2018年11月28日

第63湯:青森三半島湯巡りツーリング(其の三)

MBFCC-B1 毛野ブースカ 湯めぐりみしゅら~ん

 本州最北端でありマグロ漁で有名な大間町で迎えた青森三半島湯巡りツーリング3日目の朝。今日は大間町から津軽海峡側を南下し、下北半島一周の旅を完了し、夏泊半島を走り、青森市の近くにある浅虫温泉で宿泊する予定だ。午前8時00分、サンホテル大間を出発。海岸線沿いに国道338号線を大湊方面に向けて進む。昨日走った太平洋側にある国道338号線の六ヶ所村付近とは違って穏やかな海岸線が続く。天気も快晴で、平日の朝にもかかわらず交通量は少なくてとても快適。
 国道338号線は多少のアップダウンと入り江のような場所が混じりあい、海岸沿いからちょっと離れて山沿いに入ると、六ヶ所村付近で遭遇したようなストレートな道が出現する。小さな漁村が連続するようなのんびりした風景を想像していたが、それとは対照的なダイナミックな風景の中を走れるのは嬉しい。やがて名勝である願掛岩を過ぎ、仏ヶ浦を見学しようかと思ったが、駐車場から片道20分ほどかかるので今回はパス。

国道338号線

大間町を出発して国道338号線を進んで山沿いに入ると、予想とは裏腹にこんなストレートな道が出現する。交通量は極めて少ない。

国道338号線

国道338号線をさらに進むと雄大な景色が広がる。周囲は人家はほとんどなく、海岸沿いからすぐに山あいになるのがわかる。

 仏ヶ浦を過ぎると内陸部に向かう県道253号線と、陸奥湾に面した脇野沢方面に向かう海峡ラインに分かれる。県道253号線を進んだ先にある「ふれあい温泉川内(かわうち)」に行きたいが、下北半島制覇のためにちょっと遠回りすることにした。海峡ラインに進んで脇野沢まで行き、そこから国道338号線を大湊方面に向かう。県道46号線に差し掛かったところで佐井村方面に20分ほど進み、当初の目的地である「ふれあい温泉川内」に到着した。「ふれあい温泉川内」は青森県むつ市川内町家ノ辺にある日帰り入浴施設だ。料金は380円。周辺を山に囲まれた閑静な場所だ。浴室は小さめだが、内風呂のみで湯船は広め。湯船は低温と高温があり、低温は適温だが高温は熱め。やや黄味がかった優しいお湯は朝風呂にはちょうどいい。

ふれあい温泉川内

国道338号線からショートカットせずに遠回りして向かった「ふれあい温泉川内」。下北半島の山間部にひっそり佇む温泉だ

スズメバチ

「ふれあい温泉川内」でヘルメットを被ろうとしたら、なんとスズメバチがダクト部分に突っ込んで死んでいた。バイザーを開けていたら顔面直撃だったかも…。

 外に出ると東京に比べると暑くはないが、だんだんと日差しが強くなってきた。ここから県道46号線を引き返して国道338号線に戻る。国道338号線に戻ったところで、右側に陸奥湾を望みながら大湊方面に進む。やがて海上自衛隊の施設が目に入ってきたことで大湊に着いたことがわかった。時間は午後0時、ちょうどお昼時だったが、むつ市内にある「むつ矢立(やたて)温泉」に入ってから昼食を食べることにした。国道338号線から昨日走った県道4号線へ延びる県道174号線に入り、県道4号線と交わる手前の山あいに目的地はあった。
 「むつ矢立温泉」は青森県むつ市矢立山にある日帰り入浴施設だ。入湯料は450円。入口には旭日旗が掲げられており、かつての軍港の面影を感じる。館内は1日目に入った三沢市の太郎温泉に似た銭湯のような作りで、扉近くには番台らしき跡がある。内風呂のみで広いが、ちょっと鉄臭のする白濁したお湯は熱くて、なかなか湯船に浸かれない。地元の方も熱いせいか湯船の周囲で休んでおり、家庭用の湯船をカスタムしたと思われる水風呂が活躍している。汗だくになりながらお湯から上がった。

むつ矢立温泉

旭日旗が玄関先にはためいている「むつ矢立温泉」。湯船に浸かれないほどお湯は熱めで、熱さに慣れるのに時間がかかる。

 「むつ矢立温泉」を出て国道338号線に戻り、昼食先をスマホで検索していたところ「むつ市観光交流センター北の防人(さきもり)大湊安渡館カフェテリア憩—ikoi—」(以下北の防人大湊)で大湊海軍カレーが食べられるとの情報を発見。せっかくなので北の防人大湊に行ってみることにした。国道338号線から住宅が建ち並ぶ山あいに少し入った海上自衛隊大湊基地を見下ろす高台に北の防人大湊はあった。
 館内に入ると右側が安渡館カフェテリア憩—ikoi—で、左側のホールのような場所ではなにかの集まりなのか、制服姿の海上自衛官が大勢食事をしていた。安渡館カフェテリア憩—ikoi—も大勢のお客さんがいて人気があるようだ。席についてメニューを見ると「護衛艦はまぎりのテッパンカレー(大湊海自カレー)」と「大湊海軍カレー」がある。どうやら両方が食べられるのはここだけらしいが、やはりここは1日限定20食のテッパンカレーをいただくことにした。出てきたカレーは、カレーと牛乳や大湊海軍コロッケ、サラダ、オレンジがトレー(これがテッパンの由来らしい)に載せられており彩り豊か。カレーはコクがある気取らない、ほどほどの辛さなので、おかわりできたら何杯でもいけそう。ビン入りの牛乳があるとちょっと給食気分だ。

大湊海自カレー

安渡館カフェテリア憩—ikoi—で食べた「護衛艦はまぎりのテッパンカレー(大湊海自カレー)」(1日限定20食1200円)。牛乳やコロッケ、サラダがついており、まるで給食のようだ。

むつ市観光交流センター北の防人

「むつ市観光交流センター北の防人大湊」の展望台から海上自衛隊の大湊基地が見渡せる。この日も巡視船のような船が停泊していた。

 海上自衛官気分に浸ったところで次の目的地に向けて進む。国道279号線を進んでさらに南下する前に、むつ市内から近い高台にあるむつグランドホテルの敷地内にある「斗南温泉美人の湯」に入ることにした。「斗南温泉美人の湯」はむつ市大字田名部字下道4にある日帰り入浴できるホテルの温泉棟だ。入湯料は550円。ホテルに併設されているだけあって館内はキレイで浴室、湯船も広々している。露天風呂もあり、こちらも広い。お湯はやや茶系で、ちょっとヌルスベ感があり、適温で入りやすい。昔ながらの風情ある共同浴場とはひと味違った、ゆったりくつろげる温泉だ。

斗南温泉美人の湯

むつグランドホテルの敷地内にある「斗南温泉美人の湯」。むつ市内からも近く、また施設も充実している。お湯も良質だ。

 「斗南温泉美人の湯」をあとにして、国道279号線を南下し、右側に陸奥湾を時折見ながら下北半島のくびれた部分を走る。2時間弱かけて昨日走った六ヶ所村や三沢市に近い野辺地町に到着。2日間かけて下北半島を反時計回りに一周することができた。地図で見るよりもなかなかの距離があった。
 下北半島一周を完了し、あとは浅虫温泉を目指すだけなのだが、まだ時間があるので、浅虫温泉に向かう途中にある「平内いきいき健康館(よごしやま温泉)」と夏泊半島に向かった。野辺地町から国道4号線を青森市内方面に進み、夜越山が近づいたところで夜越山方面に入る小道を進んだところに目的地はあった。
 「平内いきいき健康館(よごしやま温泉)」は青森県東津軽郡平内町大字浜子字堀替にある日帰り入浴施設だ。入湯料は420円。地元の方たちが大勢集まっている。内風呂のみだが浴室は広々としている。低温浴槽は広いが、高温浴槽は小さめ。お湯は無色透明で、お湯加減はちょうどいい感じ。むつ市から走りっぱなしだったので、しばし休憩した。
 「平内いきいき健康館(よごしやま温泉)」を出て夏泊半島を巡る。当初、夏泊半島はルートには入っておらず、サンホテル大間でツーリングマップルを見て「あ、こんなところがあるなら走っておこう」と直前になって決めたのだ。実はこの決定が大正解だったと気づいたのは、夏泊半島を走った後だった。

菜の花ソフトクリーム

国道279号線沿いにある道の駅よこはま「菜の花プラザ」で食べた「菜の花ソフトクリーム」。この道の駅がある横浜町は菜の花の作付け日本一だという。

平内いきいき健康

夏泊半島の入口近くにある国道4号線から夜越山方面に入ったところにある「平内いきいき健康館(よごしやま温泉)」。地元の方に人気の温泉だ。

 国道4号線から県道9号線に入り、交通量の少ない海沿いの道を走る。周囲には人家はなく、海が間近に見えてとても気持ちいい。写真を撮ろうと停車してエンジンを切った瞬間、まったく音がしない「無音」の世界が広がった。そのあまりの静寂さに言葉を失った。そこはまさに「夏が止まった(夏泊)」かのような瞬間だった。陸奥湾に沈み行く夕日を見て、久々に感動してしまった。夏泊崎の近くにある歩いて渡れる大島に立ち寄り、快適な県道9号線を走って国道4号線に戻った。
 私もいろいろな場所を訪れているが、こんなに素晴らしいところはめったにない。観光スポットが少ないために紹介されないのだろうが、逆にそれがいいのかもしれない。ツーリングマップル東北に賀曽利隆大先輩が「夏泊半島に寄り道しよう。時間がとまったかのよう」と書いてあるが、まさにそのとおり。ぜひみなさんも訪れてほしい。

夏泊半島

想定外の素晴らしい場所だった夏泊半島。目の前に広がる陸奥湾の向こうには下北半島、その先には北海道も見える。このカットを撮れただけで夏泊半島に来た甲斐があった。

大島

夏泊崎の近くにある大島。鳥居の先に道があり、歩いて島に渡れる。短い時間だったが、夏泊半島で過ごした時間はまさに夏の思い出だ。

 夏泊半島を走った感動の余韻を残しつつ国道4号線を青森市内に進んで浅虫温泉に向かう。浅虫温泉は以前(2010年)入湯しており、今回はノーカウント。浅虫温泉で選んだ温泉宿は「ホテル秋田屋」。朝食のみなので、近くにある道の駅で夕食を済ませてから宿に向かった。宿は6階建てで、国道からもわかりやすい。通された部屋は和室で陸奥湾に面しているので眺めもいい。6階にある大浴場からも陸奥湾が一望できる。露天風呂は小さめだが、ゆっくりくつろげる。お湯は無色透明で湯量は豊富。さすが青森県でも屈指の温泉地だ。
 翌朝、もちろん朝風呂に入る。今日も天気が良さそうだ。朝食はたくさんの料理がお膳にのせられた温泉宿らしい豪華なもの。バイキング形式もいいが、温泉宿ならお膳のほうがいい。お腹がいっぱいになったところで出発。4日目はいよいよ津軽半島を巡る。途中、外ヶ浜町近くに住む知人のところに立ち寄った後、龍飛崎を見学して日本海沿いを走り、つがる市付近で宿泊予定だ。さあ、どんな景色が待ち受けているのやら…。

ホテル秋田屋

浅虫温泉での宿泊先は「ホテル秋田屋」。6階にある大浴場の広さと眺望はなかなかだった。泊まっていることをいいことについ長湯してしまった。

朝食


●ブースカ的独断温泉評価(5段階評価)


ふれあい温泉川内

★★★★★

下北半島の山あいにある隠れ家的な日帰り温泉。


むつ矢立温泉 

★★★★★

地元の方も魅了するクセになりそうな熱めのお湯。


斗南温泉美人の湯 

★★★★

ホテルに宿泊して楽しみたい高台に沸く温泉。


よごしやま温泉 

★★★★★

浅虫温泉とともに夏泊半島を訪れた際に入りたい。


※あくまで個人的な評価ですので、ご参考までに。

毛野ブースカ

月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は790湯。湯巡りツーリングの相棒はホンダ・400X。ちなみにマイカーはスズキのエスクードだ。

ブースカ

[第62回][第63回][第64回]
[湯めぐりみしゅら〜んバックナンバー目次へ](※PC版に移動します)
[バックナンバー目次へ](※PC版に移動します)