2018年12月28日
Can-Am RYKER
走りがエキサイティングで可能性無限大!
遊べるスリーホイーラー、間もなく日本上陸!!
■試乗・文:青木タカオ ■撮影:BRP
■協力:BRP JAPAN https://jp.brp.com/spyder/
フロント2輪、リア1輪のCan-Am(カンナム)「RYKER(ライカー)」を、太陽がサンサンと輝くアメリカ・カリフォルニアで試乗した。2019年春の発売を前に、アメリカ西海岸の有名なワインディング「マルホランドハイウェイ」や、海沿いを走る「パシフィックコーストハイウェイ」などで2日間をかけてみっちり乗り込み、スリーホイーラーならではの楽しさを味わい尽くしたのだった。
CVTでオートマ化し、操作はイージー。
クルマの普通AT免許で乗れ、若者や女性がターゲット
Can-Amはカナダのレクリエーションビークルメーカー「BRP(ボンバルディア・レクリエーショナルプロダクツ)」のブランドで、2007年に「SPYDER(スパイダー)」というロータックス製の並列3気筒1330ccエンジンを積むロードスポーツモデルをリリースし、世界中の乗り物好きたちに衝撃を与えた。
BRPはスノーモービルや水上バイク、ATVなどで世界的にもよく知られていたが、クルマでもなくバイクでもない両方の長所を合わせ持つ3輪という新しいカタチでの提案は、特に北米や欧州市場で受け入れられ、米国ミズーリ州・スプリングフィールドでは毎年スパイダーのオーナーが集まる熱狂的なラリー「SpyderFest」が開催されるなど着実にファンを増やしている。筆者はここ数年、バイクイベントの取材やジャーナリスト試乗会のために定期的に渡米しているが、スパイダーの姿は年々目立つようになってきているという実感がたしかにある。
最新式のスパイダーは「スポーツクルージング」(2,370,000円〜)「クルーザーツーリング」(3,240,000円〜)そして「ツーリング」(3,335,000円〜)といった三本柱のラインナップとなっていて、バイクならハイエンドモデルが買える価格帯。そんななか排気量900ccの並列3気筒と600cc並列2気筒の2つのエンジン設定となる「カンナム・ライカー」が、100万円台というリーズナブルさでニューモデルとして加わった。よりライトウェイトで高いスポーツ性能を獲得してのデビューで、ライダー層の拡大を狙う。クルマの普通AT免許で乗れ、若者や女性ユーザーにも乗ってもらいたいとスタイルをシンプルにし、車体色もポップでビビッドなものに。完全なるオートマ化で、操作も簡単にした。
取り回しや足着き性を心配する必要ナシ
バックギアも搭載し、駐車場へも楽々入れられる
シートに跨り、バーハンドルを握って走り出すと、バイクのような爽快感と操る楽しさがありながらクルマのような安定感が共存していることがわかる。観光客らが集まるベニスビーチやサンタモニカの前を通り過ぎると、スマホをこちらに向けて手を振ってくれる人もチラホラ。存在感があって目立つのだろう、カリフォルニアの陽気も手伝って気分がいい!
信号待ちで停止しても自立するから、足着きを心配する必要がないのも優位なところ。駐車場に入れるときも、バックギアが付いているから押し引きもしなくて済む。外国車の場合、欧米人向けの大柄なライディングポジションと感じがちだが、ハンドルもステップもロック機構を解除すると前後にスライドし、ワンタッチで位置調整することができるのもありがたい。乗り手の体格を問わず、気分次第で前傾姿勢にしたり、フットペグをフォワードコントロールにしてクルージングするなど自由自在となっている。
乗ったのは900ccモデル。極低速からトルクフルで、加速は強烈なほど。大型バイクに乗り慣れていなければ怯むほどの力強さだから、物足りないなんてことはまずないだろう。クルージングも心地良く、100km/h巡航でも車体やエンジンはまだまだ余裕といった感覚。不快な振動は発生しないし、直進安定性も良好だから、高速道路もそつなくこなしてくれる。
軽快にコーナーを駆け抜けていく
高い旋回力でワインディングが楽しい!
実力を見せつけたのは、ワインディングに入ってからだ。走り屋さんたちがスーパースポーツやスポーツカーで吹っ飛んでいくマルホランドハイウェイでも、負けじとアグレシッブな走りが楽しめた。もちろん、バイクのように車体がリーンしないから旋回力に限界はあるものの、ハンドルを切ることで強制的にノーズから向きが変わり、コーナーを意外なほど軽快に駆け抜けていく。
旋回時はイン側を引き、アウト側を押すというハンドルへの入力が求められるが、速度やアクセルを開けるタイミングがステアリング操作と上手く合うと、過剰に力を込めなくてもスムーズにコーナリングし、操舵で疲れることがない。旋回中に段差やうねりを乗り越え、不意な衝撃を受けても車体は落ち着いているし、カーブのRを見誤ってオーバースピードで突っ込んでもラインを整え直すフレキシブルさを持つ。安定しつつも、身のこなしが軽いのだ。
時間を忘れてダートライディングに没頭してしまう
3輪でのオフロード遊び、これは新感覚だ!!
さらに驚いたのは、バリエーションモデル「ラリーエディション」のオフロード性能だ。ダートへ入ると、無理矢理ハンドルを切って曲がろうとも転倒せず、アクセルを開ければカウンターステアが容易に決まってコーナーを立ち上がれる。2輪なら上級テクニックも、3輪なら少し走って慣れればドリフト走行をいとも簡単に楽しめてしまうのだ。
転ぶ不安がないからライディングは過激になっていき、時間を忘れて夢中になってしまう。先導してくれたライダーによると、2日間で設定されたテストコースはアスファルトの敷かれたオンロードだけの予定だったらしいが、筆者の要望に応えて急遽ダートに入ってくれたとのこと。この走破性の高さとエキサイティングさなら、半日はオフロードオンリーでもよかったのではないかとさえ思えてしまう。
CVTの繋がりが滑らかで、トルクが欲しいところでガツンと力が出てくれ、パワーバンドも広い。サスペンションも初期荷重ではしなやかで路面追従性が高く、奥ではしっかり踏ん張りが効く。スタンダードではザックス製のサスユニットでフロント137mm、リア150mmのストロークだが、ラリーエディションではKYB製HPGにグレードアップされ、フロント162mm、リア175mmのショック長を持つ。
電子制御によるエンジンおよびトラクションコントロールの設定も「ラリーモード」を選べば、リアが面白いように流れ、オフロード走行に適したセッティングになってくれる。BRPのATVはレーシングシーンでも実績があり、ダートライディングのレベルの高さはそのテクノロジーを惜しみなく注ぎ込んだおかげだ。
高速道路を快適にクルージングでき、ワインディングそしてダートもアグレシッブに楽しめる。新規ユーザーのターゲット層は若者や女性だが、これはもしかすると二輪のベテランライダーにも受け入れられるかもしれない。体力的に二輪は厳しくなったものの、ダートライディングを含むツーリングを仲間と愉しみたいという声にも応えられるからだ。クルマの4WD車ではバイクツーリングに同行しても面白くないが、カンナム・ライカーのラリーエディションならトレールバイクの林道ツーリングにも獣道でなければついて行けそう。日本でまた、試してみたい!!
(試乗・文:青木タカオ)
■Can-Am RYKER 主要諸元
●全長×全幅×全高:2,352×1,509×1,062mm ホイールベース:1,709mm シート高:597<615>mm 最低地上高:102<112>mm 車両重量:280<285>kg ●エンジン種類:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 排気量:900cc ボア×ストローク:74.0×69.7mm 最高出力:57.5kW(77ps)/7,100rpm 最大トルク:76N・m(7.75kg-m)/6,300rpm 燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) 燃料タンク容量:20リットル 変速機形式:CVT Automatic タイヤサイズ:前145/60R16 後205/45R16<(205/55R15)> ●メーカー希望小売価格:未発表
※<>はラリーエディション