2019年3月28日
第102回「鉄の町」
「鉄は国家なり」
誰が言ったのかは知りませんが、いい言葉です。鉄ファースト。鉄こそ国家の基幹なり。なのにちょっと前までは女性から忌み嫌われる趣味の横綱でした。「いい歳して電車に夢中になって」と後ろ指をさされ「いえ、私は電車より客車の方が好きなんです」などと反論したら間違いなくキ○ガイ扱い。え? 鉄違い? 違うんですか? そうですか。そうですよね。ええ、もちろん知ってましたよ。「国家なりの鉄は、鉄は鉄でも鉄(てつ↗)ではなく鉄(てつ↘)の方。おっけーぐーるぐる、これ英訳して。「Iron is iron but not iron」ですって……外国人に伝えるのはかなり難しいです。まっ、私の小2レベル(中2ではない)の英語力で伝えることははなから不可能ですから、いらぬ心配です。
いつもの与太話に「はいはい、よかったね」と仏の顔も三度でしょうか。あっ、仏の顔も三度までの本来の意味はもちろんご存じですよね。3回目までは許してもらえるということではなく、「温厚な仏様を2回ぶん殴って許してもらえますが、さすがに3回目はキレます」ということです。3回目はアウト。野球でいえばスリーバント失敗です。でも、勘違いしてはいけません。仏様のような大将と、お釈迦様のようなおかーさんがやっている立喰・ソで、2回までは食い逃げしても許されるということではありません。食い逃げは初犯でも犯罪です。野球でいえば振り逃げセーフではありません。
食い逃げは詐欺罪にあたるそうですが、例えば支払いの段階になってサイフを車の中に忘れたことに気がつき、店員さんに告げず(ここ重要)、車にサイフを取りに戻ったものの、車に乗ったら支払いをすっかり忘れてそのまま帰ってしまった場合、最初から食い逃げする意思はなく、うそもついていないし、結果的に食い逃げになってしまったので詐欺罪の対象にならないこともあるとかないとか。
マジですか?? 野球でいえば振り逃げセーフですか(しつこい野球例えは、イチロー選手の引退の便乗ではなく、母校のセンバツ一回戦勝利記念)。法律は理屈と屁理屈のせめぎ合いですから、素人には理解できないような解釈も成立するのでしょうが、忘れたら何でも許されちゃうとしたら、高齢化が進む我が国の将来は食い逃げ天国になりかねません。
でも大丈夫。我々が愛してやまない立喰・ソには、食い逃げ防止セキュリティシステムである先払いシステムや券売機が導入されていることが多いのです。券売機は注文ミスやおつりの間違いも防止できます。直接お金に触れないので衛生面でも安心です。
と、いつものようにいったいなんの話をしたいのか五里霧中状態のなか、フォグランプもバックフォグもないままずんずん話は進みます。バックフォグといえば、霧もないのに点灯している高級車(安い車にはそもそもそんなもの付いていない)時々いますが、微妙にまぶしくてイラッとしませんか。まあ、それそれよりも最近の白色ヘッドライトのバカに明るいヤツのほうが問題だと思いますが……おっと、また話があらぬ方向へ。
キリのいいところで、鉄へと話を戻します。鉄といえば思い浮かべるのはどこでしょう? 発祥の地、九州の八幡? ラグビーでおなじみの釜石? それとも首都圏に近い千葉の君津? 実は結構な生産量の大分? などなどみなさんの心の中の製鉄所は、製鉄所の数だけあるのです(たぶん)。ちなみに私の場合は……小学3年生の社会科見学で行った君津。構内に張り巡らされた線路に夢中になってうっとりしていたらバス酔いと間違えられた思い出深い君津ではなく、北海道の室蘭。そうなんです、室蘭エリアにはけっこうな立喰・ソがあるのです。製鉄所=熱い=汗をかく=立喰・ソの塩分を欲する。という四段論法で、製鉄所あるところに立喰・ソありと思うのですが、前記の八幡、釜石、君津、大分に立喰・ソがあるという話を聞いたことがありません(釜石は駅にありますが)。聞いたことがないだけで、実はあるかもしれませんが、とりあえず今回はない方向で。ということで、製鉄の町=立喰・ソといえば室蘭なのです。鉄だけではなく、かつて北海道炭の輸出向け積み出し港としても賑わった町です。巨大な室蘭駅も今は移転して、すっかりコンパクトになりました。
室蘭駅近くに老舗のそば清と、最近(といってももう5年くらい前か)開店した新進気鋭、若いご夫妻ががんばる松そば、東室蘭駅周辺には地元のお弁当屋さん系が3店と市場の近くに別の立喰・ソもあります。おとなりの鷲別駅前にももう一軒あるようです。札幌は別格にしても、室蘭エリアは旭川、岩見沢と肩を並べる立喰・ソ密集地帯(広ーい北海道の規模を考慮して)なのです。
駅から近い繁華街のはずれに、老舗のそば清はありました。もう見るからに鉄の町の小腹を支え、風雪に耐え続けた風情がむんむんです。昭和立喰・ソマニアは、この壁にお湯をかけたおつゆでかけ3杯はいけます(もちろん誇張した表現です。無断でお湯をかけてダシを取るとたぶん怒られます)。
そば清は、地元の方なら誰でも知っている半世紀以上の歴史ある老舗でした。寡黙で一見すると恐そうな大将は、立喰・ソ一筋の職人らしい雰囲気むんむん。たぶん大将のダシだけでかけ3杯は……ほんとに怒られますからおふざけはこのへんで。2回ほどしか行ったことはないのですが、2回ともお店の前にタクシーが止まっていました。運転手さんがソを食べに来るという、タクシー行くところに名店ありの法則そのものです。2度あることは3度ある。3回目もタクシーを見る前に、2018年5月26日をもって幻立喰・ソになってしまったようです。
●幻立喰NEWS2019
室蘭名物
室蘭名物といえば、カレーラーメンとやきとり。カレーラーメンは北海道4大ラーメン(札幌の味噌、函館の塩、旭川のしょうゆラーメン)というスタンスでがんばっています。もうひとつのやきとりはカレーラーメンの数百倍以上当たり前にどこにでもあるのになんで名物? と思ったら、やきとりではないのにやきとりなのです。つまり、製鉄所でわらの束を作っていたら喜ぶのは豚三兄弟の長男くらいなものですが、室蘭ではやきとり屋さんで出てくるやきとりは、焼き鳥ではなくやきとんなのです。私のような鳥が食えないちんちくりん野郎にとって、夢にまで見たやきとり屋でぐでんぐでんになることが出来る、まさに夢と魔法のくに、じゃなくてにく。立喰・ソ巡りに飽きたらカレーラーメンとやきとりも楽しめる鉄の町なのです。
●速報!
湊屋閉店の真実とは!?
先月号でお伝えした湊屋。店主の菊地さんを、なんと坂崎師匠が連載コラム文春オンラインで独占インタビュー!閉店の理由はもちろん、しかも○○までごちそうになっているなんて、やっぱ師匠はすごい人だわ……ぜひご一読を!https://bunshun.jp/articles/-/11117
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