2017年5月23日
Aprilia TUONO V4 1100Factory試乗
『すごい美味しい素材なのだから、
ごちゃごちゃ加工しないでそのまま味わえ
これはストリートファイターではなく、プロの格闘家だ』
■試乗&文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗
■協力:Piaggio Group Japan http://aprilia-japan.com/
JAIA 日本自動車輸入組合 http://www.jaia-jp.org/motorcycle/
『アプリリアのネイキッドシリーズは、これまでで最もアドレナリンを沸き立たせる効率的なバイクの1台として、長い間支持を集めて来たモーターサイクルファミリーの後継者です。長年に渡って一線級のレースで勝利を重ねて来たアプリリアのノウハウとTuonoの歴史に基づく経験によって、絶対的なパフォーマンスと精巧さを達成しています。それにより、サーキットでの素晴らしい走りと公道での多彩な楽しみを発揮する、カウリングを脱いで高いハンドルバーを装備した唯一スーパーバイクとして認知されました。Tuono V4 1100 Factoryは、より要求レベルの高いユーザーのための高級バージョンで、多くのコンポーネントをアプリリアRSV4 RFスーパーバイクから受け継いでいます。2017年モデルでアプリリアが提供する進化のステップには、これまでと同様、非常に目を引くファクトリー仕様の外装とグラフィックも含まれています。』(Aprilia JapanのWEBサイトより)
アルミツインスパーフレームまでグラフィックが入った姿と前後足回りなど各部を見て、最初はネイキッドモデルのTUONOではなく、ベースとなったスーパースポーツモデル、RSV4を間違ってお借りしたと思ったくらい。ちゃんと見ると、パイプのアップハンドルだし、RSVのカウルが外側から溶け出して小さくなったようなフロントのカタチ。
スーパースポーツをベースにネイキッドにカスタマイズする流れが大きくなってストリートファイターというカテゴリーができて、そこに様々なオートバイメーカーも注目し参入してきた。多くはベースをスーパースポーツとしながらも、ネイキッドらしいエンジン特性、ネイキッドらしい扱いやすさ、ネイキッドらしい快適性に変更するのが定番のレシピ。
このTUONO V4 1100 Factoryはちょっと違う。そしてとても分かりやすい。作り込んだとても素晴らしいスーパースポーツなんだから、そのまま味わって欲しいというもの。とにかく、車体の剛性感、驚く軽さ、サスペンションの高性能さ、笑っちゃうほどよく効くブレーキ。スロットルを開けると突き抜ける矢ように進む水冷DOHC4バルブ65°V4エンジンのパワーは、201HPのRSV4より低い175HPだけど、1万回転くらいまではまったく遜色がないと感じた。公道では開けるのを躊躇するくらい。鋭いレスポンスは快楽的だ。ネイキッドだからと気を使って優しくなんてしていないのである。
だからパイプのアップハンドルを採用してRSV4よりアップライトになってはいるが、普通のネイキッドに比べたら幅も狭く、セパレートハンドル並に低く、なかなかの前傾姿勢。ハンドルの切れ角もとても小さい。シャープな運動性能に必要な前荷重のためにもハンドルを高くしないのだろう。スーパースポーツ譲りの、というよりスーパースポーツそのものと表現しても間違いでないカミソリのように切れる走りで旋回するのが楽しくてしかたがない。今回試乗した場所でちょっとペースを上げたくらいでは、どこも弱音を見せないどころか、余裕さえある。
オートバイの状態をセンサリングしてABS介入を最適化。トラクションコントロール、ウイリーコントロール、ローンチコントロールなどの高度な電子制御、第4世代のAPRCもそのまま装備。すごい美味しい素材なのだから、ごちゃごちゃ加工しないでそのまま味わえ、と言われているようである。操って走ることにどんどん集中しながら、私はこのapriliaの判断に大いに賛同するひとりとなった。表現するなら、これはストリートファイターではなく、プロの格闘家だ。
(試乗・文:濱矢文夫)