2018年10月30日
パート3:いざ、旅へ(2日目)
文&撮影—毛野ブースカ
取材協力─Honda http://www.honda.co.jp/motor/
翌朝、天気は曇り。今回は素泊まりなので、道中で朝食を食べなくてはならない。昨日はまさにゲリラ豪雨に遭遇し、間一髪の中でずぶ濡れを回避した。朝風呂に入り、午前7時00分にホテルを出発。2日目は館林市から埼玉県秩父市に向かい秩父神社を参拝。秩父で有名な豚みそ丼の名店「野さか」で早めの昼食。秩父市から雁坂トンネルを抜けて山梨県甲州市に入って名将・武田信玄の菩提寺である恵林寺を参拝。恵林寺から国道20号線を通り、神奈川県相模原市にある相模湖で記念撮影。国道20号線をずっと走って高尾山や八王子、府中、調布を通過して、都庁を目指すというものだ。昨日よりも走行距離が多いと予想される。
ホテルから国道354号線に向かい、国道354号線から国道122号線に進む。利根川を渡るとすぐに埼玉県の行田市だ。道中、時折雨がパラつき、気温も今までの酷暑に比べれば相当低くなっている。昨日までの天気がウソのようだ。途中マクドナルドで朝マックを食べ、Tシャツにメッシュジャケットでは寒いのでロングスリーブのTシャツを着重ねた。昨日は田園地帯の中を走ったが、今日は幹線道路沿いに住宅が広がる中を進む。
国道122号線から国道125号線に入ってしばらく進み、国道17号線に差し掛かったところで高崎市方面に右折。ほどなくして国道140号線が現れるので、国道140号線を寄居・秩父方面に進む。ここからは山梨県までずっと140号線を走ることになる。朝方にもかかわらず渋滞もなくスムーズに進む。関越自動車道を横切ったあたりから田畑が多くなり、徐々に秩父に近づいていく感じがした。
左手に荒川を見ながら進み、やがて川下りで有名な長瀞を通過。だんだんと山深くなってくる。天気は曇り。途中雨がパラついたりするが、本降りにはならない感じだ。そうこうしているうちに秩父市に入り、2日目の第1目的地である秩父神社に到着した。時間は午前10時00分。館林市から3時間ほどかかった。秩父には何度か来ているが、秩父神社は初めて参拝する。参拝を済ませてお守りりを無事ゲットした。秩父神社に到着した時点での距離は2363km。館林市から73kmだった。昨日からコンスタントに距離を刻んでいる。
秩父神社を参拝後、早めの昼食ということで向かった先は、国道140号線沿いにある豚みそ丼の名店「野さか」だ。ここは2回ツーリングで訪れており、あまりの美味しさとボリュームに感動した経験がある。営業時間が短くて平日でも行列のできるお店なので、開店直前に行こうと決めていた。開店10分前に訪れたところ、すでに行列ができていた。素早くクロスカブ110を駐輪スペースに置き、行列に加わった。開店後ほどなくして店内に入り、待つこと20分で「豚みそ丼大盛(ねぎトッピング)」が出てきた。相変わらずのボリュームと見た目の美しさ(笑)。豚みそ漬けはこんなに美味しいものなのかとあらためて実感。お客さんは全員無言で頬張り、満足そうな顔をしている。
作戦どおりに野さかの豚みそ丼が食べられて大満足。もうここで2日目は終了したいところだが、まだまだ旅は続く。国道140号線を雁坂トンネル方面に進む。秩父鉄道と並行して走り、山深くなってきたものの道は走りやすい。だんだんとカーブが増え、道の駅大滝温泉を過ぎる頃には徐々に勾配がきつくなってきた。健気に走ってくれるクロスカブ110だが、二瀬ダムあたりから急に勾配がきつくなり、フルスロットルでも30km/hがやっとの状態。ギアを下げて速度を上げようとすると、逆に速度が下がってしまい、回復まで時間がかかるので、3〜4速ホールドで進んだ。
昨日はほとんど平坦な道で快適だったが、山道では思いがけず苦戦することになった。後続車を気にしながらようやく雁坂トンネルに到着。雁坂トンネルを走りながら燃料ゲージを見ると、フルスロットルで走ってきたせいか、ガソリンの減りが早い。雁坂トンネルを通過して山梨県山梨市に入ったらすぐ給油しないとヤバイ感じだ。幸い下り坂なので省力モードでトンネルを通過し、無事山梨県に突入。道の駅はなかげの郷まきおかを過ぎた先にガソリンスタンドを発見しピットイン。給油量は2.8リッターだった。
気持ち的に落ち着いたところで再び走り出す。国道140号線を走り、ガソリンスタンドからそれほどかからずに恵林寺に到着した。時間は午後1時30分。秩父市内から3時間ほど、走行距離は69kmだった。いちばん「60km」に近かったが、もっともハードな道のりだった。恵林寺は一度だけ訪れたことがあり、武田信玄の菩提寺ということもあって平日にもかかわらず観光客が多い。
恵林寺を参拝後、雨がパラつきはじめた。とりあえずレインウェアを着て、次なる目的である相模湖を目指す前に、せっかくなので温泉に入ることにした。恵林寺から県道38号線を進み、国道411号線を勝沼方面に向かい、ワイナリーが建ち並ぶ中にある「甲州市ぶどうの国 勝沼健康福祉センター」(山梨県甲州市勝沼町)を選んだ。入湯料は510円。館内は広々としており、内風呂のみで湯船はそれほど大きくないが、やや淡い褐色のお湯は適温なので入りやすい。秩父の山を乗り切った身体を癒す。
「甲州市ぶどうの国 勝沼健康福祉センター」を出ると時間は午後2時50分。ここからは国道20号線(甲州街道)に出て、ひたすら東京方面に走るだけだ。この近辺は走り慣れているので、今までに比べれば精神的に余裕がある。曇りだが雨は止んだのでレインウエアは必要ないだろう。ガソリンも東京までは気にすることないだろう。
勝沼から国道20号線を東京方面に進む。途中、笹子トンネルを通過し、大月市に入る。交通の流れもよく、クロスカブ110も元気だ。途中、名勝・猿橋を通り、上野原市を過ぎたところで山梨県から神奈川県に入った。これで2日間で6県巡ったことになる。やがて相模湖駅前を右折して相模湖に到着した。時間は午後4時30分。勝沼から1時間30分ほど、恵林寺からの走行距離は82kmだった。距離を稼いでいる割にはスムーズだった。
相模湖に到着した段階で日は暮れかけていた。あとは相模湖から都庁を目指すだけだが、到着は夜になるだろう。再び国道20号線を東京方面に進む。高尾山手前にある大垂水峠は休日は125cc以下の二輪車が通行禁止となっている。幸い、この日は平日だったので大垂水峠を通過。京王線の高尾山口駅前を通り、八王子市内に入る。帰りの通勤時間帯ということもあり交通量も多く、局所的に渋滞が発生していたが、国道20号線のバイパスに入ると流れがスムーズになった。
やがて中央自動車道の国立府中インターを通過する頃には日は完全に落ちていた。府中市から調布市に入り、自宅近くを通過して環八、環七、山手通りを過ぎて、ようやく昨日撮影した都庁前に到着した。時間は午後7時10分、館林市から約12時間かかった。走行距離は2558km、相模湖からは44km、2日間で約500kmを走破した。そんなに走ったのかと思ったが地点間の距離が70〜80kmなので、6箇所巡ったので単純計算してもそのくらいになる。いや〜走った走った。ガソリンは約7.5リットル消費し、リッター66kmとなった。若干の差異はあるだろうが、なかなかの好数値だった。おそるべしクロスカブ。疲れてはいるものの、何とも言えない達成感に満たされた。我が愛車の400Xとかでは味わえない新たなオートバイの楽しみ方を実感させてくれた。
今回のツーリングを含めて、編集部にお返しするまでに約1週間、700kmほど走った。総評としては「すごくよく出来た、完成度の高いオートバイ」であり、スーパーカブがプロフェッショナルを中心に日本だけではなく世界中で愛され続けているのがよくわかった。実用性を徹底的に追求し、プロフェッショナルの要望と時代の流れを汲み入れて忠実かつ確実にブラッシュアップしてきた賜物なのだ。60年という歳月は伊達ではない。
すっかりボディサイズやシフトチェンジにも慣れたところでお返しせねばならなくなり、ちょっと寂しくなってしまった。もし経済的にゆとりがあれば買ってしまいそうだ。そんな日が来ることを祈りつつクロスカブ110に別れを告げた。ありがとう、クロスカブ110、また会える日まで!
[その2|その3]