2018年11月5日
Vol.150 第18戦マレーシアGP Fire and Water
今回も予測不能で劇的な展開が待ち受けていたマレーシアGPでありました。優勝したマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、今季9勝目。この勝利により、ホンダはコンストラクターズタイトルを確定させた。2010年以降は2011~14、16~18とこれで7回目の王座獲得。圧倒的な強さである。残るはチームタイトルだが、現在、Repsol Honda Teamは2番手のMovistar Yamaha MotoGPに対して39ポイント差。これも次戦の最終戦、バレンシアGPで決定することはまず間違いないだろう。
「いや、べつに」とマルケス。
「スズキはとても良く走っているし、彼らはアラゴンからとてもいい調子だから、べつに驚きはしないよ。バイクの性能はとても良くて、旋回が非常に優れている。トップスピードはウィークポイントかもしれないけど、グリップがいいから加速もいいね」
とライバルの高い戦闘力を率直に評価した。
決勝レースでもまさにそのとおりのパフォーマンスを発揮して、りんちゃんは2位表彰台を獲得。
「僕が今年4回目の表彰台で、アンドレア(・イアンノーネ)も4回だから、スズキはこれで8回目の表彰台。来年に向けて良いデータを集められているので、来年は皆と互角に戦いたい」
彼らの戦闘力はいつ頃から、どんな風に向上してきたのか、ということについては、
「アッセンでニューエンジンが来てから、上のパワーがでるようになったので、スリップストリームを使ってヤマハやホンダとストレートでも戦えるようになった。あとは自分自身の経験が増して、タイヤのコントロールや制御の扱いに慣れてきたこと。それらの組み合わせだと思う」
と述べた。これでスズキは、今回のフライアウェイ3戦全戦で表彰台を獲得した。ツインリンクもてぎ、フィリップアイランド、そしてセパンと、特性や環境条件の異なるこれら3コースすべてでパフォーマンスが良いという事実は、来季に向けてライダーとチームの士気がさらに上がることだろう。
レース後のドヴィツィオーゾは、決勝レースで1周目から思ったようには走れなかったことを認めたうえで
「ここはたしかに僕たちにはいいコースだけど、自分たちが去年と一昨年に2回勝ったのはウェットだった、ということを皆が忘れているんだ」
と説明した。が、予選までは上々だったにもかかわらず、決勝で苦戦してしまったことについては
「プラクティスとレースの差が大きかったのは、何がどうだったとかこれが原因だったと軽々には言えないけど、きっと何か(理由)があったんだろう。技術的な問題だと思う。いったい何が問題だったのか、あるいは自分たちはこのコースでこのコンディションだとこれが限界なのか。それをしっかりと見極めなければならない」
と、いつものように冷静な口調で振り返った。
ウィーク初日の金曜は、2台のマシンのうち一台に、ファクトリーチームやチームメイトのヨハン・ザルコと同じ仕様のエアロフェアリングが装着されていた。この日は総合18番手タイムで、セッション終了後に彼に初日のインプレッションを訊ねてみたところ、
「得意コースでも、たまにはそういうこともあるよ」
と、やや苦笑気味の返事。どこに問題があるのか、重ねて訊ねてみると、
「思ったように止まれないんだ。タイヤをハード、ミディアム、ソフトに変えてみてもあまり変化が感じられない。今朝は立ち上がりが問題だったので、午後はフロントフォークを硬くしてみたら、立ち上がりがあまり改善しないまま進入も厳しくなってしまった。明日はよい妥協点を探り出したい」
とのことだった。エアロフェアリングの印象に関しては
「ストレートでだいぶ助かる。立ち上がりでもフロントがしっかり接地してくれるので、新しいフェアリングは、かなり気に入っているよ」
と述べた。じっさいに二日目の走行では、午前のFP3で2台ともが最新エアロフェアリング仕様になっていた。ホームGPのライダーを支えようとするチームの心遣いと心意気が感じられるようなアップデートである。
ここまで彼が感極まったのは、Moto3の決勝レースで大健闘した同郷の後輩、アダム・ノロディン(Petronas Sprinta Racing)の活躍があったからなのだとか。
「ピットレーンスタートだったアダムが、最後尾からトップグループまで追い上げてきた。気迫に満ちた彼の走りをサインボードゾーンで見ていると、涙が出てきたよ。アダムがクラッシュしたときは、まるで自分のことみたいに悔しかった。そして、僕の決勝レース前には父がグリッドまで来てくれたんだ。だから、今日は持てる力の限り、ベストを尽くそうと思った」
その結果、「リザルトはアルゼンチンに及ばなかったけど、内容面では間違いなくMotoGPでのベストレースになった」と言い切れる走りを披露した、というわけだ。
今回も、見どころ満載でじつに見応えのあるレースでした。
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■2018年11月04日 |
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順位 | No. | ライダー | チーム名 | 車両 | ||||
1 | #93 | Marc MARQUEZ | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
2 | #42 | Alex RINS | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
3 | #5 | Johann ZARCO | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
4 | #25 | Maverick VIÑALES | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
5 | #26 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
6 | #4 | Andrea DOVIZIOSO | Ducati Team | DUCATI | ||||
7 | #19 | Alvaro BAUTISTA | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
8 | #43 | Jack MILLER | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
9 | #9 | Danilo PETRUCCI | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
10 | #55 | Hafizh Syahrin | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
11 | #41 | Aleix ESPARGARO | Aprilia Racing Team Gresini | APRILIA | ||||
12 | #21 | Franco Morbidelli | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
13 | #6 | Stefan BRADL | LCR Honda CASTROL | HONDA | ||||
14 | #30 | Takaaki NAKAGAM | LCR Honda IDEMITSU | HONDA | ||||
15 | #38 | Bradley SMITH | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
16 | #12 | Thomas LUTHI | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
17 | #10 | Xavier SIMEON | Reale Avintia Racing | DUCATI | ||||
18 | #46 | Valentino ROSSI | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
19 | #45 | Scott REDDING | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | ||||
RT | #44 | Pol ESPARGARO | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
RT | #51 | Michele PIRRO | Ducati Team | DUCATI | ||||
RT | #17 | Karel ABRAHAM | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
RT | #29 | Andrea IANNONE | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
※西村さんの訳書『マルク・マルケス物語 -夢の彼方へ-』は、ロードレース世界選手権の最高峰・MotoGPクラス参戦初年度にいきなりチャンピオンを獲得、最年少記録を次々と更新していったマルク・マルケスの生い立ちから現在までを描いたコミックス(電子書籍)。各種インターネット、電子書籍販売店にて販売中(税込 990円)です! https://www.wick.co.jp/static/book/ebook_marcmarquez.html
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