2017年3月27日
YAMAHA TRICITY 155 ABS試乗 いつでも”安心”備わるオールラウンダー
■撮影:依田 麗 ■協力:YAMAHA http://www.yamaha-motor.co.jp/
グローバルモデルとして世界で販売、スポーティな走りと安定感を両立させたTRICITY 125に続き、”Leaning Multi Wheel”の第2弾として登場した「TRICITY 155」。高速道路での走行も考慮した車体やエンジンなどを引っ提げ、今、日本で販売台数が増えている150ccクラスでどのような受け止められるのか?
LMW の安定感に加え、155は快適性、ユーティリティも向上
2013年7月、ヤマハ発動機は「事業説明会」http://www.mr-bike.jp/?p=50390にて突如、「Leaning Multi Wheel(LMW)」 なる三輪コミューターを開発中であることを発表、同年秋に開催された東京モーターショーではコンセプトモデルを参考出品した。市販モデル「TRICITY 125」は
翌2014年4月よりタイ市場で、日本は9月から販売が開始され、その後ABSモデルや新色ボディなどが追加され、現在に至っているのはご承知の通り。
新しいシティコミューターとしての役割を担って開発された TRICITY、日本では経済性などの面で大きなメリットをもつ原付二種(原二)クラスのバイクとして高い支持を得ている一方、二輪車に対し転倒リスクに対する不安を抱いている人々への支援http://www.mr-bike.jp/?p=121275にヤマハは力を入れている。
そんな TRICITYシリーズの新バリエーションとして30ccほどエンジン排気量をアップした「TRICITY 155」を2016年に発表。旧市街地などに石畳の路面が多い欧州の市場をターゲットとしたこのモデル、日本でも軽二輪車(126~250cc以下)として2017年1月20日より販売が開始されている。
これまでの150ccクラスというイメージから想像すると、TRICITY 155は単なる125のスケールアップ版かと思いきや、新設計のフレームや装備面など、多くの部分で原二モデルから造りを変更。欧州や日本では自動車専用道路(高速道路)での走行を可能としているだけに、走りの質に対するこだわりが感じられる。ちなみに開発コンセプトは”もっと行動範囲を広げ、さらに所有感を満たすNew Standard City Commuter” としている。
言うまでもなくTRICITYシリーズ最大の特徴は、 フロント二輪の独自の動きによる操縦フィールで二輪車のように車体を傾けて旋回する機能に安定感をプラスしているLMW機構。今回、最後に125モデルを乗ってから約2年ぶりのLMW体験となった。最初はフロントに備わるパラレログラムリンクと片持ちテレスコピックサスペンションという独自の機構により二輪車(スクーター)より若干重さを感じる。これも最初の取り回しの時だけで、走り出してしまうとあっという間に身体に馴染んでくるのは相変わらず。特別な操作は必要としない。全幅も同クラスの二輪車と変わらないので、細い道や駐車スペースも変わらない。ただ、フロントに車幅近くまで二本のタイヤが備わるため、縁石などがある場所での取り回しの際にタイヤが当たることだけ注意が必要だ。
先ほど述べたフロント周りの重さだが、前後重量配分がMotoGPなどのマシンと同様に高い動力性能をもたらす「50:50」に貢献している。
毎回TRICITYに乗るたびに思うのだが、どこまで車体をリーン(バンク)させていいのか、一般公道で探るのは難しい。ただし、荒れていたり滑りやすい路面での安心感は誰でも感じることができるだろう。濡れた路面で、場合によってはブレーキによるフロントロック→転倒という不安からの解放は大きな恩恵だ。TRICITY155にはABSを標準装備しており、μが低い路面でもバイク任せで制動力を最大限に引き出してくれる。
今回の155はヤマハが次世代高性能小型エンジンとして推し進めている”BLUE CORE”思想に基づくユニットを搭載。可変バルブシステムや4バルブヘッドを採用する水冷エンジンは、同クラスの二輪車に対しLMW機構に重量増に対し十分なパフォーマンス。
軽二輪車ということで自動車専用道路を走ってみたが、メーター読みで100km/h位まで引っ張ることはできた。都市部の郊外などにあるバイパス道路などでは特に問題はないが、いわゆる高規格の高速道路で周りの流れと同じ巡行は他の150ccクラスのコミューター同様、パンチに欠けるのは否めないところ。ちなみにリアタイヤは1インチアップの13インチとなり、リアショックはツインチューブ式としている。
また155は快適性、ユーティリティも向上。125に対し新開発フレーム(ホイールベースが40mmほど長くなったが、フレームよるものかは不明)により、フットスペースは125に対し広くなり、シート下スペースも約3.5L容量アップを果たし、電源ソケットが備わる小物入れも新設となった。リアに専用のドラムブレーキが備わるパーキングブレーキも便利な装備だ。燃料タンク容量も125に対し0.6リットル増え、航続距離を伸ばしている。
125の時も思ったが、シティコミューターとしてあらゆる天候に遭遇する可能性がある通勤ライダーにとって、路面変化に対し柔軟性をもつLMWは最適な乗り物と言えるのではだろう。加えて軽二輪登録による行動範囲の拡大でツーリングにも積極的に出かけたくなるようなモデルと言えるだろう。
(報告:高橋二朗)