2017年6月2日
MBHCC D2 バソ 幻立喰・ソ
第82回「ねぎをねぎらう」
貴方にとって、立喰・ソになくてはならないものはなんでしょうか。
そば? おつゆ? 箸? どんぶり? お店? おやっさん? おばちゃん? おっちゃん、おばちゃんはどちらか一人いてくれればなんとかなりますが、それ以外は一応必須品。そうではなくて、なくても立喰・ソとして成立しても、これがないと画竜点睛を欠く(○がりょうてんせいをかく ×がりゅうせいてんをかく。わたしつい先ほどまで後者だと信じていました。変換できずいつものごとく「このバカAT○Kが!」と罵ってごめんなさい)という一品です。天ぷらなどのトッピング系ですか? 七味、一味などの調味料系ですか? わたしはネギです。直訳するとI am a leek. えーっと、私はネギではなく人間です。でも、私はネギなんです。人間なんですが……話が進みません。
ネギ大好き。ネギさえあればなんにもいらない! などと軽々しく言えません。しかし、煮込みの肉が少なくても我慢しますが、ネギが少ないとしょんぼりがっかりです。なんなら煮込みの汁とネギだけでもいいです。初見参の立喰・ソでも、ネギが5輪切りくらいしか入っていなかったりすると、殺意を通り越して寂寥感に苛まれます。逆に入れ放題の場合、どれくらい入れていいものか悩ましいところです。「入れたいだけ入れればいいじゃん」かもしれませんが、入れ放題にしてくれた大将の心意気を無にしないような日本人の美徳、いわずもがなのあうんの呼吸で応えたいものです。
時としてネギを山盛りにしながら、返却口に置かれたどんぶりに8割方のネギが寂しそうに浮かんでいるのでは、ネギは浮かばれません。浮かんでいるのに……中には沈んでいるネギもいるでしょうし。
ネギ入れ放題じゃなくても、平然と「ネギ大盛りね」とオーダーし、同様にほとんど残すという、何を考えているのか、否、考えていないからできるのでしょう。このような罰当たりは、来世きっとネギに生まれ刻まれ食べられることなく廃棄され、再びネギに生まれて刻まれ食べられることなくを繰り返す、ネギ生殺し地獄の輪廻を味わうのです。はははははははは!!!
すいません。ことがネギだけに興奮してしまいました。
ネギとてもちろんタダではありません。当たり前です。昨今「ネギ追加お断り」の貼り紙や、大盛りをトッピングとして設定したり、ネギそばをレギュラー化する立喰・ソも見かけるようになりました。そんな時代でも入れ放題システムを堅持し続けている大将に感謝です。ほとんどのみなさまは常識ある対応をされているのですが、ほんの一部の来世ネギ人の愚行により、偉功の意向な好意が、遺構に移行せぬよう、お詣りに行こう、憩う立喰・ソ神へ行こう(ラップ調で)。
ネギが嫌いなみなさんにはネギ入れ放題なんて嬉しくないかと思えば、「ネギ入れ放題なら、めんどうなネギ抜きコールをしなくていいから助かる」そうです。なるほど! 世の中なにが幸いするか解ったもんではありません。まったく関連はないのですが、鶏肉食べちゃいけない教団員の私としては、シブイ焼き鳥専門店で一杯やりたいのですが、焼き鳥オンリーですからお呼びでない。ですが、ネギまの鶏肉抜きならば……まちがいなくぶっ飛ばされますからやりません。例えオーダーが通ってもネギを食べ続けることになりますし。千切りや白髪ネギならいくらでも食べられそう(な気がします)ですが、ぶつ切りは3つくらいで充分だと思うのはわがままでしょうか。
刻んだネギをピリ辛仕様にすると、お酒はもちろん、ラーメンやごはんに載せても「ススメススメヘイタイサン チテチテ タ-トタ テテタテ タ(←正露丸のやつです)」状態になることは実証されております。ネギとソは合うに決まっていますが、ピリ辛とソの相性はどうでしょう。でも、七味や一味を普通にぶっかけるんですから問題ないです。ネギが嫌い、辛いのも苦手という方にはどうしようもないピリ辛ネギソ、「これ、おいしいやつに決まってるよ!」(最近テレビでよく耳にしますから使ってみました。いいおっさんが言うとムカッとしませんか?)と思ったら、おいしいに決まっているであろう、ピリ辛ネギソは、東急系のSぶそばで隠しているわけではないけれど隠れ人気メニューで、高評価を得ているようです。名代Fそばにも同じようなメニューが限定であったような気がします。と、行きがかり上、今知った風を装っていますが、別の立喰・ソで、しらがネギそばを発見し、ピリ辛ネギはすでに食べております。だからというわけでもなんでもなく、唐突に話は権之助坂に飛びます飛びます。
傘の花が開く権之助坂(ツービート世代限定)。目黒駅の西口前にある、目黒通りが左右に分かれた一方通行になって真ん中が中州のようになった坂です。その中州の下の方に木助はありました。とても間口が狭く、おすもうさんが2人鉢合わせしたら、にっちもさっちもいかなくなるでしょう。にっちもさっちも? って、なんでしょうね問題はスルーして、ここに「辛ネギ玉そば」がありました。店頭のメニューにはご覧のように「激辛」の吹き出し付きで、妙に小さく「大変辛いですので、ご購入前にもう一度ご検討ください」と注意書きのある挑戦的な一品でした。ご検討しないでとりあえず入店してからご検討しようとすると、狭い店内のさらに狭い入口付近にある券売機前を占拠することになり大混乱を引き起こすという注意喚呼です。木助は若いご主人とたぶん奥様であろうのふたりでやっていたのですが、丁寧な接客も定評があり、まさに「狭いながらも楽しい我が家」でした。もちろんただのお客のわたしの我が家ではありませんが、再三ご検討を繰り返し券売機のボタンを押しました。
狭い店内で壁と勝負にならないにらめっこしつつしばし待つと(どうでもいいことですが、私は閉所恐怖症です。でも大丈夫でした)白髪ネギにラー油の一般的なピリ辛ネギとは異った、輪切りのネギになにかを和え、玉子(温玉か生か選択)を落としたソが出てきました。辛さの象徴であるおつゆの赤色化は認められず、故ケネディ大統領も一安心といったところでしょうか。中央には黄色い生玉子も鎮座し、わかめもスタンバイしておりますから、ビジュアル的に辛さは感じませんでした。安心して勢いよくすすり込んだら……ご想像のとおり、むせてしまいました。あやうく貴重なネギをまき散らして、来世は永遠のネギ地獄に落ちるところでした。かなり辛いのですが、いわゆるあとを引く辛さで、ひーひー言いながらとはいえ、狭い店内で声を出したら迷惑なので、頭の中でひーひー言いながらおいしくいただきました。
で、今、あの辛さの正体はいったいなんだったのか、どんな辛さだったのか記憶をたどっても「温玉ではなくて生を選択すべきだった」という後悔の念が強すぎて、肝心の味が思い出せません。
内神田1減2増
たまたま通りかかった神田橋のたもとにあるゆで太郎神田橋店は2017年5月31日で閉店だそうです。長い間(かどうかは定かではないにしろ)おつかれさまでした。しかし、となりの貼り紙に目を移せば3月16日に神田司町店が、さらに6月5日には竹橋店がオープンして、ゆで太郎3店体制内神田包囲網作戦開始か?! 内神田界隈には結構大きくてメニューがかなり豊富な、謎のチェーン店K置そば(なのに看板にはFじ家内神田店の表記もあって謎は深まるばかり)、天ぷらを置かない純なMみ屋インスパイア系?のHのか、揚げたて天ぷらのE戸や、山形郷土料理系のK北屋と立喰・ソ密集地帯。それぞれ個性派揃いですから、競合しそうで棲み分けが出来ていそうです。この界隈に勤めているかたがうらやましい。
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