2019年5月13日
青春の2Q(2ストローク・Quarter)カタログ その2 スズキ空冷編-1
自動織機(機織機=はたおりき)の製作会社として1909年にスタートしたスズキ(当時は鈴木式織機)が、初めてバイクを発売したのは太平洋戦争敗戦後の1952年。第一作は自転車用補助エンジンのパワーフリー(37cc)で、扱いやすさと高性能で爆発的なヒットとなった。早くもその4年後には、「バイクはコレだ!」から命名されたとされるスズキ最初の軽二輪車コレダ250TTを発売、豪華な四輪車の象徴であったキャデラックをイメージしたといわれる重厚なデザインの個性的なモデルであった。16馬力と当時としては高性能ながらも、バイクとしては軽快さに欠けるデザインは一般受けしにくかったようで、後にシンプルなスタイルになったTT-P、その廉価版TMがラインアップされる。
1956年4月
SUZUKI コレダ250TT
スズキ初の250モデルであるコレダ250TTは、1955年にスズキ初の125モデルとした誕生したコレダSTの単気筒エンジンを、並列に並べて2気筒にするという思考で作られた2ストロークエンジンを鋼板プレスバックボーンフレームに搭載。当時としてはまだ珍しかったプライマリー式のキックや、2段階調整可能な油圧ダンパー付のアールズフロントフォークを採用していた。黄色いフォグランプも内蔵した大型ヘッドライトや、長いステーのリアウインカーなど豪華な外装が特徴的で、二輪版キャデラックとも呼ばれた。最高速度は130km/h。
SUZUKI コレダ250TT-P
コレダ250TTの過剰な装飾、装備、メッキを省くとともに、アールズタイプからテレスコピック式となったフロントフォークをはじめ、鋼板プレスバックボーンフレームをパイプフレームなどに変更した。エンジンはパワフルな250TTのものをほぼそのまま搭載しており、車体寸法は一回りほど大きくなったがやや軽量化され、価格も安くなったこともあり人気となった。
SUZUKI コレダ250TM
コレダST(125cc)系のチャンネルフレームをベースに、コレダ250TT系のツインエンジンを搭載した廉価版モデル。フロントフォークはテレスコピック、リアサスはプランジャー式で、TTやTT-Pとは構成が異なる。コレダ250TT-Pよりも安い設定で人気となった。後期型(写真右)は、リアキャリアにステーが付き、タンク形状が変更されSマークが付くなどでマイナーチェンジした。
コレダ250シリーズは、1959年にボア×ストロークを一新した新エンジンに変更。油圧により前後が連動する珍しいブレーキを装備した実用車コレダツインエース250TAと、リアのみ油圧式ブレーキのスーパーツーリングTBの二本立てにフルモデルチェンジ。1962年末にTBの外装を小変更したTCを経て、翌1963年には軽快なデザインのT10へモデルチェンジ。コレダ250系はこのモデルが最終となった。
SUZUKI コレダツインエース250TA
ロングストローク化した新エンジンでフルモデルチェンジ。二輪市販車としては初の前後共に油圧式のドラムブレーキを採用し、レッグシールドも標準装備したビジネスモデル。写真のダブルシートモデルの他、シングルシート+リアキャリモデル、タンデムシート+リアキャリアモデルもラインアップされたようだ。ちなみに前年の東京モーターショーの発表時のカタログでは、実用車という扱いではなく「オートバイの王様」と謳われていた。
SUZUKI コレダスーパーツーリング250TB
17インチホイール、ダブルシート、テーパーカットマフラーなど装備し、パワーアップしたツーリングモデルのTBもラインアップ。TAとは異なり、リアブレーキのみに油圧式を採用。1963年にメッキタンクや深いフロントフェンダーなどで外装を小変更し、実用車的スタイルとなったコレダ250TCにマイナーチェンジ。
SUZUKI コレダ250TC
前後油圧式ブレーキのTAは比較的短命で、TBも1961年の東京モーターショーで発表された深いフロントフェンダーにメッキタンクを装備した実用車風のTCにマイナーチェンジ。ツインキャブやリアのみ油圧式ブレーキなどの装備は継承している。
SUZUKI コレダ250 T10
TCも短期間でTBタイプのフロントフェンダーなどを採用し、パワーアップしたT10へとモデルチェンジ。特徴的な油圧式リアブレーキは継承されたが、1964年の東京モーターショーにロッド式モデルが参考出品され、翌年からは一般的なロッド式に改められた。最高速度は140km/h。
1965年、軽量なパイプ製クレードルフレームにクラス最高峰の25馬力を発揮する6ポートアルミシリンダーの新エンジンを搭載、国産車としては初の6速ミッションや、分離給油式のセルミックス(後のCCIS)も装備したT20へとフルモデルチェンジ。国内発売に先行してX6ハスラーの名称で輸出が行われ、快速モデルとして好評だった。T20は翌年パワーアップしたT21(1967年に名称のみT250に変更)となり、1969年にスポーティにデザインを変更したT250Ⅱ、1970年アップマフラーモデルもラインアップしたT250Ⅲと毎年のようにモデルチェンジする人気車へと成長していった。1971年には3気筒で登場したGT750、550、380のGTシリーズに組み込まれ、GT250と名称は変更されたが、T20系のツインエンジンはそのまま受け継がれた。
SUZUKI T20
前年の第11回東京モーターショーに参考出品された輸出仕様を国内でも販売開始。スズキ初のパイプフレームにアルミシリンダーの新エンジンに国産初の6速ミッションを装備し、6ポートのピストンバルブエンジン、分離給油方式セルミックスなど斬新な装備と、クラス最強の25馬力を誇ったスプリンターモデル。最高速度160km/h、ゼロヨンは13.5秒と俊足を誇った。北米向けのX6ハスラーは29馬力仕様が輸出された。
SUZUKI スーパーT21
T20をベースに、ツインキャブなどを採用して30.5馬力にアップした輸出仕様を国内でもT20に代わって発売。外観上でT20と異なる特徴は、剥き出しになったフロントスプリング。30馬力を越えたのは国内クラス初で、最高速度は180km/h。
SUZUKI T250
1967年の春頃に、スタイル、性能はそのままに名称をT250に改めた。サイドカバーに分離給油方式セルミックス改めCCIの文字が入る。同年にはアップマフラー、ブリッジ付ハンドル、ブロックタイヤ、折りたたみ式ステップなどを装備したTC250スクランブラーや、196cc、21psの5速ミッションエンジンバージョンのT200もラインアップに加わった。
SUZUKI T250-Ⅱ
基本性能はそのままにタンクラバーを廃したニュータンク、ウェルダー仕上げのシート、セパレートメータの採用などスタイリングを大幅に変更。
SUZUKI T250-Ⅲ
セリアーニ型のフロントフォークを採用し、タンク、メーター、灯火類を変更。キャブも大径化された。マフラーは写真のアップマフラーと通常型のダウンタイプを選択できた。
[青春の2Q その1 YAMAHA空冷編-1|その2 SUZUKI空冷編-1 |その3Kawasaki空冷編-1]