2018年8月22日
Honda PCX HYBRID “4秒間”の未体験ゾーンヘ
■試乗:高橋二朗 ■撮影:依田 麗/Honda
■問合せ:Hondaお客様相談センター TEL0120-086819
https://www.honda.co.jp/PCX/
今春に一新されたホンダのグローバル・コミューター「PCX」シリーズにハイブリッド・システム搭載モデル「PCX HYBRID」が追加された。9月14日の発売を前に、早くも国内の年間販売計画台数2000台のおよそ半分の受注があるというから大きな反響を呼んでいると言える。EVモデル「PCX ELECTRIC」の年内発売を控え、その橋渡し的存在とも言えるハイブリッド・モデルの走りや如何に?
タイとインドネシアでは150 HYBRIDとして登場
昨年の東京モーターショーでワールドプレミアとなった「PCX HYBRID」が9月14日(金)より発売となる。量産二輪車として世界初となるハイブリッドシステムを採用することとなった同車は、今年4月より発売された125ccエンジンを搭載する3代目PCX(http://www.mr-bike.jp/?p=144065)をベースに、高出力型リチウムイオンバッテリーを搭載し、駆動アシスト機能を追加したACGスターターをアシストモーターとしても利用、エンジンをアシスト。「従来の同クラススクーターを超える機敏なスロットルレスポンスや高い動力性能を実現」するという。
ACGスターターによるアシストは、スロットル操作にともなうアシスト開始から約4秒間作動。アシスト量はスロットル開度に合わせ、PCXと同等の扱いやすさを維持しながら走行状況に応じた俊敏な加速を提供するというもの。アシストモーターのみの走行は行わない、いわゆる”マイルド・ハイブリッド”と呼ばれるもので、燃費の向上よりも動力性能を重視した仕上がりとしている。通常の「Dモード」に加え、アシストを強めてよりスポーツ性を高めた「Sモード」 という2つのアシスト特性の切り替えも可能とした。
ちなみにホンダの説明によるとゼロ発進、中間加速共に(約4秒間という制約はあるが)軽二輪モデルとなるPCX150に迫る動力性能を得ているという。
また、コンパクトなバッテリーユニットとしたことで、シート下はフルフェイスヘルメット1つを収納可能とするなど、限られたスペースに関連機器を効率よく搭載することで、スクーターとしての利便性は保たれている。ちなみに車両重量はPCXに対し5kg増に抑えられた。メーカー希望小売価格は432,000円(税込)。PCXに対し約9万円高となる。
尚、タイとインドネシアでは150のハイブリッドとして販売、125のハイブリッドは今のところ日本専用モデルとのことだ。海外ではPCX自体、上級クラスに属するが、そんな中で「ハイブリッド」というステータスが好まれているとか。
PCXの伝統である“上質”な走りをハイブリッドでも
その世界初の量産二輪車の試乗会に参加。台風が近づく生憎の天気ではあったが、試すことができた。まず、乗ってすぐに感じたのは、車体が一新されたベースとなる3代目PCXシリーズのしっかりとした乗り味を改めて確認することができた。
そして、肝心のハイブリッドの効果はというと、実際はメーターのバーグラフによってアシストされていることがわかるのだが、とてもスムーズで洗練された印象のため、試乗前に説明で受けていた「ダイレクトなレスポンス」「トルクフル」な走りといったモーターアシストの効果をハッキリと体感することができなかった。違和感なく加速する、とてもよく躾けられた上質な味付けだ。ただ、ガソリンモデルと乗り較べると、その差は明らか。ハイブリッドモデルは、スタートからの力強さを感じることができた。尚、このモーターアシストは最大で約3秒継続し、その後約1秒かけて徐減していくシステムとなっている。
試乗会場周辺で、他媒体さんがガソリンモデルとハイブリッドモデルで信号からのゼロ発進加速を試していたのを後方から拝見させていただいたが、ハイブリッドの方がスタート直後から先行しているのがわかった(盗み見スイマセン……)。ちなみにホンダのデータによると、ゼロ発進加速では50m走行地点で+4m、40km/h走行中からの加速で200m走行地点で+7m、ハイブリッドがガソリンモデルに対し先行するという。
ハイブリッドはアシストによるトルクが増大する分、どうしても上がり気味となるエンジン回転を落ち着かせるため、駆動系に新設計のドリブンフェイスを採用。クラッチもノーマルに対し早めにミートするセッティングとなる。クラッチがすぐに繋がる分、速度がのっていくというフィーリングもハイブリッド故なのかもしれないと感じた。
当初は微小スロットル領域の方がアシストによる体感的違いが大きいと予想していたが、私が感じた限りではフルスロットル時のアシスト力の方が力強く感じた。これがいわゆる「ダイレクトなレスポンス」に相当するものなのかもしれない。実際はエンジン回転が低いほどアシスト量は多く、ノーマルに対しトルクは4000rpmで約33%、5000rpmで約22%の向上を果たしているという。
「D」と「S」の2つの走行モード、スポーツ性を高めたSモードは微小スロットル開度でも大きなアシスト力がかかっているのが体感できた。メーターを見ている限り、フルスロットル時のアシスト量はDとSに違いはない。ちなみに「アイドリング」モード、走行特性はDモードと共通ながら、アイドリングストップがキャンセルされるというもの。Sモードは水温やバッテリー電圧といった条件が揃えば常にアイドリングストップされることになる。尚、ハイブリッドモデルはガソリンモデルに対しアイドリングストップ開始までの時間が0.5秒短縮され、燃費向上にも貢献しているという。
スロットルを戻した際、アシストモーターのエネルギー源となるリチウムイオンバッテリーに充電(回生)されるシステムとなっており、その状態はメーターで確認することもできる。バッテリーの状況など様々な条件によってチャージ量は変わってくるが、量自体は、どのモードにおいても変わらないとのこと。
開発責任者の大森さんにお話を伺うと、バッテリーを大きくするなど、より力強い走りを生むことも可能だが、あくまでもノーマルからの変更を最小限とし、PCXが初代モデルから追求している上質な走りとのトータルバランスを考え、今のレイアウト、セッティングに落ち着いたという。既存のレイアウトを可能な限り活かしつつ、とてもよく躾けられたハイブリッドシステムを完成させたことを高く評価したい。
一方、ノーマルに対し9万円アップをどう捉えるかは人それぞれだろう。安いと思った人もきっと多いはずだ。もっともこの先、四輪のように二輪のハイブリッドが一気に普及するのは難しいとは思うが、四輪ハイブリッドモデルと共通のエンブレムを採用するなどホンダのイメージ戦略上、重要なモデルのように思える。いずれにせよ、量産二輪車世界初のPCX HYBRIDを登場させたということに意義はあるし、この登場をきっかけとし、今後の発展に期待したいところ。
尚、PCX HYBRIDの購入を検討している人はまず、販売店でガソリンモデルのPCXと乗り較べてみることをお勧めする。ちなみにPCX HYBRIDは「Honda二輪EV取扱店」での取り扱いとなるので、事前に販売店のご確認をお忘れなく。
PCX HYBRIDの奥深さ、真の実力を今回の短い試乗時間ではまだまだ理解できないと感じた。近日中に同車両をお借りして、また違ったフィールドで試乗できる機会があれば、ご報告したい。
(試乗:高橋二朗)
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