2017年5月26日
歴代カブ報道体験試乗会
「カブシリーズ間もなく生産累計一億台・その1 1952年カブF型」
●撮影:富樫秀明
●取材協力:Honda・ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/
ホンダコレクションホール http://www.honda.co.jp/collection-hall/
幸運なことに、メディアを対象とした「歴代カブ 報道体験試乗会」という催しに参加させていただく機会に恵まれた。今年秋頃、スーパーカブ・シリーズは世界累計生産台数が1億台に達する見込みで、そんな“金字塔”を目前に控え、世界で愛されている“カブ”という乗り物の原点はどんなものなのか? 体験してもらおうという催しらしい。会場には数多くの媒体の方々が参加しており、そこら中で歴代カブを囲んだ談義が繰り広げられ、試乗が終わっても人が引けない。皆さん、カブが好きなんだなぁ。
カブ・シリーズは1967年生まれの私が生まれる前からすでに存在しているので、かなり幼いころの記憶からすでにスーパーカブという乗り物を認識していた。世代的にスーパーカブといって一番印象に残っているのは“行燈”カブだ。社会科の教科書に、真っ赤なカブが大量に生産されている写真が載っていたのも覚えている。初めてスーパーカブを運転したのは確か16~17歳の時、親戚のウチにあった“おっぱい”カブのC65。自動遠心クラッチも初体験だった。愛車としては20年近くCT110を持っている。
そんな私が今回体験させていただいたスーパーカブはすべて自分より年上の今や中々お目にかかれない貴重なモデルで、しかもホンダコレクションホールのエキスパートの皆さんの手によって新車時のようなコンディションが保たれていた。私が乗るなんて恐れ多いモデルばかりだったので、最初から最後まで緊張しまくりでした。“オートバイ”というより“カブ”という乗り物として定着している偉大さを噛みしめながら、それぞれコレクションホールの中庭を3周ほど運転させていただきました。
旧日本陸軍の小型エンジンを自転車に取り付けたホンダ製品第1号となったA型に続き、庶民の足として全国で販売を展開したのが、1952年に誕生した「カブF型」。初めて“cub”の名が冠せられたモデルだ。翌1953年には排気量を60ccとしたカブFⅡ型も登場するが、試乗車は山口自転車にいわゆる“白いタンクに赤いエンジン”が取り付けられた50ccの方。ヘッドライトも“cub”のロゴが入ったホンダ・オリジナル品が装着されていた。1952年と言えば原動機付自転車に運転許可が導入され年(1960年より原動機付自転車は免許が必要に)。当時は14歳から運転することができたようだ。
これまで、カブF型を見たことはあっても運転するのは今回が初めて。もちろん、始動の仕方も知らなかったので試乗前にしっかり説明を聞く。簡単に言えば、ペダルを漕いでクラッチ&デコンプレバーを離すとエンジンが回り出すという、押し掛けみたいなもの? スロットルはハンドル右側にレバーが付いており、好みのスピードに固定するというもの。現代のバイクのようにレバーから手(指)を離しても勝手にスロットルオフにならない。最初は緊張するが、全開にしても速度はたかが知れているのですぐに慣れる。もっとも、ほとんどが未舗装だったカブF型が現役だった当時の日本の道で、誰でも簡単に運転できることが前提のモデルだし、今と比べれば燃料だって粗悪だったはずだから、そう簡単に壊れてしまうようなことはなかろう。カブF型はおそらく、自分で運転した最古の乗り物だったはず。貴重な体験だった。ちなみに、メーカー発表の最高速度は35km/h。原付一種の法定速度が30km/hなのは、カブF型が基準だと言われている。65年も前の基準が、交通環境が激変している今も継承されていることになる……。
[その1 1952年カブF型|その2 1960年C100]
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