2017年4月14日
Kawasaki VERSYS-X 250 ABS試乗
Kawasaki VERSYS-X 250 ABS試乗 高次元な250アドベンチャー登場。 ライバルは大型機種!?
■試乗&文:松井 勉 ■撮影:依田 麗
■協力:KAWASAKI http://www.kawasaki-motors.com/
東京モーターサイクルショーで250ccクラスのツーリングモデル話題だった。ホンダのCRF250 RALLY、スズキのVストローム250、そしてこのヴェルシス-X 250の回りから人垣が消える事はなく、何度眺めにいっても、車体全体が見渡せたことがない。関心が高いのが解る。
タイで生産されるこの250アドベンチャーモデル、グローバル展開の戦略車だ。今、250ccクラスがプレミアムクラスでもあるアジア圏では、質感、装備の充実したクォーター・モデルが多くリリースされている。そのアジアンマーケットの熱波が日本にも届いたことになる。
ヴェルシス-X 250はスタンダードとツアラーの2機種展開としている。価格は62万9千640円/68万3千640円と装備により5万4千180円の価格差があるが、装備リストを見比べると、ツアラーがバーゲンプライス以外なにものでもない事も解る。ツアラーに装備されるパーツをオプションリストから選ぶと、総額11万7千353円にもなるからだ。通販番組じゃないが、お高いんでしょ、と聞いた次の瞬間、太っ腹だ、カワサキ。これ、限定じゃないんですね!
使い方、趣味の違いでこのバイクへの価値観は変わるが、軽二輪は“車検がない、維持費が安い”だけではないポジションを確実に開拓し始めている。
バイク乗りで4輪に無関心、という方も多くはないはず。今やクルマの世界は、ダウンサイジング、プレミアムコンパクトなんて言葉が躍るのが常識。250だってもっと高い価値感を求めても良いはずだ。なので、まずその存在にマルです。
バイクの話になる前にこんな話になるのも、走らせた印象が上質でとても良かったからなのである。
誇張せず引き締まった外観。
軽い……! 重量は175kgとそれなりなのだが、アドベンチャーモデルだとすると相当に軽い。重心位置が低いのか、スタンドからの引き起こしもさほど重みがない。17リットルのタンクが250ccクラスの体躯に載ると、リッタークラスの大型アドベンチャーモデルのような大容量タンクにも見える。実際にこのサイズなら充分な航続距離を発揮するだろう。
なにより、前輪19インチ、後輪17インチのスポークホイールが、冒険ツアラーらしさを主張する。クロスオーバーではなく、アドベンチャーなんだ、と。
また、フェアリングから続くサイドパネルのデザインなど、面を巧く使った構成で、誇張もせず、しっかりと主張を持たせ、しかもカワサキらしさ、ヴェルシス一族らしさも主張する。跨がると、シート高は815mmに抑えながらも体重をしっかり受け止めるシート、ラバーを貼ったステップ、アップライトなポジションを作れるハンドルバーとのコンビネーションで、アドベンチャーバイクらしいライディングポジションをとることができる。
メーター周りも充実している。ツーリングで気になる航続距離、燃費やトリップカウンターなどから、到着予想時間などをライダーがしっかりマネージメントできる情報源として機能する。それらを複数同時に見られるサイズであることも麗しい。
眼下にあるタンクからカウルに伸びるパートと、メーター類、さらにその先にあるスクリーン、という視覚的な部分も、しっかりとアドベンチャーバイクしている。かつてあったKLEアネーロあたりとは質量感が明らかに異なり、見事な“フルサイズ感”が漂うのだ。
エンジンが持つ意外性。
ヴェルシス-X 250に搭載される水冷DOHC4バルブ並列2気筒エンジンは、ニンジャ250などと同型だ。キャラクターに合わせて、低中速域のトルク特性を重視した、と説明されている。エンジンの横を通り、最低地上高を犠牲にしないようレイアウトされたエキパイの曲げ方をみても、その特性が高回転依存型ではないことが想像できる。
エンジンを始動する。ファーストアイドルで水温を暖めると、程なく1000rpmほどにアイドリングは落ち着いた。アシスト&スリッパークラッチを備える駆動系の恩恵で、クラッチレバーの操作力は驚くほど軽い。これは疲労軽減に大きくプラスになる。ギアをシフトし、その軽いレバーに掛けていた力を緩めた。
低中速トルクを強化した、とはいっても、原資は250㏄。ニンジャのように5000rpm以上回さないと何となく力感が出てこず、右手とシフト操作が常に忙しい感じなのだろう……、と予想した。が、ヴェルシス-X 250はまるで300㏄、あるいはそれ以上排気量があるバイクのごとくスルスルと動き出し、3000rpm程度でもしっかりとトルク感がある。2速、3速と繋いでも、グルグルグル、という180度クランクのエンジンらしい音と前へと押し出す駆動力がバランスしている。400ccクラスのようでもある。
しかもスムーズだ。吸排気系のチューニングが功を奏しているだろう。不満のないドライバビリティーだ。5000rpm以上を使わずとも意のままに街中を走る。
市街地での乗り心地はとてもよい。タイヤからサスペンションへの連動がしっかりとあり、フワフワすることなく路面のギャップを吸収している。それでいて、右折、左折レベルからフットワークに一体感もある。250という排気量から想像する軽さはないが、減速→寝かす→アクセル開けて起こすという一連に安定感がある。先述したエンジンのトルクも後ろ盾になり、とても乗りやすい。安定感があって、重ったるくないのが嬉しい。
そんな市街地からペースの速い高速へと入る。合流からの加速でもとても楽に速度がのる。この頃にはアクセルと加速感を把握しているから、回転計を見ずとも、あえてシフトダウンせずともヴェルシス-X 250が走ってくれる、という連帯感が芽生えていた。
80km/hまで速度を上げ、巡航する。ウインドプロテクションは高く快適。エンジン音が心地良く聞こえる。当日は天候の関係か、横風も吹いたが、その影響も気にならない。車体全体で生み出す安定性がクルージングを快適にしてくれている。
100km/hにペースアップしても、その印象は同様だった。パワーとトルクが重なり、この速度なら何処まででもいけそうだ。そんな場面でやってくるカーブでの走りも良い意味でどっしりしていて、安心だ。250にしては、とか250だからその辺はガマン、という部分を感じない。これは大人の趣味材として大切なポイントだろう。
今回、タンデムや荷物を積載してのテストは出来なかったが、この性格のエンジン、シャーシなら意外と愉しめそうな予感がする。余裕しゃくしゃく、という程でもないが、あとはやる気次第、という気分になれた。なにより嬉しかったのは、余裕のなさにイライラすることがなかったことだ。
ヴェルシス-X 250なりのペースを掴めば、文字通りどこまでも、何処へでも一緒に走る相棒になるに違いない。あとはこのバイクに合わせたどんなプランを描くかだろう。
(試乗:松井 勉)
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