2019年7月19日

YAMAHA YZF-R25試乗 『キープコンセプトって こういうこと!』

■試乗・文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔
■協力:YAMAHA https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/

 
Ninja250スタートの第二次250ccスポーツ熱は
今や完全に打者二巡目に突入!
一巡目も二巡目も、ラストバッターは、ヤマハYZF-R25だった。
いたずらにライバルと競わずに
R25はキープコンセプトで再び人気トップ返り咲きを狙う!

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ライダーの身長は178cm。


 
 250ccスポーツが完全にひと回りした、って感じがします。
 2008年に、新世代250ccスポーツモデルとしてNinja250Rが登場すると、ライバルモデルもどんどんデビュー。スズキGSR250、ホンダCBR250R、そして最後発だったのがヤマハYZF-R25。
 国内4メーカーすべての250ccスポーツが出揃ったら、次はNinja250がフルモデルチェンジを果たして、打順が二巡目に入ります。それがNinja250(車名の末尾から“R”がなくなった)、GSX250R、CBR250RR、またもラストバッターとなったのがYZF-R25でした。
 二巡目の方向性はそれぞれ。初代モデルをベースに、方向性をさらに伸ばしたり、完成度を高めたり、もう一段階特徴を濃くしたり――。NinjaとGSXは持っている方向性を伸ばして、特に街乗りでの完成度を高めてみせました。CBRはRがRRとなって、もう別モデルと言ってもいいほどスポーツ方向に進化。スポーツ性だけではナンバー1と言われています。
 
 そしてR25は、両方のいいところ取り。ストリートでの走りを進化させて、なおかつスポーツ方向も強化しました。本来持っているストリート特性のよさに加え、サーキットでNinjaとCBRに負けない、そんなモデルとしたんですね。
 R25はもともと、低回転からのトルクがよく出ていて、スロットルのレスポンスもシャープで、高回転域での伸びを追いすぎない分、街中で使いやすいバイクでした。アイドリングちょい上の2,000rpmといったあたりからバイクを前に進める力が出ていて、このクラスでの中回転である7,000rpmくらいまでスムーズに引っ張れる。CBRやNinjaは、ここからもうひとつ伸びるけれど、R25はここがやや鈍くはありました。これが特徴を特化するということですね。低中速も強く、高回転も伸びるとは、なかなか両立ができないものです。
 けれど、1万rpmといった高回転は「そんな回転域、使わないでしょう?」というヤマハの狙いです。自分のバイク、1万rpmまでブン回すなんてこと、めったにないもの。ここからの超高回転域の伸びが……なんて言ってるジャーナリストがどうかしているんです、自戒を込めて。
 
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 ニューR25は、フルモデルチェンジというより、マイナーチェンジでの手直しを施しています。登場から4年半が経ち、いかなR25といえども、さすがに新鮮味が薄れてきてしまったことへの措置で、二巡目に入ったライバルたちへの対抗というよりは、我が道を行く、ヤマハの考える250ccスポーツを突き詰めた印象。手っ取り早くインパクトを残すなら、CBR250RRを上回るサーキット性能を目指していけばいいんだけれど、スポーツと街乗りのいいところ取り、そこを扱いやすく、誰にでも乗れる、がR25の根っこの性格なので、そこを突き詰めた感じですね。
 
 いざ走り始めると、R25はパワーフィーリングよりも車体の動きの変化にすぐに気づきます。倒立フォークの新採用により、車体がカッチリがっしりした感じ。従来よりもフロント側に荷重が乗って安定しているように感じるのは、ハンドル位置が20mmほど下がっていることも影響しているのでしょう。250ccというライトウェイトクラスながら、40~50km/hといった、特に街中のスピードの時の安定性がかなり高くなった感じがします。乗り心地も、厳密には硬くなったかな……という程度です。
 これは、重さを感じるというより落ち着きが出た印象。従来モデルで軽さを感じていたと同時に、フラフラさを感じていたライダーには好ましい変更です。
 スピード域が上がった時と、スポーツライディングの時にもっと大きく変化が感じられます。高速道路では、動きがしっとり。フロントフォークが沈むスピード、伸びて戻ってくるスピードがジワッと、ストロークの奥の方でもしっかり踏ん張る感じ。街乗りで、やや乗り心地が硬くなったかな……と思った分、高速域での乗り心地はグッと良くなっています。
 
 ワインディングでも、特にハードブレーキングで強さを発揮するのが新型の特徴。これも高速道路の乗り心地と同じく、ジワッとストロークして奥で踏ん張る――これ、コーナリングスピードを高くする方程式です。フロントフォークが沈んだままフロントの高さが低いままキープ出来て、そこから旋回に入るアクションも速い。乗ってみて実は、サーキット性能もかなり高くなっているのが、新R25の正体なのです。
 エンジンは基本的に変更がないはずだけれど、低回転域からのトルクの厚さは健在で、低中回転のトルクの太さ、スロットルの動きひとつでの取り出しやすさは、ライバルの中でもこのR25がピカイチ。高回転を使ってキビキビ走るのも、高いギアで低い回転でトコトコ走るのも得意だから、R25にフィットする使い方は、かなり間口が広いでしょうね。
 
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 R25は、250ccスポーツの中でも、特に若い層からの人気が高いような気がするし、それがこの業界の半ば常識。その理由は、誰にでも扱いやすいこと、スポーティな走りものんびり走りも許容してくれること、そしてカッコいいこと!
 新R25は、フロントマスク周りがヤマハMotoGPマシンYZR-M1に似ていたり、カウルサイドに最新レーシングマシンばりのウィングレットがついていたり、やはりスタイリング、デザインの処理が上手い! これは、ますます若いバイクファンの注目が高まるでしょう。
 毎日乗れるスーパーバイク──これがR25誕生時のキャッチフレーズ。新しいR25は、オールラウンドな性格付けが、ややスポーツ方向に広がったような内容のニューモデルなのです。
 
(試乗・文:中村浩史)
 
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ヤマハのMotoGPマシン、YZR-M1をイメージさせる、カウルセンターのM字型エアインテーク。カウル前面にスペースがあるのはゼッケンスペースをイメージしているのかも。ヘッドライトはハロゲンバルブからLEDに変更された。


 
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エンジン、フレームに大きな変更はなく、カウルデザインに変更を受けた。形状もエッジを効かせたエアロダイナミクスを追求したものとなり、センターカウルもYZF-R1シリーズのようなレイヤード構造のカウル形状となった。


 
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センターカウルには、控えめにMotoGPマシンの最新トレンドであるウィングレットが装備される。これはクロスレイヤードウィングと呼ばれ、走行風を後方に逃がし、エンジン冷却にも貢献する。


 
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ブレーキはφ298mmのシングルディスク+片押し2ピストンキャリパーの組み合わせ。キャストホイールはY字型スポークを5本持つデザインで、純正タイヤは250ccスポーツ定番のIRC製RX-01を採用する。


 
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3角形断面のマフラーは従来モデルと同様のものを採用。パワー特性に変更はないが、R25のサウンドはノーマルマフラーのままでも歯切れよく、パンチのあるものだと好評。サイレンサー単体重量は約2.8kg。


 
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ホイールベースに対してスイングアームの長さをロングとするのはYZF-Rシリーズ共通の手法。ファイナルドライブは14/43=3.071で、これは兄弟モデルYZF-R3、MT-25/03と共通。


 
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座面が広く滑りにくい素材を採用した前後セパレートタイプのシート。リアシート下には小物入れスペースがあり、ヘルメットホルダーはリアシート裏側のフックを使用。これはお世辞にも使いやすいとは言えない。


 
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テールランプは被視認性に優れた大型のLEDランプを使用。ウィンカーは前後ともクリアレンズとカラーバルブの組み合わせで、荷物積載にはウィンカーステーを荷かけフックに使用する。


 
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ハンドル、タンク上面高さともに約20mm低くし、タンク幅は最大で約30mm広がっている。メーターは待望のフル液晶となり、オド&ツイントリップ、平均&瞬間燃費などを表示。


 
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左右スイッチはMT-07などと共通の新型スイッチを採用。右スイッチはキル&セルボタンがひとつにまとまり、ハザードスイッチも新設。ただし、デザインが良く小さい分、操作はしにくかった。


 
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●YZF-R25(2BK-RG43J) 主要諸元
■全長×全幅×全高:2090×730×1240mm、ホイールベース:1380mm、シート高:780mm■エンジン:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ、ボア×ストローク:60.0×44.1mm、最高出力:26kW(35ps)/12,000rpm、最大トルク:23N・m(2.3kg-m)/10,000rpm 、燃料消費率:国土交通省届出値、定地燃費37.7km(60㎞/h)(2名乗車時)、WMTCモード値27.2km(クラス3、サブクラス3-2)(1名乗車時)■タイヤ(前×後):110/70-17M/C 54S × 140/70-17M/C 66S、車両重量:166㎏、燃料タンク容量:14L
■メーカー希望小売価格(消費税8%込み):599,400円/642,600円(2019年3月28日発売)


 


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