特にチベットは外国人が単独で旅をすることは今では不可能だ。こんな地域をオートバイで走ることに情熱を感じる現地スタッフに感謝。次回は雲南からチベットに向かうツアーもいいですなぁ、とスタッフたちと夢物語を交わしつつ、帰国の途につきました。
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