2018年10月23日
ハーレーの最新パワークルーザー「FXDR114」豪快奔放な持ち味そのままに スタイリッシュ、器用になった!
■試乗・文:青木タカオ ■撮影:稲森 聡、HARLEY-DAVIDSON JAPAN
■協力:HARLEY-DAVIDSON JAPAN http://www.harley-davidson.co.jp/
ロー&ロングのスタイルはハーレーではお馴染みといったところだが、FXDR114は従来とは少し違う。クリップオン式のセパレートハンドル、短くカットされたシートカウル、倒立フォーク、アルミ製スイングアーム、Vツインに張り出すようセットされたエアインテーク、マスの集中を考えた2in1マフラー、もはや鼓動を感じてノンビリ走ろうという世界観だけではなくなっているようだ。アメリカ・ミルウォーキーで試乗した。
食わず嫌いだった人にも、ぜひ乗ってもらいたい
全身をブラックアウトするダークカスタムは以前からもあったが、FXDR114ではとことん徹底している。かつてのハーレーに見られたクロームパーツや主張するデコレーションは、どこにも見当たらない。もしかしたら「これはどこのメーカーのバイク?」って、見た人に聞かれるかもしれない。「どうだ、ハーレーだぞ!!」っていう誇示する感じがないのだ。
それは絶対的に存在していたアンチ派にも受け入れられるだろう。というのも、独自路線を突き進んできたハーレーは、日欧のオートバイとは車体、エンジン、設計思想からして何もかも違うから“苦手”と感じるライダーが少なからずいる。それはアメリカという土壌がつくっていて、真っ直ぐに続く道を移動しなければならないから、フロント荷重にして前傾姿勢になって乗るオートバイより、どっしりとしたリヤ荷重で、エンジンも高回転ハイパワーより、いかに低回転で太いトルクを発揮し、余裕あるクルージングができるかというところに主眼が置かれる。ユーザーに求められる性能、生まれ育つ環境によって、ハーレーはそうなるべくして進化と熟成を繰り返してきたのだ。
しかしだ。FXDR114はそんな既存路線から抜け、新境地を開拓しようという意図がその装備内容から見てとれる。骨格となるメインフレームは、モノショック式のリアサスペンションを持つ最新ソフテイルフレームで高い剛性と強度を誇り、フロントフォークはSHOWA製のシングルカートリッジ式倒立フォークを過激なハンドリングにならないよう34度と深く寝かせてセット。ホイールはアルミ鍛造製とし、そこにミシュランと共同開発したラジアルタイヤ「スコーチャー11」を履く。
注目はスイングアームで、細くて頼りないものをやめて、ついに新設計のアルミ製がモノショックに組み合わされているのだ。バネ下重量の大幅な重量減により、走らせてみると身のこなしが軽い。ホイールベースは1735mmと現行ラインナップでもっとも長いが、それを感じさせない。
“ギャップ萌え”狙いなのか、ハーレーの公式PVでもドラッグレーサー譲りのスタイルを踏襲していることをアピールしつつも撮影をサーキットでし、コーナリング性能の高さも見せつけている。旋回性能は実際に高く、カーブにさしかかると想像以上にスンナリと車体が寝ていき、拍子抜けするほど。公式スペックでリーンアングルが発表されているが、右32.6度、左32.8度はソフテイルファミリー最大で、ハーレーの中では運動性能の高いスポーツスター・ロードスターより1.7~1.8度深く寝かせることができるから驚く。
たしかに、今までのハーレーならコーナーの度に簡単にステップやフットボード、場合によってはマフラーも路面に接してしまっていたが、FXDRのステップはクルーザー然としたフォワードコントロールながらライダー寄りに高くセットされ、バンクセンサーもしっかり備わっているし、エキパイもフレームより高いところに配置され、サイレンサーにいたってはバンク角を稼ぐためにトライオーバル形状となっているほどだ。
“らしさ”にも磨きをかけている
では、心地良い鼓動を感じながらのクルージングは、もうできないのか……!? いいや、エンジンはよりテイスティさに磨きをかけている。空冷Vツインは相変わらずのOHV式で、排気量は車名が示すとおり114キュービックインチ(1868cc)まで拡大された。ベーシックエンジンが「ミルウォーキーエイト107」(1745cc)というが、そこからスケールアップするとき、ボアアップだけで済まさずストロークも伸ばし(100×111.1mm→102×114.3mm)、ロングストローク設計を維持しているのが、開発陣のこだわりでもある。
高いギアを使って、2000rpmにも満たない低回転域を使ってストリートをゆったり流していると、これぞハーレーのビッグツインと言わんばかりの1つずつの爆発がしっかりと感じられるが、これはエンジンをフレームにリジッドマウントにして実現した。OHVながらツインカムだったパワーユニットをわざわざ1カムシャフトに戻し、全域で低回転化するためにフライホイールの慣性マスを増やし、バルブ数も2→4本化。デュアルスパーク化し、ノッキングを防ぐデュアルノックセンサーを追加するなど、旧いハーレーがそうだったように“心地良さ”を獲得するために最新技術で徹底追求したのだ。
もちろんアクセルをワイドオープンしたときのダッシュ力は凄まじい。前方がクリアになると、意味もなく加速したくなり、さすがは1868ccの大排気量。3500rpmに達すると160Nmを発揮するが、これは直線番長 V MAXの148Nm/6000rpmをも凌ぐ。
なんだかんだで、いつの間にかスペックでも充分なところへ進化しているし、コーナリング性能も侮れない。スタイルも多くの人に受け入れられるようデザインをブラッシュアップし、大排気量クルーザーならではの強烈ダッシュ、ドコドコ言わせて走る心地よさといった“持ち味”はより強烈なものとしている。最新ハーレーFXDR114は豪快奔放なだけでなく、スタイリッシュさや器用さも兼ね備え、全方位へ着実に実力を伸ばしたと言っていい。
(試乗・文:青木タカオ)