2019年8月13日
第48回「26年ぶりなのに!なのになのに!無観客ポディウムの戦士たち」
チェッカーが振られることなく終わった2019鈴鹿8耐。最終的には、カワサキが26年ぶりの優勝で幕を閉じました
カワサキがTeam GREENではなくKawasaki Racing Teamでエントリーし、ジョナサン・レイ、レオン・ハスラム、そしてWSBでトップ争いをして、表彰台に何度も上がるまでに成長した若手のトプラック・ラズガットリオグルの3人。トプラックはWSBではレオンより前でゴールするほどに実力をつけてきましたが、決勝はジョナサンとレオン2人が4スティントずつ走行することに。最後はWSB王者ジョナサンが、連続走行で疲労困憊の高橋を抜き去り、200ラップ目にベストタイムを出すなどし、リードを広げていきました。
事前テストから高橋巧が他より頭一つ抜けたタイムで好調をアピールしていたHRCですが、今年のメンバーとしてオーディションなどを経て招聘したのはテストライダーのステファン・ブラドルと、WSB参戦中の清成龍一。決勝当日の朝に、清成龍一が走行しないことになり、巧と8耐初出場のブラドルで、高橋が5スティントを走行。カワサキのジョナサンに抜かれ、その後ヤマハにも抜かれていきました。テック21復活のヤマハワークス鉄板の3人は、このカワサキとホンダの争いに巻き込まれないように淡々と上位走行、高橋を抜いて2位に出てカワサキを追っているところで雨がポツポツと降り始め、そうこうしているうちの赤旗でした。
サイリウムが光るグランドスタンドで迎えられるでなく、それぞれパルクフェルメにバイクを置いて帰っていくライダーたち。淡々と終わっていくことに「8耐ってこんなのだっけ?」という思い。そして使われなくなった表彰式の写真……。
リザルトが修正され、カワサキが表彰台に上がったのは夜の11時にもなろうという頃でした。アシスタントマネージャーの藤原克昭が「俺ら優勝したんやし! 表彰台登ろうや!」といってチームのみんなを連れて行きました。無観客なうえに、ライトもなかったけど、通常は選手と監督しか登壇しない鈴鹿のポディウムに、一緒に戦ったメカニックをはじめチームスタッフ、KHIのスタッフが上がるというこれも貴重な記念写真になりました。
抗議の逆転優勝について「なぜ? なぜ?」の話、その件は西村さんがどこよりもしっかりと分かりやすく書いてくれるはず。そちらを読んでもらえるとよいとおもいます。この件ばかりが話題になったり注目されるのではなく、8耐はたくさんのエントラントがいて、それぞれのチームにドラマがあり、終わってみんなが感動する、これからもそういうレースであってほしいと思います。
いち早く8耐にKRT参戦を発表したカワサキ。昨年のジョナサン転倒劇で本人もカワサキにも「忘れ物を獲りにいく」強い気持ちがありました。しかし、HRCの高橋巧が全日本で出した2.03.874のタイムにカワサキ首脳陣は驚いたそうです。8耐は一発のタイムだけではないレース。現場メカニックたちは現チームグリーンでこれまで8耐を戦ってきたスタッフ。そこにチャンピオンチームのエンジニア陣、そして現場とKHI、WSBチームの間を取り持った藤原克昭アシスタントマネージャーという鉄壁。しっかりとレースをコントロールし、手を怪我していたレオンもしっかり走りきり、最終スティントでは薄暗くなったコースでベストタイムをたたき出すジョナサンの追い上げ、逆転しての優勝! SERTのオイルに乗って最終ラップに転倒してしまい、一時は51位のリザルトが出てしまったのですが、抗議が認められての優勝でした。
何といっても今回の主役は全日本で6レース中4勝を挙げランキングトップの高橋巧。全日本でも、春の鈴鹿では2分3秒の驚異的タイム、すべてのセッションでトップタイムを出すことを課題にしていたり、常日頃から高橋の向上心は群を抜くものがあり、後輩ライダーの面倒見もいい良き兄貴。8耐は過去にハルクプロで3回の優勝を経験していますが、戦力外となってしまった清成選手、世界チャンピオンですが初の8耐であるブラドル選手というメンバー。高橋は2010年に清成と優勝しているので、予選では先輩を立てつつ、チームながらにひとりで8耐を戦っているような印象で、周回遅れを次々とパスして前とのタイムを縮めロウズやレオンを抜いて必ずトップで戻ってくる走りには鬼気迫るものがありました。表彰式でもプレスインタビューでも「悔しいです」と何度言ったかわからない悔しさを来年こそは晴らしてもらいたいと思います……と「来年こそ!」と本人に言うと「まずは全日本チャンピオンですね!」と返された事実。巧の目はもう次のレースに向いてました。
トレース前からTECH21のPRがすごかったヤマハワークス。変わらないメンバーでの完成されたチームワークのヤマハで、ナカスガサーンの走りはカッコイイ! 直前にマイケルが骨折したり、ロウズもWSBで転倒していたりときっと内情は穏やかではなかったはずだけど、レースは序盤からリズムを崩すことなく、着実に周回を重ねていき、ラストスティントで高橋を抜いて2位。幻の表彰式になってしまったけど、優勝が覆ったときにバックヤードでヤマハのスタッフが少し吠えていたのも私は忘れていません。私もTECH21世代、正直今のライダー達に合ってるかどうかと考えるとちょっと……と思っていますが、ラベンダー色のキャンギャルの衣装がとっても可愛かったのでよし!
チームカガヤマのオーナーの加賀山就臣とヨシムラのエース津田拓也の電撃トレードにより、ヨシムラは加賀山就臣、渡辺一樹、そしてBSBのギュントーリ。特に大きなトラブルもなかったようですが、ヤマハ、ホンダ、カワサキがファクトリー参戦となった今、求められるのはスズキのファクトリー参戦です!
#71 SUZUKI BLUE MAX
そのチームカガヤマですが、アジアのスター、アズランと耐久マスターのエルワン・ニゴン、そして津田拓也。ニゴンはつぎのボルドール24時間でもチームカガヤマ参戦を表明。
もはや8耐の常連と化しているドミニク・エガーター選手と、BSBのチャビ・フォレス、JSBクラス2年目の水野涼。予選ではドミニクがクラストップのタイムを出し、スターティンググリッドは4番手を獲得したのですが、予選時のタイヤマーキングのミスにより、重いペナルティを受けたハルクプロ。トップ争いに食い込んだ90秒後のピットスタートで、ただ一人グランドスタンドを駆け抜ける水野に大きな声援が送られていました。「ペナルティは素直に受け入れ、あとはやるしかない」と最後尾から2時間後には7位にまで浮上。開始直後に入ったペースカーでハルクプロは2台目の集団となってしまいトップとは大きな差がついてしまったけど、57台抜き7位完走!
鈴鹿8耐のみに参戦するファクトリー3チームの後ろに常についていたのはチャンピオンチームのTSR。もはや全日本には参戦してくれないのはちょっと寂しいのですが、チームスタッフ、ライダー、あと、無駄のない風通しのいいピット作りも素晴らしいチーム。耐久シリーズの最終戦となりポイントは、カワサキSRCが132、スズキのSERTが127、TSRは109 で迎えた鈴鹿でした。カワサキSRCは鈴鹿ラウンドには出場しない方向でしたが、チャンピオンがかかってきたのでドタバタで参戦を表明。レースはもう少しでチェッカーというタイミングでSERTがエンジンブロー。TSRはトラブルなく常に4番手を走り続け、総合4位を獲得。耐久シリーズでは8ポイント差のランキング2位でこのシーズンを終えました。
今やモリワキの顔になっている高橋裕紀と初タッグを組む小山知良はMotoGP時代に一緒に各国を回った間柄。とても仲が良く、小山選手が高橋選手と組めるのをとても嬉しいと話してくれました。
ご近所バイク屋さん桜井ホンダは濱原颯道と作本輝介の身長差若手ライダーが伊藤真一選手のライディングスクールを受けているようでほほえましかった。
Mr.Bikでも人気の高い出口修選手。長年のエバンゲリオンを離れてどこに? と思いきや、カワサキの名門、チームボリガーに加入していました! ダイナミックなライディング!
チームアジアの監督は玉田誠。当初予定されていたライダーが怪我のため急遽名越哲平が加わりました。ザクワン、アンディともプラクティスから転びまくり、ピットは常に修復作業に追われていました。決勝は名越とザクワンの2人でこなし、11位完走。
[第47回へ][第48回]
[全日本ちょこちょこっと知っとこバックナンバー目次へ](※PC版に移動します)
[バックナンバー目次へ](※PC版に移動します)