2019年1月31日
3月1日10時より、東北道も最高速度が120km/hに
110km/h試行後1年間、交通事故は人身が減少、物損は増加という結果に
岩手県警は30日午後、現在110km/hで試行を続けている東北道一部区間の最高時速を120km/hに引き上げることを発表した。実施は3月1日朝10時。新東名と同時に、全国2か所で120km/h試行がスタートする。120km/h試行は東北道(花巻南IC~盛岡南IC)上下線約30km。2月いっぱいを周知期間として、3月1日から1年間をめどに継続し、110km/h試行と同様に結果を分析して次の規制緩和に繋げる予定だ。
岩手県警は2017年12月から最高速度を110km/hに引上げて検証を行ってきた。特に最高速度の引き上げが実勢速度にどんな影響を与えるかが注目されたが、試行後1年間と試行前を比較すると、東北道の場合は上下線ともに実勢速度が低下する結果になった。以下は警察庁がとりまとめた東北道の実勢速度の変化だ。《》内は試行前1年間。
・上り線 110.7km/h《112.0km/h》
・下り線 113.6km/h《114.2km/h》
実勢速度は運転者が自分の意思で速度を選択できる状態の速度のこと。渋滞や80km/h車両が多い交通環境の場合は除外されて算出されている。
また、最高速度の引き上げは排気量126cc以上のバイク、乗用車、軽自動車、車重8トン未満・最大積載量5トン未満の中型トラックに限られる。大型トラックやトレーラーの最高速度は80km/hのままなので、速度差による交通事故の増加も懸念されたが、結果は試行後1年間と試行前1年間を比較すると、人身は減少、物損は増加という結果になった。
・人身事故 1件 《3件》
・物損事故 72件《49件》
人身事故は死亡事故が試行前1件が0件に減少し、重傷事故1件に留まった。これら事故状況について、岩手県警はこう評価して、120km/h引上げに踏み切った。
「事故原因はいずれも前方不注視、あるいはハンドルやブレーキ操作の不適用による事故だった。事故当時者から事故当時の認知速度を聞いているが、いずれも時速80キロ~110キロで危険を認知したということで、速度超過自体が要因となる事故は認められなかった」(交通規制課)
ただ、ライダーとして気になるのは、試行区間の重傷事故1件が二輪車事故だったことだ。大型バイクが道路左端のガードロープに衝突する単独事故だったことだ。110km/hの引き上げが原因ではないため120km/h規制では話題になるものではないが、新たな試行が始まると低速車との速度差は40km/hに広がる。自分のバイクにあった車線選択、車線変更時はより注意が必要になる。
岩手県警は施行後1か月と6か月の2回、試行区間の利用者300人にアンケート調査を実施。その62.7%で「他の路線・他の区間にも広げていくべき」という賛成意見を得た。
2020年、最高速度引き上げは、さらに全国に拡大
岩手県警の120km/h試行の発表と共に、警察庁も同日、今後の方向性を示した。
高速道路の最高速度引き上げの前提条件となるのは、まずは設計速度が120km/h以上であること。その区間を取りまとめ、13路線19区間、837.1kmであることを明らかにした。連続する区間が最も長いのは新東名(浜松いなさIC~御殿場JCT)の静岡県内144.6km。この区間には110km/h試行区間の約50kmを含む。また、次いで常磐道(三郷TB~日立南太田IC)の101.3km。(TBはトールバリアの略、本線上の料金所のこと)。
2019年の120km/h試行は110km/h試行と同じ2か所約80kmだった。今のところは1年10km/h刻みの引き上げ試行だったが、2020年の試行はこれらの対象区間について検討され、全国に広がることが期待される。全国の高速道路総延長は8800km。全国約10%で最高速度の引き上げが実現する可能性がある。一方、1960年代~70年代に開通した東名のような区間は、引上げ対象になっていない。
2016年末の警察庁主催の調査研究では、設計速度と共に、片側3車線以上の道路が検討対象の条件になっていたが、東北道の試行区間はすべてが2車線。今後の展開でも3車線にはこだわらない。
120km/h試行では、110km/h試行と同様に実勢速度が上昇しないか。速度差が広がることによって死傷事故が増えないか、ということがポイントになる。120km/h試行では110km/h試行と同じように厳しい取締りが行われる。適切な車間距離保持違反、追い越し車線を走り続ける通行帯違反は、特に重点的に監視・取り締まられる。
(取材・文:中島みなみ)