2018年11月30日
VFR800シリーズがETC2.0を標準装備するとともにカラーバリエーションを変更
VFR800X/VFR800F 1,473,120円/1,419,120円~(12月14日/2019年3月8日)
「VFR」の血統は、1986年4月に発売されたVFRシリーズ、VFR750F、VFR400R、VFR400Zに始まる。1982年にVFシリーズ(VF750SABRE、VF750MAGNA、そしてVF750F)の発売で’80年代のV4エンジン攻勢への口火を切ったホンダが、V4時代の隆盛を決定づけたのがVFRシリーズだった。その後、V型エンジンはレースでの活躍を背景に過激レプリカ時代へと発展していくのだが、それはまた別項にて。
VFR(オーバー750)に関連するその後の流れを追ってみると、1998年4月にV型4気筒、781ccエンジンを搭載する「ホンダ VFR」が発売される。「’99年10月より国内で新たに導入される小型二輪自動車の排出ガス規制に適合する排出ガス浄化システムを採用したモデル」と説明されていた。ベースとなったのは世界各地のスーパーバイクレースで活躍していたRVF/RC45だったが、スーパースポーツ(当時はレーサーレプリカと称された)とはまた別の、来たるべく新しい時代の要求を先取りするマシンの姿で登場している。
環境の時代の到来だ。VFRの排出ガス浄化システムの切り札として新開発されたのがPGM-FIシステム(電子制御燃料噴射装置)だった。このPGM-FIシステムは、専用にプログラムされたECU(エレクトロニックコントロールユニット)の働きによって、様々な運転状況に応じ理想的な空燃比の混合気を供給し、燃焼過程での有害物質の低減を図るというもの。そしてエキゾーストエアインジェクションシステム(二次空気導入装置)も同時に採用し、エアを排気ポートに送り込み排出ガス中の未燃焼ガスHC、COを排気管内で再燃焼させクリーン化を図っていた。
これで分かるとおり、VFRは卓越した運動性能だけでなく、年々厳しくなっていく排出ガス規制に適合する環境性能も兼ね備えた大型ロードスポーツモデルとして’90年代を先取りするマシンだった。その後、2000年1月に三元触媒システム“HEC3”(Honda Evolutional Catalyzing System 3)を採用するなどのマイナーチェンジを受け、さらなる環境時代のハイテクマシンとしての姿を印象づけている。
2002年1月、VFRはフルモデルチェンジを受ける。ホンダのV型4気筒エンジンでは初のバルブ制御システム“V4 VTEC”(Variable Timing & Lift Electronic Control System)エンジンを、基本骨格は引き継ぎながらも剛性の見直しなどが行われたアルミツインチューブフレームに搭載。PGM-FIの更なる熟成やイリジウムプラグの採用などとともに世界最高水準の環境性能を謳うモデルとして登場した。
2004年1月にはカウル類のエッジやシャープなラインを強調、またホイールカラーや車体ロゴも変更するなどのマナーチェンジ。車体色もイメージカラーとして引き継がれてきたイタリアンレッドからデジタルシルバーメタリックへと変更。
2006年2月には、ABSを標準装備するとともにリアサスにプリロードアジャスターを装備。新色のパールコスミックブラックも追加している。カラーといえば、2006年12月にトリコロールイメージのカラーリングを施された「VFR・スペシャル」が限定200台で発売されている。その後、国内での“ハイテクのショールームマシン”の重責は、2010年3月に発売されたVFR1200Fにバトンタッチしていた。
2014年4月には、2006年発売のモデルをベースにアップトゥデートしたモデルに発展している。さらなる熟成を図ったエンジンを新デザインのカウル類を纏った車体に搭載。大きな変更点としては、リアフレームを従来のスチール製からアルミ製へと変更。スイングアーム、フロントフォーク、ホイールなども新設計、エンジンサイドに装備していたユニークなラジエーター配置を一般的な前面配置へ、マフラーも従来のセンター2本出しを右1本出しとするなど、内容的にはほぼフルモデルチェンジといえる変更だった。
クロスオーバー・スタイルのVFR800Xだが、国内では2011年の8月にM-TECがヨーロッパで好評を博していたVFR800X Crossrunnerを輸入したのをご記憶の方も多いだろう。当時は無限のカスタマイズパーツ類を装着して、名称も「VFR800X MUGEN」としてコンプリート販売された。販売計画台数は200台で、1,291,500円とお買い得価格だった。クルマの世界ではメーカー公認のコンプリート・カスタマイズ・モデルはおなじみの手法となっていたが、二輪の世界でもこういったカタチのスペシャル・バージョン、チューナー・ブランド車の先駆け的存在でもあった。
ホンダ自らがVFR800Xの国内仕様を発売開始したのは2014年12月。車体・足周りでは、ロードスポーツモデルの「VFR800F」に対して、前・後サスペンションのストローク量を増加。また、オフ走行時の性能の向上を図って最低地上高を30mm高い165mmに設定。シート高を標準仕様より20mm低く設定できる機構を設けるなど、取り回しやすさも考慮されていた。ABSも標準装備。
エンジンは、低・中回転域で力強い出力特性を発揮する4ストロークV型4気筒DOHC4バルブで、回転数によって稼働するバルブ数を切り替える「HYPER VTEC」も採用。ツーリングに便利なETC車載器とグリップヒーター、メインスタンドなども標準装備されていた。
2017年1月には、このVFR800FとVFR800X、同時にマイナーチェンジが行われ、2017年モデルとなった。
VFR800F、VFR800X共通の変更点としては、マフラーの内部構造を従来の3室構造から2室構造に変更した異形テーパー形状のマフラーを採用し、出力向上とともにV型4気筒エンジンらしい歯切れの良い重厚な排気音を実現している。EURO4導入の恩恵ともいえる新規制対応により、従来よりもコンパクト化したマフラーを車体中央部寄りに配置可能となったことで、マスの集中化が図られ、快適な操縦性も実現している。
装備面では、左カウル部に定格36W(12V3A)までの、アクセサリーソケットが標準装備され、使い勝手の向上が図られている。また、純正用品のアクセサリーソケットも継続してオプション設定とし、好みに応じて、シート下に増設を可能としている。前・後ホイールには、整備性に優れたL字エアバルブを採用。
VFR800F独自の改良点としてはカラーリングの変更で、メインフレーム、フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーがブラック色で統一され、継続色のヴィクトリーレッド、パールグレアホワイト、ダークネスブラックメタリックに加え、新たにデジタルシルバーメタリックの車体色が採用された。
VFR800Xの方の独自の改良点としては、ツーリング時の快適性を高めることに主眼が置かれた改良が行われた。冒険心をかき立てる、タフで洗練されたクロスオーバーデザインと存在感のある軽快なプロポーションは踏襲。フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーをブラックで統一し、従来のパールグレアホワイトに加え、今回、上質感のあるキャンディープロミネンスレッド、精悍なマットバリスティックブラックメタリックの新色を追加し、全3色の設定となった。
手動操作で5段階の調整が可能な可変タイプの「アジャスタブルウインドスクリーン」が採用され、走行状況に応じて走行風を抑制することを可能とし、疲労軽減に貢献している。ツーリングに便利なETC車載器と寒冷時に役立つグリップヒーターは継続で標準装備。
今回は、このところのホンダ車のトレンドとなっているETC2.0車載器の標準装備が主な変更点で、VFR800Xのカラーバリエーションを「キャンディプロミネンスレッド」に変更するとともにVFR800Fの「ヴィクトリーレッド」と合わせて12月14日に発売。VFR800Fの「パールグレアホワイト(ストライプ)」は、2019年の3月8日に発売される。
★HONDA ニュースリリースより (2018年11月30日)
「VFR800F」「VFR800X」のカラーバリエーションを変更するとともに
ETC2.0車載器を標準装備し発売
Hondaは、扱いやすい出力特性の水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・V型4気筒800ccエンジンを搭載した大型ツアラーモデル「VFR800F」と大型クロスオーバーモデル「VFR800X」のカラーバリエーションを変更するとともに、ETC2.0車載器※1を標準装備し、「VFR800F」の「ヴィクトリーレッド」と「VFR800X」を12月14日(金)に、「VFR800F」の「パールグレアホワイト(ストライプ)」を2019年3月8日(金)にHonda Dreamより発売します。
今回、VFR800Fの気品漂う上質なスタイリングには、1980年代に米国のレースシーンで活躍した「VFR750F インターセプター」※2を想起させるカラーリングのパールグレアホワイト(ストライプ)を新たに採用。サイドカウルに「INTERCEPTOR」ロゴを配するとともに、フレームにシルバー、ホイールにはパールホワイトの塗装を施すことで、スポーティーなイメージをより高めました。
VFR800Fのカラーバリエーションは、新色のパールグレアホワイト(ストライプ)と従来色のヴィクトリーレッドの全2色を設定。VFR800Xのカラーリングは、現行色のキャンディープロミネンスレッド1色の設定としています。
また、従来から標準装備されているETC車載器を、今後もさまざまな情報提供などが予定されているETC2.0車載器にバージョンアップしています。
※1 ETC2.0を使用するにあたり、セットアップ、セットアップ費用および決済用のETCカードが必要となります
※2 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・V型4気筒750ccエンジンを搭載したロードスポーツバイクとして、1986年に北米地域で発売
- ●販売計画台数(国内・年間)
- VFR800F 350台
- VFR800X 150台
- ●メーカー希望小売価格(消費税8%込み)
- VFR800F ヴィクトリーレッド 1,419,120円(消費税抜き本体価格 1,314,000円)
- VFR800F パールグレアホワイト(ストライプ) 1,494,720円(消費税抜き本体価格 1,384,000円)
- VFR800X キャンディプロミネンスレッド 1,473,120円(消費税抜き本体価格 1,364,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
★主要諸元
車名型式 | 2BL-RC79〈2BL-RC80〉 | |
---|---|---|
VFR800F〈VFR800X〉 | ||
発売日 | 2018年12月14日/2019年3月8日〈12月14日〉 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.140×0.750×1.210〈2.190×0.870×1.385〉 | |
軸距(m) | 1.460〈1.475〉 | |
最低地上高(m)★ | 0.135〈0.165〉 | |
シート高(m)★ | 0.809/0.789(ローポジション)〈0.835/0.815〉 | |
車両重量(kg) | 243〈246〉 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※3 | 28.7〈27.4〉(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時※4) | |
19.2(WMTCモード値★ クラス3-2 1名乗車時)※5 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | 3.2〈2.8〉 | |
エンジン型式 | RC79E | |
水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 781 | |
内径×行程(mm) | 72.0×48.0 | |
圧縮比★ | 11.8 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 79[107]/10,250 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 77[7.9]/8,500 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI] | |
始動方式★ | セルフ式 | |
点火方式★ | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |
潤滑油方式★ | 圧送飛沫併用式 | |
潤滑油容量(L) | – | |
燃料タンク容量(L) | 21〈20〉 | |
クラッチ形式★ | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.846 |
2速 | 2.062 | |
3速 | 1.578 | |
4速 | 1.291 | |
5速 | 1.111 | |
6速 | 0.965 | |
減速比1次/2次 | 1.939×2.687 | |
キャスター(度)★ | 25°30′〈26°30′〉 | |
トレール(mm)★ | 95〈103〉 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C 58W |
後 | 180/55ZR17M/C 73W | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム式(プロリンク) | |
フレーム形式 | ダイヤモンド(アルミツインチューブ) |
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)■製造事業者/本田技研工業株式会社
※3 燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※4 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※5 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます