2018年11月2日
第62湯:青森三半島湯巡りツーリング(其の二)
青森三半島湯巡りツーリング2日目。いよいよ私にとって未踏の地であった下北半島を制覇する時が来た。下北半島は地図で見るとなかなかの面積がある。三沢市から2日間かけて三沢市に隣接する野辺地町近辺まで戻ってくる予定だ。道の具合がわからないので、今日は大間町まで向かい、宿泊先は成り行きで決めることにした。
午前8時30分に小川原湖半キャンプ場を出発して、国道338号線に出る。天気は曇りだが、雨は大丈夫そうだ。ここからは国道338号線と県道248号線をひたすら進んで北上することになる。地図を見ればわかるが、太平洋側の突端である尻屋崎灯台まではほぼ直進。道幅も広く、車の往来も少ないので、スピードの出し過ぎに気をつけながら進む。辺りは人家はほとんどなく、どこか寂寥感が漂う。国道338号線沿いを進むと六ヶ所村に入った。六ヶ所村と言えば、原子燃料サイクル施設、少し先の東通村には東北電力東通原子力発電所があるところとして知られている。また、途中には陸上自衛隊の射爆場もある。下北半島のスケールの大きさが垣間見える。本州とは思えないストレートな国道338号線をひたすら走る。
やがて、むつ市方面に向かう国道338号線に別れを告げて、尻屋崎と大間町方面に向かう県道248号線に入る。尻屋崎手前で県道172号線を大畑町方面に向かい、津軽海峡に差し掛かったところで右折して県道6号線を尻屋崎灯台方面に進む。左手に津軽海峡を見ながら数キロほど進んだところに尻屋崎灯台があった。小川原湖半キャンプ場を出発して2時間30分ほどで到着したが、時間以上に走った感じがした。駐車場から灯台に向かうと、この地域に放牧されている天然記念物である寒立馬(かんだちめ)が出迎えてくれる。灯台から太平洋を眺めて一服した後、県道6号線を戻り、大畑町・むつ市方面に進む。次なる目的地はみなさんご存知の恐山だ。
県道6号線を走っていったんむつ市に入り、そこから恐山方面に向かう県道4号線(県道むつ恐山公園線)を進む。恐山に近づくにつれて森林から地肌が見える荒涼とした風景が増えてくる。尻屋崎灯台から1時間ほどで恐山に到着した。恐山(恐山霊場、恐山菩提寺)は日本三大霊場(恐山、比叡山、高野山)のひとつに数えられており、恐山菩提寺に向かう途中にある別名「三途川(さんずのかわ)」(正津川)と太鼓橋、恐山の眼前に広がる宇曽利山湖周辺は「賽(さい)の河原」として知られている。また、イタコ(死者の霊を呼び寄せて自分の憑依させ、霊の代わりに語る「口寄せ」を行なう人たち)がいることでも有名だ。
入山料500円を払って境内に入る。総門をくぐった瞬間から他の神社仏閣とは異なる空気が漂っている。本尊安置地蔵殿で手を合わせた後、左側にある木々のない岩山(無間地獄)に向かう。途中には風車(かざぐるま)がたくさん差されており、あたりには何とも言えない独特な雰囲気が立ち込める。ところどころ岩の隙間から煙が吹き出ている。頂上まで登ると宇曽利山湖が見渡せる。さらに奥に進むと「血の池地獄」や賽の河原があるのだが、時間が限られているので引き返した。
と、ここで恐山観光は終わりではない。恐山に来た本当の目的は他にもあるのだ。実は恐山菩提寺には温泉があるのだ。恐山菩提寺を訪れたことのある玉井カメラマンが「恐山にある温泉は眠くなるんだ。入った後、眠くて仕方なかったよ」と聞かされていて、温泉好きとしてはどうしても入ってみたかったのだ。恐山菩提寺には4つの湯(薬師の湯、古滝の湯、冷抜の湯、花染の湯)があり、入山料を払えば(つまり入湯料500円)誰でも入湯できるのだ。今回は山門から本尊安置地蔵殿に向かうメインストリートの右側にある「薬師の湯」(男性のみ)に入ることにした。
写真を見ていただけるとわかるが、境内にポツンと建っており、囲われているものの入湯するのは抵抗がある。そのためか参拝者が多いわりには誰も入っていない。ここぞとばかりに中に入った。風情ある木張りの浴室には2つに区切られた縦長の湯船がある。白濁した硫黄泉が注がれており、湯温はちょっと高め。長湯禁止と書かれているので、ほどほどにして出た。私が出た後、外から「あ、この温泉入れるんだ!」と聞こえた。確かにそういう言葉が出る気持ちもわかる。
目的を達成して恐山を後にした。大間町に向かう前に、県道4号線から県道264号線方面に向かって「奥薬研温泉」に入ることにした。ちなみにその後、玉井さんのように眠くならなかったので、玉井さんは「薬師の湯」以外の温泉に入ったのかもしれない。恐山から30分ほどで奥薬研温泉に到着した。奥薬研温泉には有料の「夫婦かっぱの湯」と無料の「かっぱの湯」があり、今回は「夫婦かっぱの湯」に入ることにした。
「夫婦かっぱの湯」は青森県むつ市大畑町にある奥薬研レストハウスに併設されている日帰り入浴施設だ。入湯料は250円。男女別の露天風呂のみだが、川を望む湯船は開放感があり、広くて気持ちいい。お湯は肌に優しい無色透明。湯温はちょっと高めだが、あまりの心地よさについ長湯したくなる。東北らしい良泉に巡り合った気分だ。
奥薬研温泉に入ったところで時間は午後1時40分。ここまで極めてスムーズに進んでいる。いよいよ大間町を目指すのだが、その前に津軽海峡沿いにある「下風呂温泉」に入ることにする。県道4号線を国道279号線方面に進み、国道279号線に出たら大間町方面に向かう。右手に穏やかな津軽海峡を見ながら走る。奥薬研温泉から1時間ほどで下風呂温泉に到着した。
下風呂温泉は津軽海峡に面した青森県下北郡風間浦村にある温泉郷だ。「大湯」と「新湯」という2つの共同浴場があり、「大湯」は定休日だったので、温泉街の坂道を登ったところにある「新湯」に入ることにした。入湯料は350円。鄙びた感じの木造作りの建物は、温泉街にある典型的な共同浴場だ。それほど大きくはない湯船には、やや硫黄臭のするちょっと熱めの源泉が淡々と注がれている。入っていると時が経つのを忘れてしまう、そんな実に私好みの共同浴場だ。
滴る汗を拭いながら駐車場に戻る途中、町を横切るように設置された陸橋が目に入った。行ってみると「下風呂温泉メモリアルロード」と書いてある。後で調べたところ、第二次世界大戦時に工事が中断し、未成線となった幻の「大間鉄道」の跡だった(ちなみに現在、鉄道で行けるのはむつ市大湊までとなっている)。駐車場に戻り、大間町に向けて再び国道279号線を走る。この区間も交通量が少なくてスムーズ。気温もそれほど高くなく実に快適。下風呂温泉から走ってちょうど1時間で本州最北端の大間崎に到着。大間崎からは北海道がうっすらと見える。「ここ本州最北端の地」と書かれた碑の前で記念撮影。下北半島をバイクで巡る夢の半分が達成できた。
さて、今宵の宿をどうするかだが、大間町は宿が少ない。スマホで検索したところ「サンホテル大間」というビジネスホテルがあることが判明。電話したところ空室ありとのことなのでここに決めた。宿が決まったところで本州最北端にある温泉「おおま温泉海峡保養センター」に向かうことにした。「おおま温泉海峡保養センター」は青森県下北郡大間町にある宿泊可能な温泉施設だ。入湯料は380円。浴室はかなり広々としており、ゆったりくつろげる。海に近いためか、やや塩気のある熱めのお湯が注がれている。かなり走ったわりには4湯も入浴できた。成果としては上々だ。
「おおま温泉海峡保養センター」を出て、町役場の近くにあるサンホテル大間に向かった。チェックイン後、大間町と言えばまぐろが有名なのでマグロ丼などを食べようと思い町を散策してみたが、どこも休業だったのでホテルに戻り、ホテル内の食堂でマグロ丼をいただいた。さすがに疲れたのか夕食を食べたら眠くなり、早めに寝てしまった。
翌朝、天気は快晴。せっかくなので大間港まで散歩に行ってみることにした。フェリーターミナルには大間・函館間を結ぶ「津軽海峡フェリー」が停泊している。いつかはこれに乗船して函館まで行ってみたいものだ(大間町まで来るが大変だが…)。港は誰も歩いておらず、のんびりとした朝の空気が流れる。ホテルに戻って朝食を摂り、装備を整えてホテルを出発。3日目は大間町から津軽半島側の国道338号線を南下し、海上自衛隊の基地がある大湊を通過。下北半島のくびれた部分の左側にある国道279号線を走って夏泊半島、そして浅虫温泉まで向かう予定だ。さて、どうなることやら…。
●ブースカ的独断温泉評価(5段階評価)
恐山温泉「薬師の湯」
★★★★★
意外な場所で入れる温泉は入湯の価値あり。
奥薬研温泉「夫婦かっぱの湯」
★★★★★
下北半島の奥深さを体感できる良質な湯。
下風呂温泉「新湯」
★★★★★
共同浴場の雰囲気と源泉をたっぷり味わえる。
おおま温泉海峡保養センター
★★★★★
大間町に来たら入っておきたい最北端の湯。
※あくまで個人的な評価ですので、ご参考までに。
毛野ブースカ
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