2018年10月22日
Vol.148 第16戦日本GP If You Don’t Give Me What I Want
予想どおり、ということになるのだろうか。
ツインリンクもてぎで開催された第16戦日本GPで、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)がシーズン8勝目を挙げ、2018年の年間総合優勝を確定させた。
前戦のタイGP、ブリラムのチャーン・インターナショナルサーキットでは、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(Ducati Team)を相手にまたしても最終ラップの最終コーナーまで続くバトルを展開し、それまでは三回連続して立ち上がりを制されていたマルケスが、四回目の状況では攻守を逆転させてドヴィツィオーゾにわずかに先んじてチェッカー。マルケス優勝、ドヴィツィオーゾ2位となったことにより、日本GPでのチャンピオン確定可能性ががぜん注目されることになった。
だが、マルケスはこのレースを終えたときに「もてぎはドビが速いので、加速やブレーキングスタビリティ等の面でもう少しバイクを煮詰めて行かないと彼には勝てないと思う」と話していた。ドゥカティが加速面で圧倒的な強さを誇るのは周知の事実で、しかもドヴィツィオーゾはハードブレーキの強さでクラス一、二を争う猛者である。
さらに、ツインリンクもてぎは最終コーナーを立ち上がってからゴールラインまでの距離が、じつはけっこう長かったりする。話が少し前後することになるが、今回の日本GPでも、最終コーナーを立ち上がるマルケスのRC213Vは、フロントが浮くような場面もあったのに対して、ドヴィツィオーゾのデスモセディチGP18はエアロフェアリングの効果もあってか、ピタリとフロントを接地させて立ち上がっていく姿は、このブリラムでのマルケスの言葉がけっして杞憂ではないことを実証しているかのようだった。
話を少し戻して、ブリラムでのマルケスの上記発言である。なかなか気になるコメントではあったので、今回のもてぎではそこがチャンピオン確定のキーになるだろうと予測をし、連日、その部分に関する質問を彼に投げかけた。
金曜日の走行は、午前こそドライコンディションを維持したものの、午後早い時間に雨が降り、MotoGPのFP2はウェットセッションになった。マルケスは無用なリスクを避けるためか、このウェットセッションではピットを出ずに終え、結局、午前の45分しか実のある走行ができない一日になった。ブリラムで話していた課題の何かヒントや手がかりのようなものはFP1で見つかったのか、と夕刻に彼に訊ねると、
「今のところは、まだだね」
という、この日に関しては想定内のことばが返ってきた。
「明日のFP3では、そこのところを試してみたい。加速とブレーキングスタビリティでもっと高い戦闘力を発揮できるか確認して、ドビと戦えるかどうかを見極めたい。このコースはドビがとても速いからね」
昨年のレースでは、最終ラップ最終コーナーの立ち上がり勝負をドヴィツィオーゾが制している。だが、二週間前のブリラムでは、同じような状況でマルケスが勝利している。今回もそのときと同じような戦略なのか、と訊ねられた際には、
「最終ラップまでもつれ込ませることができればいいね。でも、今はまだ最終ラップに勝負を持って行けるほどの状態じゃない。ドビはペースがとてもいいし、FP1ではミディアムのリアタイヤでセッション最速タイムを記録していた。僕たちのやるべきことはたくさんあるし、今はまだ最終ラップのことまで考えられない。レースでドビにうまくついていければ、最終ラップにチャンスはあるかもしれないけどね」
翌日の土曜日は、レースペースを確認するFP4でマルケスはドヴィツィオーゾよりもコンマ数秒ほどペースが良いようにも見えたが、走行終盤に転倒。その後の予選は6番手で終えた。日曜の決勝レースは、2列目からのスタートである。一方のドヴィツィオーゾはポールポジション。どちらが勝つか即断はできないとはいえ、おそらく翌日のレースはこのふたりの真っ向勝負となるであろうことは容易に想像できた。
セッション終了後の夕刻に、ドビに対抗するための加速やブレーキングスタビリティ面は良くなってきたのか、と、昨日の延長線になる質問を投げかけた。
「昨日はブレーキングスタビリティでかなり不満足だったけど、今日はかなり良くなったよ」
という返事が返ってきた。
「このコースでは、コンスタントに走るためにそこがとても重要だからね。FP4では、その部分を変えて安定して走れるようになったけど、まだちょっと損してる部分もある。それが原因で最後に転んでしまったけど、明日はバイクのキャラクターがぐっと良くなると思う」
そこで、では明日はドヴィツィオーゾに先んじてゴールし、チャンピオンを確定させる自信があるか、とさらにつっこんで訊ねてみた。
マルケスはわずかに一瞬、唇を鳴らして考えるふうを見せたものの、
「そのためにレースしてるんだから明日はがんばるけど、目標は表彰台かな」
と、意外に慎重な回答を返してきた。
「まだレースは残っているし、今回がラストチャンスじゃない。でも、可能性があればもちろんトライするし、攻めてみる。レースになれば勝つことを考えるけど、(ドヴィツィオーゾと互角に)戦えるかどうかは、レースになってから見てみたい。リスクが大きいようなら、表彰台目標に切り替えるよ」
その言葉を聞いて、なるほど、と思ったのだが、じつはマルケスはこの優等生的返答の裏では、「今回ここで決めてみせる」と肚を固めていたようである。というのも、日曜の決勝レースを終えて5回目の最高峰クラスチャンピオンを優勝で飾った後に、こんなふうに話していたからだ。
「アラゴンのあと、ゴールが見えてきたと思ったけど、(安穏とするのは)好きじゃないので、モチベーションを高く保とうと思った。最初のマッチポイントでカタをつけようと心の中で思ったんだ。もてぎで決めよう、ってね。ウィークが始まっていい推移をしなかったけど、FP4を終えて『行ける』と思った。予選はあまりいい内容にならなかったけれども、朝のウォームアップで再確認をして、エミリオ(・アルサモラ:マルケスのマネージャー)、アルベルト(・プーチ:チーム監督)、サンティ(・エルナンデス:マルケスのチーフメカニック)と、いつものようにミーティングをして、レースではどのあたりを走れそうなのか見極めた。勝てる、チャンピオンを獲れる、と確信して、レースでは1周目に集中し、(スタート直後の)混乱をうまく切り抜けてドビの背後につけようと思った」
そして、その狙い通りにマルケスはレースを組み立て、最高峰クラス5回目、中小排気量時代を合わせれば7度目の世界チャンピオンを獲得した、というわけだ。
そして今週末は第17戦のオーストラリア・フィリップアイランドサーキットである。シーズン屈指のハイスピードコースだが、常にバイクが左右どちらかへ傾いているようなこの特徴的なレイアウトでどんなパフォーマンスを発揮するのか観察すれば、各陣営のマシン状況がかなり掴めてきそうである。というわけで、出国します。ではまた。
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■2018年10月21日 第16戦 日本GP ツインリンクもてぎ |
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順位 | No. | ライダー | チーム名 | 車両 | ||||
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1 | #93 | Marc MARQUEZ | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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2 | #35 | Cal CRUTCHLOW | LCR Honda CASTROL | HONDA | ||||
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3 | #42 | Alex RINS | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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4 | #46 | Valentino ROSSI | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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5 | #19 | Alvaro BAUTISTA | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
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6 | #5 | Johann ZARCO | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
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7 | #25 | Maverick VIÑALES | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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8 | #26 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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9 | #9 | Danilo PETRUCCI | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
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10 | #55 | Hafizh Syahrin | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
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11 | #21 | Franco Morbidelli | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
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12 | #38 | Bradley SMITH | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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13 | #44 | Pol ESPARGARO | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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14 | #89 | Katsuyuki NAKASUGA | Yamalube Yamaha Factory Racing | YAMAHA | ||||
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15 | #30 | Takaaki NAKAGAM | LCR Honda IDEMITSU | HONDA | ||||
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16 | #10 | Xavier SIMEON | Reale Avintia Racing | DUCATI | ||||
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17 | #81 | Jordi TORRES | Reale Avintia Racing | DUCATI | ||||
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18 | #4 | Andrea DOVIZIOSO | Ducati Team | DUCATI | ||||
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19 | #45 | Scott REDDING | Aprilia Racing Team Gresini | APRILIA | ||||
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20 | #12 | Thomas LUTHI | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
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21 | #50 | Sylvain GUINTOLI | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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RT | #29 | Andrea IANNONE | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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RT | #17 | Karel ABRAHAM | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
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RT | #43 | Jack MILLER | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
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RT | #41 | Aleix ESPARGARO | Aprilia Racing Team Gresini | APRILIA | ||||
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