2018年10月29日
Vol.149 第17戦オーストラリアGP I’m Always Chasing Rainbows
今回はいつもと少し違った切り口から始めてみたい。ダニロ・ペトルッチ(Alma Pramac Racing)である。3列目8番グリッドからスタートしたペトルッチは、ビックリするようなロケットスタートを決めてホールショットを奪い、1コーナーでトップに立った。「わあ」と思わせた次の瞬間、バイクが挙動を乱して2コーナー侵入で旋回動作に入れずオーバーラン。そのままグラベルへ「あわわわわ」とコースアウト。転倒は回避したものの、コース上に復帰したときはすでに最後尾で、1周目の前半区間ながらトップとはすでに20秒の差が開いていた。そこから猛追を開始。20番手、18番手、16番手、と少しずつ順位をあげてゆき、後半三分の一に差し掛かるころには、ポイント圏を射程距離に収めた。最後はその集団内のバトルを制し、12位でゴールラインを通過。4ポイントを獲得して「ほお」と感心させた。なんというか、ペトルッチ的にはある種ムダに振幅の大きいレースになってしまったわけだが、オープニングラップの2コーナーで大きく挙動を乱したのは、突っ込み過ぎて止まれなかったとかタイヤが滑ったとかいうことではなく、じつはクラッチに問題があったのだとか。外から見ていただけではなかなかわからないものですね。それにしてもこのトラブルがなければ、オーストラリアGPのレース展開はもっと面白いバトルが繰り広げられていたかもしれない。が、それはあくまでも〈たら・れば〉である。
というわけで、本題に入りましょう。マーヴェリック・ヴィニャーレス(Movistar Yamaha MotoGP)が優勝し、2017年第8戦アッセンでのバレンティーノ・ロッシを最後に勝利から遠ざかり続けていたヤマハの不名誉な記録にようやくストップがかかった。二年越し26戦ぶり(2018年第12戦シルバーストーンは決勝中止)に表彰台の頂点に立ったことで、ヤマハ関係者の皆様はようやく少しはホッとできたかもしれないが、だからといって完全に安堵しきれたわけではないだろう。今回の優勝は、選手たちが昨年来延々と指摘し続けてきた課題に対策を施したことで得た勝利、というわけではないからだ。
ヴィニャーレスは優勝後に「今回の優勝は、自分とヤマハの双方にとって意義が大きい。自分自分に対する自信を喪いかけていたし、ヤマハにとっては、僕は勝てるライダーということを証明できた」と述べているが、「車体は素晴らしいけど、制御とエンジンは改善の余地があるし、やるべきことはまだまだたくさんある」とも指摘している。
途中までトップ争いを繰り広げ、終盤は順位を下げて6位で終わったチームメイトのバレンティーノ・ロッシは加速でスピニングするという相変わらずの課題を抱えてしまい、上記の結果に落ち着いてしまったようだが、今回のヴィニャーレスの優勝はヤマハにとって朗報という一方で、
「まだ今後も継続して取り組みを続けていく必要がある。長い間同じ問題を抱え続けているので、原因を究明して改善方法を探っていかなければならない」
と話した。
サマーブレイク後のシーズン後半戦レッドブルリンクで、プロジェクトリーダーの津谷晃司氏がYZR-M1の苦戦状況に関して我々メディアの面前で選手へ公開謝罪をしたことは、当時、大いに話題を集めたが、オーストリアGPのこの謝罪がオーストラリアGPで功奏した、というわけでもあながちなさそうだ。ともあれ、残りの2戦でヤマハ陣営がライバル勢に対してどこまで拮抗できるのか、ということはシーズン最終盤の大きな注目の的ではあるだろう。
2位はアンドレア・イアンノーネ(Team SUZUKI ECSTAR)。自身は今季4回目、スズキとしてはシーズン7回目の表彰台である。レース後にイアンノーネは、序盤と終盤にそれぞれ4コーナー(ちなみにこの区間はかつてホンダヘアピンと呼ばれていたのだが、現在はもうその呼称は用いられていないようである)でミスをしてしまったため、ヴィニャーレスにくらいつくことができなかった、と話した。ヴィニャーレスが後続を引き離しかけたときにリスクをとってついて行けば、その後の展開次第では勝てる可能性も見えていただけに、惜しい気もするが、まあ、それもまた〈たら・れば〉である。今週末のセパンでどれだけ健闘するかも見ものだが、次にスズキの優勝可能性が高そうな場所は、コースレイアウト的にもコンディション的にも、最終戦のバレンシアだろうか、という気もしないではない。
というわけで、次回は3週連戦の3戦目、セパンサーキットのマレーシアGPである。フィリップアイランドでは、マレーシア初の最高峰クラス参戦選手ハフィス・シャーリン(Monster Yamaha Tech3)が、ルーキーながら土曜の予選でQ2へダイレクト進出し、日曜の決勝レースではスタート位置からさらに順位を上げて8番手を走行していたので、「これはレースが終わったらハフィスに話を訊きにいかなきゃなあ……」とレース中に思っていたのだが、その矢先の19周目に4コーナーで転倒し、リタイア。結局、彼のコメントは取りにいけませんでした。とはいえ、今週末のレースでは彼に対する期待は相当なものだろうし、観客動員もここ数年のマレーシアのMotoGP人気に加えて最高峰クラス参戦選手の登場だから、ものすごい人出になることも予想される。マレーシア特有の驟雨に見舞われるようなことにでもなろうものなら、雨を得意とするシャーリンには願ったり叶ったりの状況になってしまうかもしれない。
さらにここ10年のマレーシアGPを振り返ると、最も優勝回数の多い選手は、じつはあと2戦で現役活動を引退するダニ・ペドロサ(2012、13、15)であったりする。そのあたりにもしっかりと目配りをしながら、今週末はレースを観戦することといたしましょう。では、ナシレマによろしく。
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■2018年10月28日 第17戦 オーストラリアGP フィリップアイランド・サーキット |
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順位 | No. | ライダー | チーム名 | 車両 | ||||
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1 | #25 | Maverick VIÑALES | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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2 | #29 | Andrea IANNONE | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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3 | #4 | Andrea DOVIZIOSO | Ducati Team | DUCATI | ||||
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4 | #19 | Alvaro BAUTISTA | Ducati Team | DUCATI | ||||
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5 | #42 | Alex RINS | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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6 | #46 | Valentino ROSSI | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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7 | #43 | Jack MILLER | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
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8 | #21 | Franco Morbidelli | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
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9 | #41 | Aleix ESPARGARO | Aprilia Racing Team Gresini | APRILIA | ||||
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10 | #38 | Bradley SMITH | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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11 | #17 | Karel ABRAHAM | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
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12 | #9 | Danilo PETRUCCI | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
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13 | #45 | Scott REDDING | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | ||||
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14 | #30 | Takaaki NAKAGAM | LCR Honda IDEMITSU | HONDA | ||||
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15 | #10 | Xavier SIMEON | Reale Avintia Racing | DUCATI | ||||
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16 | #12 | Thomas LUTHI | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
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17 | #81 | Jordi TORRES | Reale Avintia Racing | DUCATI | ||||
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18 | #7 | Mike JONES | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
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RT | #44 | Pol ESPARGARO | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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RT | #55 | Hafizh Syahrin | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
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RT | #26 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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RT | #93 | Marc MARQUEZ | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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RT | #5 | Johann ZARCO | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
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