2019年7月1日
カワサキ“W”を識る──前編 W800ストリート&カフェをW1乗りが徹底試乗!!
カワサキは海外のジャーナリストに向けた「Heritage Press Introduction」を信州・長野にて開催した。これはWシリーズの歴史と伝統を紹介しつつ、最新の「W800 ストリート」「W800 カフェ」の試乗会をメインにしたもの。ビーナスライン、奈良井宿、松本城を巡る日本の文化を感じさせるコース設定のなか、お手伝いで参加した筆者も「W」をしっかり堪能した。
■撮影:真弓悟史、安井宏充
■協力:カワサキモータースジャパンhttps://www.kawasaki-motors.com/、川崎重工業 https://www.khi.co.jp/
Wらしさを感じる乗り味がオールドファンも唸らせる!!
Wシリーズの最新型はアップハンドルの「W800ストリート」、ビキニカウル+ローハンドルの「W800カフェ」という2本立てになっている。まず、スタンダード的な位置づけとなっているストリートから見ていこう。
各部がブラックアウトされたスタイルは、レトロとモダンが融合したもの。最新のトレンド“ネオクラシック”を感じさせるもので、言うならば“今どき”のムード。先代までのWシリーズはクロームが要所に使われ旧車然としていたが、「W800ストリート」のスタイリッシュな姿を見ると、もう過去は引きずらないといった印象。つまり、懐古主義ではないのだ。
しかし、跨ると昔ながらのWを感じさせてくれ、自然とリラックスできる。というのも筆者は25年間、W1SA(1971年製)に乗るダブワンオーナー。「W800カフェ」のような新感覚も嬉しいが、オーソドックスなモデルも残して欲しいという想いを正直なところ断ち切れない。とにもかくにもWとなれば目が離せず、あれこれと黙ってはいられないのである。
「やっぱり、Wはこうでなくちゃ」と、筆者のような旧型オーナーを唸らせるのが、まずアップハンドル。上半身が起きてグリップ位置が高く、少しの入力で車体を操れる。
先代まではフロント19インチでヒラヒラ感の強いハンドリングだったが、新型は前後18インチ化され、動きが落ち着いた。実はW1も1966年の初期モデル(シングルキャブ)だけは前後18インチ。タイヤ幅は違うものの、50年以上を経た原点回帰といっていいかもしれない。
その落ち着きは前後18インチ化だけによるものではなく、フレームが刷新されて剛性が増し、フロントフォークもφ39→41mmに変更されたことが影響している。
ただし、カチッと硬い神経質な乗り心地ではなく、従来型にあった頼りない部分を補ったという印象で、Wならではの扱いやすさは変わっていない。イージーな操作性をそのままに、高速コーナーや高速巡航を苦手としなくなり、路面の段差などから大きな衝撃を受けても平然としていられる。
とはいえ、やっぱりノンビリ走るのがWの醍醐味だ。ロングストローク設計のバーチカルツインは、等間隔爆発をもたらす360度クランクが心地良く、なによりサウンドが素晴らしい。新型になって排気音に力強さと迫力が増しているが、これはプロジェクトリーダー(開発責任者)の菊地秀典さん(川崎重工業株式会社モーターサイクル&エンジンカンパニー)もこだわりのポイントだったと教えてくれた。
新型で向上した運動性能をいかんなく発揮できる!!
W800は新型でキャスター角も27度から26度に起こし、トレール量を108→94mmに変更。旋回性を高めるとともにブレーキもグレードアップ。フロントのローター径を300mmから320mmに拡大し、リアはドラム式をついにやめて270mmディスクを装備している。そしてアシスト&スリッパークラッチも搭載した。
コーナー手前のシフトダウンもスリッパークラッチがあるから大胆にできるし、後輪ドラムブレーキではできなかったシビアなブレーキ操作も可能となったが、そうした進化をより堪能させてくれるモデルが「W800カフェ」である。
昔ながらのフィーリングを残し、従来路線で進化したのが「W800ストリート」だが、こちらは新しい楽しさを提案しているのだ。M字型のスワローハンドル、シングルカウル風のシートでアグレシッブな前傾ポジションとし、見た目だけでなく走りもお尻をイン側にズラして積極的に荷重移動するようなスポーツライディングに対応している。
もちろん、エンジン、車体、足周りは共通なので運動性能に大きな違いはないが、ライポジが異なるだけでライドフィールが一変。フロント荷重が増えて、操作感や乗り手の意識もガラッと変えたのだ。低く構えた途端にスポーツマインドが高まり、こうした意識はこれまでのWシリーズでは感じられなかった新感覚。新しいファン層を獲得するだろう。
両車の仕上げも細部で差別化を図っている。カフェではメーターパネルにレーシーなホワイトをあしらい、ベベルギアカバーにはシルバーをあしらってブラックエンジンのなかでアクセントとしている。ホイールリムのアルマイト加工もストリートではシルバーだが、カフェでは黒。そしてグリップヒーターを備えて、上級仕様であることをアピールしているのだ。
伝統を受け継ぎつつ、それぞれが個性を主張するWブランドの最新進化形。これは甲乙付けがたい。
(試乗・文:青木タカオ)
■KAWASAKI W800 STREET〈CAFE〉主要諸元
全長:2,135×825〈925〉×1,135〈1,120〉mm●ホイールベース:1,465mm、シート高:770mm〈790mm〉、●エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ、排気量:773cm3、ボア×ストローク:77.0×83.0mm、最高出力:38kW(52PS)/6,500rpm、最大トルク:62N・m(6.3kgf-m)/4,800rpm、燃料供給装置:電子制御燃料噴射、燃費消費率:30.0km/L(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)、21.1km/L(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)、燃料タンク容量:14リットル、変速機形式:常時噛合式5段リターン、車両重量:221〈223〉kg●メーカー希望小売価格:993,600円〈1,112,400円〉
[後編は近日公開予定です。しばらくおまちください]
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