2018年12月7日
Honda CB1300 SUPER FOUR SP ファジーさがないハイスペック ホンダスポーツバイクの軸である
■文:中村浩史 ■撮影:依田 麗
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/
現行モデルのCB1300SUPER FOURがデビューしたのが2003年。
もう15年! スゴいロングセラーだ。
CBナナハンだってFだって、こんなに長くはなかった。
なんでこんなにロングセラーに……。そこ、乗ればわかる!
CB1300 SUPER FOUR/CB1300 SUPER BOL D’OR(以下SF/SB)にタイプ追加された「SP」モデルは、スタンダードにオーリンズ製正立フロントフォーク&リアショック、さらにブレンボ製モノブロック4ピストンキャリパーを組み込んだスペシャルバージョンだ。
けれど、この仕様はもはや珍しくはないよね。CB1300SF/SBを買って、カスタムしていって、前後オーリンズ、ブレーキはブレンボって仕様は、言わば定番。もちろん、その仕様にするにはかなりコストもかかるんだけど、CB1300を、いや他のモデルでも、乗り込んでいくとこの方向にカスタムしていきたくなるものだ。
重量車にオーリンズ製前後サスペンション、って組み合わせは、これまでもたくさん試乗してきた。古くはXJR1200用に、カロッツェリアジャパンが初めてオーリンズ製正立フォークを完成させた開発車にも乗せてもらったし、同時にZRX1100用もあったんじゃなかったっけ。それから何機種、オーリンズ製サスペンション仕様車を乗り込んできたか、数えきれない台数だと思う。
その特徴は、やっぱり同じイメージがあって、それは今回のCB1300SF SPにも同じことが言える。それが「よく動き、動かなくなる」ってことだ。
サスペンションチューニング車に乗って誰でもすぐにわかるだろうことは、まず「よく動くようになる」ってポイント。もちろん、適正セッティングの状態の場合だけれど、乗り込むだけでスッと沈んで、まずもって乗り心地がいい。沈み方が早い、つまりフリクションロスがないの。
けれど、それと同時に「動かなくなる」ことにも気づくもの。サスペンションは、まず重さをバネでこらえているわけだから、当然その反力で戻ろうとする。その戻ろうとする力を抑えつけるのがダンピング=減衰力で、「1」の早さで沈んで「1」の早さで戻ってこないのが「ダンパーが効いてる」って状況。びょんびょんしないのね。スッと沈んでシュコーッと戻るイメージ。
これが、オーリンズ製に限らず、市販車の純正サスペンションよりもコストのかかったアフターマーケット製品のいいところ。フリクションロスなくスッと沈んで、ひっかかりなくゆっくり戻る。これがライディング中となると、もっとイメージが変わってくるのだ。
乗り出すとまず、バイクが軽い。あれ、CB1300ってこんなんだっけ、と思いながら走り始めると、やはり車体の上下運動の動きが軽くてスムーズ。それが、バイクの質量の軽さを感じさせるのだ。それも、上に書いたようにびょんびょんハネちゃわないから、しっとりと乗り心地がいい。
コーナリングとは言えないような交差点でのアクションでも、これはわかる。スタンダードと同時に乗り比べているわけではないから厳密ではないけれど、比較ではなく、単に一個体として見るに、フットワークが軽い。減速する、フロントが沈んでリアが伸びる、そうするとハンドルが自然に切れて、小さく曲がっていくCB1300SF SP。1300ccが1000cc的な、750cc的な軽さで動く――これがサスペンションチューニングの効果のひとつだ。
高速道路では、乗り心地の良さがさらにハッキリわかる。これもバネ感がないというか、びょんびょん上下運動が続かないし、その上下運動が激しくないから、身体に負担がかからない。車体が少し沈んだ状態で小さく細かく路面の凹凸を受けているから、結果として乗り心地がいい、ってことなのだ。
路面の凹凸を受けてタイヤとかサスペンションはストロークしてるんだけれど、それがハンドルバーやシートに伝わらない。高速道路だと、路面の継ぎ目があるでしょう? 等間隔のあれを乗り越えるたびに、コツンコツンコツン、と来るショックが、明らかに小さい。それは、CB1300SF/SBのスタンダードよりも、明らかに小さいのだ。
お楽しみのワインディングでも、今回の試乗で違いがはっきり。まず、よく動くのだ。ワインディングではアクセルオンとオフ、ブレーキングを繰り返すので、その時のピッチングが軽くやわらかいのだ。これは、コーナリングで必要なアクションなので、バイクを寝かすときのきっかけがわかるし、フロントタイヤをキューッとつぶしながら曲がる感覚がよくわかる。これは、上手くなる勉強にもなる!
立ち上がりも、アクセルオンでリアタイヤを押し付けているのがよくわかるので、アクセルオンのタイミングもわかるし、アクセルの開け過ぎと開け足りなさもわかってしまうので、ここでは自分のヘタさがよくわかるという残念さ(笑)。
ただし、いいことばかりではなかったのもSPのデメリットだ。いや、デメリットじゃない、未完成というか、伸びしろですね! それは、今回の「動きすぎ」なこと。
SPのオーリンズ製フロントフォーク&リアサスは、調整機構が充実していることも大きなメリットのひとつだ。調整機構というのは、前後サスとも「プリロード、伸び側/圧側減衰力調整」のこと。さらにハイグレードなサスペンションは、減衰力調整が「高速側/低速側」と分かれていることもある。
動きすぎというのは減衰力で調整すればいいもので、簡単にいえばフロントフォークが「ブレーキングやアクセルオフで沈みすぎる」または、「アクセルオンで伸びすぎる」こと。リアサスはこの逆で「ブレーキングやアクセルオフで伸びすぎる」または、「アクセルオンで沈みすぎる」ことになる。この「動きすぎる」具合が、スタンダードよりも顕著なのだ。
今回の試乗では、ちょっと動きすぎかな、って印象。リアサスは伸び側/圧側減衰力調整が工具なしで調整できるため、特に伸び側減衰を少し強めたんだけれど、ペースを上げるワインディングで症状を感じるのは、やはりフロントフォーク。本来ならプリロードを触って、圧側を強めて……とか、楽しいセッティングの時間が待っている。
この症状がスタンダードで気にならないのは、いわばサスペンションの守備範囲が広いから。誰が、どんなスピードでどういう場所を、どういうペースで走っても「そこそこ」満足できるのがスタンダードなのだから、その意味ではオーリンズよりも高性能だ、ということができる。どっちをとるかは、オーナーの好みだよね。
それにしても、現行のCB1300SFの完成度の高さに、あらためて驚かされる試乗でした。現行スペックは、2017年にマイナーチェンジされたもので、その前のモデルからマフラー構造を変更してパワーアップ、アシストスリッパークラッチを使用してクラッチレバーがすごく軽くなった。この、パワーアップがキモチよかった! マフラーが変更されたことでサウンドが大きくなって(現行の新規制対応測定値)、排圧がかかったというか、エンジンの回り方が軽くなく、重くなく、すごく僕の感覚にピッタシだったのだ。
現行CB1300が誕生15年、それ以前のダブルプロリンク仕様が1998年誕生で5年ラインアップされていたし、それ以前は1000cc(=初代BIG1です)が1992年誕生で5年半。あらためて乗ると、このBIG1シリーズの「普通のバイクさ」がよくわかる。スゴすぎず、物足りなさすぎず、ホンダのビッグバイクらしい「カッコよさ」がある。
欲を言えば、もう少し軽いCBがあったらいいな、ってずっと思い続けていたら、CB1000Rが発売されたし、これからも「CB」は、ホンダスポーツバイクの軸としてラインアップされ続けてほしい――そう強く思った試乗でした。
この特別装備で、とうとう価格はスーパーフォアで185万1120円/スーパーボルドールで車両価格195万9120円。新車乗り出し価格、値引きなしのスーパーボルドールSPで、とうとう200万円の大台を超えることになった。スーパーフォアSPは、ギリ200万円以内、ってショップもあるかも。
ただし、このSPの価格アップはバーゲンプライスとも呼べるもので、装着部品のパーツ代をちょっと計算してみると、55万円オーバー! それに対して、今回のCB1300SF/SBのSPシリーズでは、オーリンズ製前後サスペンションと、さらにブレンボ製モノブロックラジアルマウントキャリパーを加えて、車両価格プラス約36万円だからチョーお得!
しかもCB1300SF/SBのフロントフォークはラジアルマウント仕様の正立フォーク(これは商品ラインアップにはない仕様)だし、リアショックも、ダイヤルカラーとか専用色。もちろん、セッティングも、市販状態でCB1300SF/SBに合わせてあるので、いったん新車を買って同じ仕様にカスタムするより、いったいいくらおトクなんだ、と。後付けで前後サスペンションをブレンボを買って取り付け、セッティングするより、ね♪
ちなみにこのオーリンズ、部品としては購入できないそうなので、オーナーさんがいま乗っているCB1300にパーツ注文で取りつけよう、とするのは無理だそうです。
(文:中村浩史)
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