2019年4月23日
第103回「お釈迦様と社長様」
「あずみ」と聞いて、この駄コラムにうつつを抜かしている、思いやりあふれる諸兄が思い浮かべるのは、もちろん立喰・ソ。校歌吹こうか? ではなく幸か不幸か、駄コラムを知らず一生を終える日本人の99.9999999999パーセントが思い浮かべるのは、女忍者のマンガか上戸彩ちゃん主役の映画。さもなくばTBSのエース男性アナウンサーあたりかな(突然フレンドリー気味)。三味線漫談の林家あずみ師匠しか思い浮かべない尖ったセニョール、セニョリータもいらっしゃることでしょうが、それはそれでグラッチェ、グラッチェ(ケーシー高峰師匠に合掌)。
立喰・ソ大好きな諸氏でも、関東圏でないと「あずみ?」状態かもしれません。知っている方には釈迦に説法ですが、お釈迦様に申し訳ない気持ちでいっぱいながらも、あずみについて説明しないと話が進みません。進まないならそれは楽ですが、楽ばかりしているとお釈迦様に叱られます。ちなみに使い物にならないという意味の「オシャカ」ですが、阿弥陀様を作ろうと思ったのにお釈迦様になってしまったが語源だとか。こやつ、お釈迦様にも阿弥陀様にも失礼千万な大罰当たり者ですわ……重ね重ねお釈迦様にはご迷惑をおかけします。
お釈迦様でも気がつくまいというほどのことはないですが、あずみは、JR東日本の立喰・ソ=駅そばです。とはいえ巨大組織NRE系列ではありません。どうでもいいですが巨大組織というだけで頭に「悪の」と付けたくなるのは万国共通でしょうか。
悪でもNREでもないJEFB(JR東日本フードビジネス)というJR東日本系列会社が元締めです。あずみはご存じない方でも、同社のベッカーズは知っているかもしれません。知らない人にはさらに「ベッカーズって何?」と説明責任が生じるかも知れませんので簡単に説明します。ゲス不倫のあの人と、ギザギザハートなグループを合体したような名前ですが、ハンバーガーがおいしい駅中カフェです。あずみよりもたくさんありますが、残念ながらといいますか、当然ソは一切販売していません。
首都圏を制圧しながら、評判はイマイチ、イマニ、イマサン、イマヨン……(あくまで大多数の個人の感想ではないかと思います)NRE系のあじさい茶屋は、誰が言ったか知らない(ことにしておきます)が、うまいこと言うなぁと感心した人多数の「味の災難あじさい」という辛口の評価(おつゆはどちらかといえば甘口でしたが)でした。対してあずみは、「as soon as あずみ!」と言うやいなや通い詰める固定ファンも(少なくとも1人は知ってます)。ちなみに改札内が多かったあじさいに対し、あずみは改札外がほとんどでした。
立喰・ソ(マニア)の敵(かたき)のようなあじさい茶屋でしたが、第74回でもお伝えしたように、今や祇園精舎の金の音の絶滅危惧種。どえらい勢いで成り上がった戦争成金が、すってんてんになって消えていくような、そんな爽快感を感じている人はいますか? なにもそこまで邪険にしなくても。
あずみは急激な拡大路線を突き進むこともなく、北は熊谷から西は拝島あたりまで十数店(私が知る限りでは18店ほど。多くても20店くらいか?)を地道に展開。末永くしあわせに暮らしましたとさ。と、昔話ならめでたし、めでたしで終わるところですが……世の中そんなに甘くない(あずみのおつゆは甘口というよりはやや辛口ですし)。
そんなあずみの全盛期は2000年の頭まで。2005年の春頃? 神田店が幻立喰・ソになると、拝島店(2007年8月24日)、秋葉原店(2008年1月14日)、代々木(2012年12月10日)、新橋店(汐留口 2012年12月31日)、以下日時は不明ですが、おそらく2010〜2013年頃に新橋店(SL広場側のガード下にあった方)、大塚店、十条店、海浜幕張店、北浦和店、吉祥寺店が次々と幻立喰・ソになっていったのです。戦史に詳しい兄貴は、映画「戦争のはらわた」の冒頭シーンを思い浮かべたことでしょう。
それでも、2012年8月8日に国際展示場駅店、2013年池袋にちょっと高級指向の新形態店、乱切りそばあずみ、同じ頃に名称こそあずみながら、生そばをウリにした両国店をオープン、新戦略で仕切り直しか? と思われましたが、それもつかの間、2015年9月30日に早くも両国店が、続いて飯田橋店が2016年8月6日に幻立喰・ソ化。その後しばらくは小春日和の穏やかな日々(たぶん)が続いておりました。が、令和を目前にして突如、熊谷店、北松戸店、国際展示場駅店、乱切りそばの池袋店が3月31日、二八そばの西船橋店(二八そばも元締めは同じJEFB)は3月16日に、ばたばたばたばたと幻立喰・ソになってしまいましたのです。はたと、振り返れば、あずみは大崎に最後の一店を残すのみという、あじさい以上の超絶滅危惧種になってしまったのです。
大崎店が最後の砦となるのか、それとも巻き返す反撃の拠点となるのか。あずみファンならずとも、先行きを見守りたいところですが、結末は立喰・ソの神様のみがご存じなのです(違います。少なくともJEFBの社長さんは知っているはずです。まあ、私から見れば神様のような存在ですから、ある意味正解です)。
最後にひとつ。そもそも、あずみってどういう意味でしょうか。地名っぽのですが検索してもヒットしません。これもまた永遠の謎になりそうです(「社長聞いてこい!」って? いやいや、神様にそんなこと聞けません)。
●幻立喰NEWS2019
店名は?
古いハードディスクやらCD-ROMやらひっくり返して、あずみ各店の写真を探しまくったのですが、前記のように何店かはついに発見に至らず。そのかわり神田あたりで2005年頃に撮影したらしい謎の立喰・ソの写真が見つかりました。見た感じは立喰・ソのようですが、例によってまったく記憶にございません。ひどい写真ですし、店名や住所も写っていません。また謎が増えました。そうそう、デジタルって撮るのは簡単で楽ですが、考えて保存しないと古い媒体は読めなくなったり、文字化けしたり……データは整理整頓して保存しないとなんの役にも立ちませんというありがたい教訓でした。まあデジタルに限らず、日頃から整理整頓していれば問題は起きないのです。解ってますよそんなこと……
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