2017年5月10日
Kawasaki Z1000 ABS 試乗
ついに国内投入! SUGOMIを感じろ!
■試乗&文:ノア セレン ■撮影:富樫秀明/依田 麗 ■協力:Kawasaki http://www.kawasaki-motors.com/
長らく逆輸入車としてしか購入することができなかった、カワサキのスーパーネイキッド「Z1000」。これがニンジャ1000と共についに正規国内販売となった。輸出モデルと同様のフルパワーでの国内投入。ファーストインプレッションを探るべくワインディングへと繰り出した。
国内投入された元祖スーパーネイキッド
スーパースポーツモデルからカウルをはぎとり、アップハンドルをつけてその超絶性能をストリートで楽しみやすくしようという、ある意味無謀なカスタムが欧州で流行ったのは2000年ごろだったろうか。そんなカスタム文化から市販車が生まれてくるのは、現在のネオレトロブームも同様だろう。「ストリートファイター」と呼ばれたこのカスタムも、ハイパワーを日常域で楽しむというエキサイティングさがうけ、カワサキはZX-9R系のエンジンを搭載した初代のZ1000を2003年にリリースした。
特徴的な4本出しマフラーの姿でカワサキの歴史も盛り込んだこの初代Z1000は、とにかくヤンチャで激しい乗り物として欧州を中心に熱狂的な支持を得、後にいくらかマイルドに性格を変えながらもモデルチェンジを繰り返し、ついにはアルミフレーム化し「凄みデザイン」を纏った現行型へと進化していた。
しかしここまで、Z1000は全て海外向けのモデルであり、国内で乗るには逆輸入車という位置づけだった。それにもかかわらずファンは多かったわけだが、このたび正規に国内仕様として、しかも輸出モデルと変わらぬスペックで国内投入された。静岡県のワインディングで試乗する機会に恵まれたのでレポートしよう。
輸出仕様そのままのハイパワー
アルミフレームになり、デザインが大きく近代化したこの型になった時、逆輸入車に試乗したことがあった。はじめに断わっておくが、正直に言ってその時と車体は大きく変わってはおらず、乗り味という意味では特筆するような変化はない。今回新たに加わった注目すべきトピックはフロントフォークが左右でプリロードと減衰調整をそれぞれ受け持つSFF-BFタイプになったことぐらいだろうか。もっとも出荷時の状態で快適性とスポーティさが良くバランスされているため、サスペンションへ手を加えるとしても微調整で済みそうである。
跨り走り出すとそのコンパクトさを思い出す。テールが切れ上がっており、そしてフロントは極端にスラントしているため、イメージとしてはお尻の後ろには何もなく、ハンドルの前にも何もないかのようで非常に凝縮感がある。すべてのコンポーネントはライダーの真下にあるかのようで、1000ccとは思えないコンパクトさがこの高性能車を「振り回せるんじゃないか」という気にさせてくれる。
アシスト&スリッパー機能を備えるクラッチはとても軽く、エンジンは低回転域から強力だ。走り出してどんどんギアを上げていっても、日常領域では加速力が各ギアでほとんど鈍ることなくどんどん速度が乗る。エンジンのセッティングはニンジャ1000のフルパワーモードと同様で、こちらにはローパワーモードは設定されていない。アクセルへのツキもダイレクトで、アクセルが半分も空いていれば遠慮のないパワーが押し寄せる。カウルがなく走行風がライダーを直撃するため、フル加速時は振り落されるような感覚があるほどだ。この怒涛のパワーを国内の販売店で普通に購入でき普通に楽しめるというのは素晴らしいことではないか。
ニンジャ1000と同時試乗で見えた事
試乗時にはこのZ1000の他ニンジャ1000も同時に試乗することができた。Z1000の1機種だけの試乗だったなら、そのシャープなハンドリングと、股の下にある暴れたがる鉄の塊を純粋に楽しんだだけだろうが、ニンジャ1000と比較すると明らかな性格付けに気付くことができまた面白い。
Z1000のハンドリングはとにかくクイックだ。数値以上に着座位置が高い印象で、ハンドルに覆いかぶさるかのような乗車姿勢からフロントを中心にクルクル曲がっていく。またカウルがついていないこともあってかバイクの「上に乗っている」感覚が強く、ブレーキング時も加速時もしっかりとしがみついていないと、後ろもしくは前に放り出されてしまいそうな感覚がある。意識したニーグリップや意図した体重移動がバイクの運動性を引き出し、積極的に操っている感覚が強い。常に意識しているのはフロントタイヤのグリップ、というイメージだ。
一方でニンジャ1000はバイクと「一体になって」いる感覚が強い。Z1000に比べて後輪のトラクションを感じながら走っていることが多く、ある意味ズボラ運転にも許容度がある。基本骨格が共通にもかかわらずここまで性格に違いがあるのは面白いことで、購入する時の選択肢になってくれありがたい。ニンジャ1000の試乗記はすでにアップされているので参考にしていただきたい。
この性格を使用状況に当てはめると、Z1000はカウルが無い分どうしても速度レンジは低く、かつ積極的な入力によって運動性が発揮されることを思うと短距離でエキサイティングな走行環境に適しているだろう。夜の都市部を走り回ったり、路面の良いワインディングを積極的に走ったりする場面が得意と言える。
一方で1モードしかない溢れるパワーやクイックなハンドリングは路面の悪い峠道や長時間の走行には向かないともいえる。ギャップやワダチのある荒れた1車線の峠道を積極的に走ってみたら、フロントがとられて神経質と言えなくもないフレが発生する場面もあったため、やはりZ1000はフロントタイヤをギュッと押し付けることができる良い路面でこそ真価を発揮するように思えた。
シャープさやエキサイティングさではZ1000に譲るニンジャ1000には、こんな場面も余裕でこなしていく懐の深さがあったため、不確定要素の多いような道を走る場合はニンジャ1000の方が向いているかもしれない。
SUGOMIデザインと、SUGOMIパフォーマンス
にらみつけるようなコンパクトなフロントカウルとシャープなテールの造形により、まるで何かに刺さっていきそうな「SUGOMIデザイン」をもつZ1000だが、デザインだけでなくその性能についても「SUGOMIパフォーマンス」を謳っている。カワサキはこのカテゴリーをスーパーネイキッドと呼んでいるが、洗練されているとはいえやはりルーツはSSからハウルを剥いだストリートファイターであり、特にニンジャ1000と乗り比べるとそれを感じさせる。アクティブでエキサイティング、少し暴力的で手強さもある、そんな要素をひっくるめて「SUGOMIパフォーマンス」を感じることができた。こんなバイクが正規国内販売されることを素直に歓迎したい。
(試乗・文:ノア セレン)
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