2018年9月29日
スーパーカブ60周年記念なのでホンダクロスカブ110で60km先の神社仏閣を目指す オレの圏央道」1泊2日地道ツーリング パート1:ファーストインプレッション
文&撮影—毛野ブースカ
撮影協力—玉井久義
取材協力─Honda http://www.honda.co.jp/motor/
みなさんはホンダのスーパーカブと聞いて何を想像するだろうか。早朝の町中を静かに走る新聞配達、昼間の住宅街をくまなく走る郵便配達、出前機を付けて出前するそば屋や寿司屋…あの独特なシフトチェンジ音と排気音を奏でて走る配達のプロたちの姿ではないだろうか。日本でもっともよく見かけるオートバイと言っても過言ではない。そんな「プロフェッショナルズチョイス」のホンダのスーパーカブシリーズの中でも、クロスカブは異色の存在だ。
クロスカブと言えば、「ハンターカブ」の呼び名を持つCT110の直系子孫だ。郵便や新聞配達のカブがアーバンユースなら、CT110はアウトドアユースのレジャーバイクで、ハンターカブという名称のとおり猟銃が携行できるライフルスキャバードがオプションで用意されたり、出荷国の仕様によっては四輪駆動車のような副変速機が備わるなど、まさにアウトドアのプロ仕様のカブだ。私は二輪免許を取得して以来、このハンターカブが気になっていて、町で見かけるたびに欲しいなあと思っていた。やがて、ハンターカブを髣髴させるスタイルを持つクロスカブCC110が2013年にデビュー。いつかは乗ってみたいと思っていた矢先にモデルチェンジされ、カムフラージュグリーンという、いかにもミリオタが好きそうなボディカラーがラインアップされた。これは絶好の機会ということで、編集部にお願いしてCC110を借りていただき、憧れのマシンでツーリングに出かけることにした。まずはファーストインプレッションからだ。
お借りしたマシンは希望だったカムフラージュグリーンではなく、真っ赤なマグナレッドとなった。当初はちょっと残念だったが、思い起こせばハンターカブのメインカラーは赤。現物を見ると、ホイールやハンドル、リアキャリア、チェーンカバー、マッドガードなどの主要パーツは黒となっており、引き締まった印象で逞しく見える。2013年に発売された初代クロスカブはどちらかといえばモダンな印象だったが、モデルチェンジ後はリアフェンダーがラウンド形状になるなど、ハンターカブのイメージを引き継ぐクラシカルなスタイルとなっている。また、配達仕様のカブのようなレッグシールドがないので、野暮ったさはなくすっきりした印象を受ける。
個人的にいちばん気になったのはヘッドライトガードとリアキャリア。特にリアキャリアは面積が広く、かつフックも付属しているので、荷物を載せるのに最適。私のような「荷物が載せられる」ことがバイクや車にとって重要なポイントだと考える人間にはピッタリだ。ヘッドライトガードにもちょっとした小物を括りつけることができる。さすが実用性を重視したカブらしい装備だ。
実用性と言えば、セルフ式スターター以外にキック式スターターも装備していることだ。最近ではキック式スターターを標準装備している機種が少なく、バッテリーが上がった際に大変心強い。キックスタートは多少慣れも必要なので、万が一に備えて練習しておこう。サイドスタンドに加えてセンタースタンドが標準装備されており、駐車時やメンテナンス時に役立つ。なにげにクロスカブの装備は豪華だ。
そして、スーパーカブと言えば独特なシフトチェンジだ。停車時のみロータリー式になる4段リターン式で、自動遠心クラッチによりシフトペダルを踏み込むだけで変速できる。左手でクラッチをきる必要がないのだ。ユニークなシーソー式ペダルは、前側を踏む込むと「N→1→2→3→4」とシフトアップし、後側を踏む込むと「4→3→2→1→N」とシフトダウンする。ここが通常のオートバイと大きく違うところで、シフトアップは問題ないが、例えば4→2にクラッチをきって素早くシフトダウンできないので、特に町中とかで急にスピードダウンが必要になった際に戸惑いやすく、スーパーカブビギナーは焦ってしまう(私は何度もそういう場面に遭遇した…)。
このスーパーカブ特有の自動遠心クラッチは、エンジンの回転数が上がる(つまりスロットルを開ける)とつながるという構造になっており、私が乗った限りでは、ほぼ停止している状態から4速でスタートしてもエンストはせず、じりじりと加速していった。エンストしないのは便利だが、ギアがどこに入っているのか慣れるまでは把握しにくかった。だから私の場合は減速→停止する間にシフトダウンしていき、必ずニュートラルに入れるようにしていた。
最初、パッと見では大きく見えたが、いざ跨ってみると愛車のホンダ400Xに比べれば小さい。ハンドルは高い位置にあり、背筋はピンと伸びて腕が直角になり、完全に「大名乗り」になる。前方の見晴らしはとてもいい。車体は軽く、重心も下にあるので取り回しやすい。シートは自転車のそれを大きく、分厚くしたようにした感じで、見た目とは裏腹の座り心地だった。それについては後ほどインプレしよう。
マシンを受け取った直後は、特にシフト方法で戸惑いはあったものの、ツーリングに出かける前に数日間かけて習熟走行を行なった。当初は400Xのように1速である程度引っ張ってから2速、3速と入れていたが、そうするとシフトショックがかなり起こることわかり、1速でスタートして15km/hに満たないうちに2速に入れ、2、3速で引っ張るようにするとスムーズに走れるようになった。シフトダウン時は、30km/hあたりで4速から3速に入れるとシフトショックが大きいので、4速のまま20km/hまで速度を落とし、そこから3、2速と落としていき、止まる瞬間に1速、ニュートラルに入れるようにした。
コンパクトで軽量なので取り回しはすごぶるよく町中で走りやすい。想像以上に安定感もあり、さすがはスーパーカブだと思った。健気に走る頼もしいヤツだ。メーターは120km/hまで刻まれているが、実際には60km/hを超えるとエンジン音が高くなり唸るように走るので、快適な速度域は40〜60km/hだろう。2、3速でしっかり引っ張ってやれば主要幹線道路の交通の流れにもついていける。ただ、前述にように急に速度を落とさなければならなくなった場合にシフトダウンがうまくいかないこともあり、焦ることもしばしばあった。そういった意味からも、速度を上げずに流れるようにして走るのがクロスカブ110には似合っている。
燃費はツーリングに出かける前まで合計100kmほど走ったが、燃料計が半分になるかどうかくらい。メーカー公称値に近い値が出ているような感じだ。タンク容量が4.3リットル、燃料消費率がリッター61kmなので単純計算すると260kmほど走れる。実際の燃料消費率については、これから行なう1泊2日地道ツーリングで検証する。
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