2017年5月1日
MBHCC D2 バソ 幻立喰・ソ2
第81回「しょうがない侍」
ペギー葉山さんが4月12日にお亡くなりになりました。訃報を告げるニュースで知ったのですが、誰でも知っている「ドレミの歌」の和訳、葉山さんのアイデアですと。元歌はこれも誰でも名前くらいは聞いたことがあるであろうミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中歌で、これを見たペギーさんが、感銘を受けて日本語訳を作ったそうです。
思いつくことはあっても、実行に移すのは大変なことです。最初は食べ物で揃えようとしたのですが、「ファ」に相当する食べ物がファンタしか思い浮かばなかったことで断念したとか。へ〜っ、これは知らなかったでしょ。私も先ほどウイキ先生に教えていただいたばかりですが。
もしも食べ物版が完成していたら、ソは当然「そば」でしょう。と思いきや、後に書き下ろされた食べ物バージョンは「そぼろ」……そぼろですか!? ん〜、そぼろか……そぼろに負けたか。まったく関係ないけど、またも負けたか八連隊。
そぼろといえば北九州地区の立喰・ソでは鶏のそぼろがほぼ問答無用で投入されます。嬉しいですね、私以外は。鶏を食べちゃいけない教の鉄の掟で鶏を食べない(=食べられない←子供か! いや子供は鶏が好き)私には、油断のならない食べ物です。ちなみに食べ物バージョンのファは、なんと「ファミチキ」です。鶏ばっかりじゃん……は、さておき、ペギー葉山さんを偲んで、ドレミの歌立喰・ソバージョンを作ってみましょう。
ドは「どんどん」のド
レは「れもん」のれ
ミは「ミミ」のミ
ファは「ファミリー」のファ
ソは「葵そば〜」
ラは「侍」のラ
シは「しなのじ」で〜
さあ、食べましょう(呑みましょ〜っ)。
いただきま〜す。
※すべて店名で揃えてみました。本来なら幻立喰・ソで揃えるのが筋ですが、ファはやっぱり難関です。ペギーさんの苦労の1億分の1くらいは解ったつもりの気分に浸りました。
ドレミの歌に無理に突っ込んだ侍。気づいていただけましたでしょうか。
「誰でも気づくだろ、おまえバカか?」と言われると「はい。そうです」と答えるしかないのですが、「侍とはなんぞや?」と聞かれきちんと答えられますか? 刀を差して髪を結って着物を着ている人というような漠然としたイメージはもちろんありますが、侍は職業なのか身分なのかそれとも単なる呼称なのかすらよく解りません。
言葉のイメージとしてはゲイシャガールと並び、いかにも外国人に喜ばれそうです。我が国でも「侍ジャパン」があります。ですが、間違ってもなでしこジャパンを「芸者ジャパン」と言うとえらいことになりますから、日本語を覚えたての外国人のみなさん、充分ご注意ください。
バイク好きにとっての侍といえば、カワサキ(当時の川崎航空機)の250A1です。北米では「SAMURAI」の名称が付けられたヒット作で、カワサキ北米進出の礎となりました。250A1の338cc版が350A7。北米向けは「AVENGER」(復讐者)の名が付けられました。フジヤマとかスキヤキならともかく、戦後22年経過しているとはいえ、かなり思い切ったネーミングです。アベンジャーというとほとんどの方が間違いなく米海軍の雷撃機TBFを思い浮かべてしまうので、トニーにしてほしかったですね。
と、一通り知ったかぶりで事故満足(誤植ではありません)したところで本題に入ります。
立喰・ソ人にとって侍といえば、東京スカイツリーのお膝元、押上の侍です。たぶん日本で唯一侍を名乗る立喰・ソでしょう(未確認)。寄らば斬るぞ的な勇ましい店名とは裏腹に、緑と黄色の鮮やかな看板テントと、下町らしくにこやかに対応してくれるおばちゃんが印象的でした。侍の前は、おじいちゃんとおばあちゃんが桜そばというお店をやっていたようで、ソの味を引き継いだ(らしいです。桜そば残念ながら未食です)地元密着型の立喰・ソでした。
今ではそこそこ見かける真っ赤な紅しょうが天ですが、ちょっと前までは昔ながらの関東正統派立喰・ソでしかお目にかかれませんでした。侍には紅しょうが天があり、ソには黒と白の2種類がありました。白ソに赤い紅しょうが天、紅白そばとして売りだせばスカイツリー特需に乗っかれた気もしますが、そんな浮ついた商売などするはずもありません。なんたって侍ですから。
2012年スカイツリーが完成し、押上界隈がなんだかわさわさしているようでしばらくご無沙汰していましたが、2015年の初春に訪れると、侍はなんとまあ跡形もなく消え去り、マンションの建設現場になっておりました。「や、やられた〜あ!」と袈裟斬りされた気分で、道路にバタリと倒れ込もうとしたその時、目に入ったのが小さな貼り紙(写真参照)。そうです、侍は死なず、だったのです。
新店舗は旧店舗の昭和テイストはすっかり一新され、モダンでオシャレなお店に大変身したのですが、紅しょうが天も黒ソも白ソも引き続き健在でした。おばちゃんはいませんでしたが、侍の雰囲気さえあるカッコイイ大将にお話を伺ったところ、2014年の秋に移転オープンしたとのこと。紅しょうが天そばをいただき、変わっていない姿形味に大いに安堵し、武士じゃないから満腹で高楊枝という風情で侍を後にしたのです。
またまた、侍ですよ。侍がはそう簡単になくなるわけないでしょと、いまだ信じていませんから確認しに行っていません(駅からちょっと遠いし、めんどくさいし〜ともいうような気もしますが、気のせいではありません)が、ネットという風の便りによると串カツ屋がメインのお店になったようで、名前も平民っぽい名前になったようです。幸い今でもソは食べられるようですが、紅しょうが天や白、黒はあるのかないのか。
いずれにしても侍であの紅しょうが天を食べることは出来ません。これがホントのしょうがない侍。お後がよろしいようで(強制終了)。
坂崎師匠のコラムで知ったつけ天の美味!
文春オンラインで連載中の坂崎師匠のコラム(http://bunshun.jp/articles/-/2231)、今回は再開発で春日から追われ閉店、2015年12月、日本橋本町に移転開業して一同ほっと安堵の名店おか田(第65回参照)の、知っているようで実は知らない(私だけ?)つけ天のお話。、なるほど、こんな食べ方あったんですね、恥ずかしながら先日初めていただきました。いやー、目から鱗、いや、魚じゃないから鱗はないんですが、例え魚でも目に鱗はないと思いますが、そんなことより、ぜひご一読を。読んで喰えば、貴方も間違いなくおか田の虜。
●立喰・ソNEWS 2017 その2
天使の紅生姜天
初春に開店したのAKB橋のAをやっと訪れることができました。どんな出会いが待っているのか、引き戸を開けて入店すればいきなりきれーなおねーさんが愛想良く迎えてくれました。まさか立喰・ソで、きれーなおねーさんが天使のほほえみで愛想良く出迎えてくれるなんて想定外。なぜかあわてて目をそらしてしまいました。相手が天使のようなおねーさんではなく自動車警ら隊、通称自ら隊々員ならば「こんにちわ〜、防犯でお声がけさせてもらっています。危ないもんは持ってないよね?」状態。逃げるようにお品書きに目を移すと紅生姜天の文字。なんて日だ!(もちろん良い方の)幸せ二丁掛け。目を合わせず(合わせられず)紅生姜天そばをオーダーしました。しばらくして天使のおねーさんが手渡してくれたのが写真のソです。あれ〜? 紅生姜? 予想を覆す紅生姜天で驚きましたが、不意打ちをくらった天使のおねーさんの笑顔に比べればな取るに足らないこと。紅生姜というよりも新生姜でしたが、生(だと思う)のソも、おつゆも、注文を受けてから揚げてくれる天ぷらもおいしかったです。ごちそうさまでした。でもほんとは、おねーさんが気になって味をよく覚えていません。
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