2019年4月15日

“青春の2Q(2ストローク・Quarter)カタログ その1 ヤマハ空冷編-1

青春の2Q(2ストローク・Quarter)カタログ その1 ヤマハ空冷編-1

Q4カタログに次いでお送りするのは、2Q(2ストローク・Quarter=250ccクラス)エンジンのスポーツモデル。今ではすべて過去帳に入ってしまい、平成生まれの若者達には2ストローク自体が未知のエンジンになってしまったのかもしれないが、バイクの黎明期から発展期の中核を担い、空前のレーサーレプリカブームを巻き起こし、そして最後はある意味自滅のように消えていった。1950年代半ばから終焉まで波瀾万丈な歴史を、250ccスポーツモデルを中心に150〜200ccクラスもあわせてなつかしの2Qモデルを車両のラインアップで振り返ってみよう。
公道版浅間レーサーの登場で2Qの方向性は決定した

 1955年、日本楽器から分離独立し、ヤマハ発動機が発足。同年発売を開始した第一号車が赤とんぼの愛称で親しまれたYA-1(125cc単気筒)であった。このYA-1をベースに127ccに排気量をアップしたヤマハ初の軽二輪車がYB-1。これは暫定的なもので1956年には、オリジナルデザインを加えた175ccのYC-1が登場した。
 ここまでは基本的に外国車をお手本としたが、ヤマハ初の250ccとなるYD1は、GKデザインの手によるオリジナルデザインで登場。特徴的なスタイルのタンクは「分福茶釜」の愛称で親しまれた。その後、初の海外レースや国内レースの成果をフィードバックしたよりスポーティなYDS1が登場すると、YD系はフラッグシップの座を譲りツーリングモデル、ビジネスモデルとして落ち着いたデザインに変更。メッキタンク付のYD2、ホワイトリボンタイヤのYD3と続いた。

1955年6月 
YAMAHA YB-1

ヤマハの第一号車YA-1のストロークを2mmアップし、127ccとしたヤマハ初の軽二輪車。スタイルはYA-1と同様だが、メッキで縁取られたタンクが印象的で、YA-1の「赤とんぼ」に対し「黒とんぼ」と呼ばれることもあった。

YB-1

●エンジン:空冷2ストローク単気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):127cc (52×60mm) ●最高出力:5.6ps/5000rpm ●最大トルク:0.96kg-m/3000rpm ●全長×全幅×全高:1980×660×925mm ●軸距離:1290mm ●車両重量:104kg ●タイヤ前・後:2.75-19・2.75-19 ●車体色:- ●発売当時価格:145000円

1956年5月 
YAMAHA YC-1

ドイツ車のDKW RT175を手本として製作されたヤマハ初の175cc新設計軽二輪車。YA-1よりもスタイリングや機構にオリジナル度合いが高まって性能面でも安定した。富士登山レースでは1〜5位に入賞したこともあって、販売も順調に伸びた。最高速度は110km/h。

YC-1

●エンジン:空冷2ストローク単気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):175cc (62×58mm) ●最高出力:10.3ps/5500rpm ●最大トルク:1.6kg-m/3400rpm ●全長×全幅×全高:2040×660×970mm ●軸距離:1285mm ●車両重量:118kg ●タイヤ前・後:3.00-19・3.00-19 ●車体色:- ●発売当時価格:145000円

1957年
YAMAHA 250YD1

エンジンはドイツのアドラーMB250を手本としたが、GKデザインの手によるオリジナルデザインで登場したヤマハ初の250ccモデル。特徴的なデザインのタンクは「分福茶釜」と呼ばれ親しまれた。スポーティなイメージを強調するように、当時としてはかなり大胆な荷台もリアシートもないシングルシート仕様(写真左)で登場したが、まだまだスポーツオンリーというには時代が早すぎたようで、翌年からはタンデムステップやリアキャリアを追加、ダブルシート仕様(写真右)も加わった。躍動感のあるオリジナルデザインはグッドデザイン賞も受賞している。最高速度は115km/h。

YD1

250YD1 初期型

YD1

250YD1 ダブルシート仕様
●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):247cc (54×54mm) ●最高出力:14.5ps/6000rpm ●最大トルク:-kg-m/-rpm ●全長×全幅×全高:1935×705×935mm ●軸距離:1270mm ●車両重量:140kg ●タイヤ前・後:3.25-16・3.25-16 ●車体色:- ●発売当時価格:185000円

1958年 
YAMAHA 250YD2

よりスポーティなYDS1の登場により、YD1はプレスバックボーン+パイプのセミダイヤモンドフレーム、セルスターター、メッキタンク、深いフロントフェンダーなど耐久性、実用性を重視したスタイルにモデルチェンジ。最高速度は115km/h。 

YD2

●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):247cc (54×54mm) ●最高出力:14.5ps/6000rpm ●最大トルク:1.9kg-m/4000rpm ●全長×全幅×全高:1900×740×955mm ●軸距離:1270mm ●車両重量:140kg ●タイヤ前・後:3.25-16・3.25-16 ●車体色:- ●発売当時価格:185000円

1961年11月 
YAMAHA 250YD3

YD2の改良型。ツインキャブ、ギア比変更、ブレーキ改良、セルスターターやホワイトリボンタイヤを装着してモデルチェンジ。最高出力は17馬力にアップして、最高時速も125km/hにアップ。

YD3

●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):247cc (54×54mm)●最高出力:17ps/6000rpm ●最大トルク:2.4kg-m/4000rpm ●全長×全幅×全高:1900×645×965mm ●軸距離:1255mm ●車両重量:140kg ●タイヤ前・後:3.25-16・3.25-16 ●車体色:- ●発売当時価格:168000円

レース直結を印象付けたYDS

 今や伝説の浅間火山レースや、ヤマハが初めて挑戦し、日本車初の入賞を果たした海外レースのカタリナGPを走ったワークスレーサーYD1AはYD1がベースだが、ショートストロークに変更し、ツインキャブ、5速ミッションなどを装備したいわばワンオフで市販車のYD1とは別物であった。
 このレーサーで得たノウハウをフィードバックして製作されたYD1Aの公道版ともいえるのが、1959年に登場した250S。すぐにYDS1へと車名変更されたこのモデルの最高出力20馬力、最高速140km/hのスペックは当時の市販レーサーと遜色なく、装備面でも国産車初の速度、回転、距離計などを一体化したメーターや鮮やかなメタリックカラーも鮮烈で、ヤマハ=レース直結を強く印象づけた。
 1962年にはさらにパワーアップした高速型のYDS2となり、YDS2の車体にYD3のエンジンを搭載した廉価版YDT1も登場。1964年には分離給油方式オートルーブを追加したYDS3へ進化、1967年、フラッグシップモデルR1(350cc)の登場にあわせ、同様のスタイルでセルを装備したDS5-Eへモデルチェンジしスポーティさはややスポイルされたのだが、最終的には1969年、再び洗練された軽快なデザインを取り戻したDS6となり、YDS系の最後を飾った。

1959年7月 
YAMAHA スポーツ250S/YDS1

浅間火山レースなどで活躍したワークスレーサーYD1Aの公道バージョンといえる元祖レーサーレプリカ。最高出力20馬力の2気筒、ツインキャブのエンジンをダブルクレードルフレームに搭載し、国産車としては初の5速ミッションを採用した本格的なスポーツモデルであった。当初250Sとして登場したが、すぐにYDS1へと改名された。翌年6月にミッション、ブレーキ、フロントフェンダーの改良を受けた。レース用のキットパーツも発売され、後の市販レーサーTD-1へと繋がっていく。最高速度は140km/h。

YDS1

●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):246cc (56×50mm) ●最高出力:20ps/7500rpm ●最大トルク:1.9kg-m/7500rpm ●全長×全幅×全高:1990×615×950mm ●軸距離:1285mm ●車両重量:151kg ●タイヤ前・後:3.00-18・3.00-18 ●車体色:パールエッセン×メタリックゴールド ●発売当時価格:185000円

1962年3月 
YAMAHA スポーツ250YDS2

YDS1の改良型。吸排気系や一次減速比の変更、防塵防水のφ200mmの2リーディングドラムブレーキの採用などでバージョンアップ。3馬力のパワーアップし、最高速度は145km/h。

YDS2

●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):246cc (56×50mm) ●最高出力:23ps/7500rpm ●最大トルク:2.14kg-m/6000rpm ●全長×全幅×全高:1990×615×935mm ●軸距離:1290mm ●車両重量:156kg ●タイヤ前・後:2.75-18・3.00-18 ●車体色:メタリックブルー、メタリックグレー ●発売当時価格:187000円

1963年 
YAMAHA ツーリング250YDT-1

スポーツモデルYDS2の車体にアップハンドルを装着、YD3のエンジンをパワーアップして搭載した。バイクはスポーツモデルかビジネスタイプが当たり前だった時代にツーリングモデルという新ジャンルで登場。最高速度は130km/h。

YDT1

●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):247cc (54×54mm)●最高出力:18ps/6500rpm ●最大トルク:2.4kg-m/4500rpm ●全長×全幅×全高:1990×735×1080mm ●軸距離:1290mm ●車両b重量:150kg ●タイヤ前・後:2.75-18・3.00-18 ●車体色:- ●発売当時価格:182000円

1964年6月
YAMAHA スポーツYDS3(初期型)

分離給油方式のヤマハオートルーブを採用したYDSシリーズの決定版。サイドカバーが付き、馬力もアップした。12月にはタンクマークが音叉から文字タイプに変更された。最高速度は147km/h。

YDS3

●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):246cc (56×50mm) ●最高出力:24ps/7500rpm ●最大トルク:2.3kg-m/6000rpm ●全長×全幅×全高:1975×780×1050mm ●軸距離:1295mm ●車両重量:159kg ●タイヤ前・後:3.00-18・3.00-18 ●車体色:スーパーブラック ●発売当時価格:187000円

1966年1月 
YAMAHA スポーツYDS3(後期型)

YDS系の最終型はメッキタンクを採用してモデルチェンジ。燃焼室の形状変更、二次減速比の変更などにより2馬力アップし、最高速度は152km/h。後輪タイヤもサイズアップした。

YDS3

●エンジン:空冷2ストローク2気筒ピストンバルブ ●総排気量(内径×行程):246cc (56×50mm) ●最高出力:26ps/7500rpm ●最大トルク:2.3kg-m/6000rpm ●全長×全幅×全高:2005×780×1050mm ●軸距離:1287mm ●車両重量:159kg ●タイヤ前・後:3.00-18・3.25-18 ●車体色:スーパーブラック、キャンディレッド ●発売当時価格:187000円

1967年2月 
YAMAHA 250DS5-E

スタイルはYDS3最終型のイメージを踏襲しているが、エンジンはアルミシリンダー、セル付に変更しパワーアップした高速ツーリングモデル。翌年4月に5ポートの新エンジンとなり、ウインカーも小型化。180cc版の180CS1-Eもラインアップ。翌年4月にはタックロールシート、ウインカーの大型化などマイナーチェンジ。最高速度は160km/h。

DES5

●エンジン:空冷2ストローク2気筒 ●総排気量(内径×行程):247cc (56×50mm) ●最高出力:29.5ps/8000rpm ●最大トルク:2.72kg-m/7500rpm ●全長×全幅×全高:1990×770×1050mm ●軸距離:1290mm ●乾燥重量:143kg ●タイヤ前・後:3.00-18・3.25-18 ●車体色:キャンディレッド ●発売当時価格:193000円

1969年1月 
YAMAHA スポーツDS6

ゴージャスなイメージのDS5-Eからすっきりとしたティアドロップタンク、スピードとタコメーターが分離したセパレートメーターなどでフルモデルチェンジ。アップマフラーのスクランブラーDS6Cもラインアップ。最高速度は160km/h。181ccのCS1-Eも外装をDS6風にモデルチェンジしてCS2-Eに。

DS6

●エンジン:空冷2ストローク2気筒●総排気量(内径×行程):246cc (54×54mm) ●最高出力:30ps/7500rpm ●最大トルク:2.92kg-m/7000rpm ●全長×全幅×全高:1990×835×1065mm●軸距離:1290mm ●車両重量:138kg ●タイヤ前・後:3.00-18・3.25-18 ●車体色:ブリリアントレッド、アドリアンブルー ●発売当時価格:187000円



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