2018年6月19日
MBHCC E-1 西村章 MotoGPはいらんかね
第139回 第7戦カタルニアGP Until We Say Goodbye
ホルヘ・ロレンソ(Ducati Team)2連勝。しかも前回も今回も、高水準のラップタイムを刻み続けて後方の選手たちをじわりじわりと引き離していく、という王道の勝ちパターンである。
優勝後にロレンソは、前戦での初勝利と比較して「ムジェロはどうしても勝たなければいけない一戦で、プレッシャーも大きかった。それだけに、前回の優勝のほうが意義は大きかった」と述べた。
「今回も勝利を目指した。無理そうなら、すでに優勝を経験しているので表彰台を目指そうと思った。人生で最初の達成は何だって格別な気分になる。今回もうれしいけれども、ムジェロでの初勝利ほどではない」
優勝の感慨という意味では、もちろんそうだろう。しかし、2戦連続で自分の得意パターンに持ち込んで勝ってみせたことで、最初の勝利は偶然すべてが噛み合ったからこその結果ではなく、勝つための要素をきっちりと積み上げて結果を自分の手許に確実に引き寄せるチャンピオンライダーの勝ち方を、今の環境とパッケージで再現してみせた、という点では、今回の優勝はある意味で最初の勝利以上に意義が大きい、という見方もできるのではないだろうか。
そしてホルヘ・ロレンソといえば、前戦終了後に世間をあっと言わせたレプソル・ホンダへの移籍劇である。まさか彼がホンダのマシンを選択するとは、世界中のレースファンや関係者にとっておよそ想定外の出来事だった、といっていいだろう。じつはロレンソはホンダのマシンに1年だけ乗っている……とはいっても、しょせんは13年ほども昔の250ccでの話ではあるし、しかもこのときの彼のホンダに対する印象はあまり良いものではなかったようだ。翌年から乗り換えたアプリリアで2年連続チャンピオンを獲得したとなれば、なおさらだろう。
マルク・マルケスとホルヘ・ロレンソが同じピットボックスにいる、という風景はおよそ想像の域外の出来事だったとはいえ、まず気になるのは、来年のロレンソがどれだけ迅速にRC213Vを乗りこなせるようになるのか、ということだ。これはマシン側と選手側がうまく歩み寄ることで実現するものだろうが、今年のドゥカティ2連勝を見れば、双方のアプローチがうまく噛み合えば、かなり早い段階から高い戦闘力を発揮するようになるのかもしれない、という気もする。少なくとも「ロレンソが速く走れるのはヤマハのバイクだけ」「インライン4以外のエンジンは彼には扱えない」という過去の批判は、もはやあたらないといっていいだろう。
ただ少し気になるのは、マルケスとの開発方向性の差だ。
あくまで素人考えなのだが、ロレンソのリクエストするであろう方向性は、マルケスの好んできたマシンづくりや今年までペドロサの乗ってきたバイクとはかなり異なるものになるのではないか。そのときに、HRCの技術陣は、はたしてどんなふうに対応していくのか。エンジニア気質という面でも、ホンダはヤマハやドゥカティとバイクに対する考え方がもちろん違うだろうし、ライダーとのコミュニケーションや雰囲気作りの方法も異なるだろう。それらの目に見えない要素が、どんなふうにライダーの順応に影響してくるのか、という側面は非常に興味深い。
そのロレンソをチームメイトとして迎えることになるマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、2位でチェッカー。自身はランキング首位を維持しながら、他の選手(ロレンソ以外)が揃って自分よりも下位でゴールしたために、確実にポイント差を広げる結果になった。ランキング2番手のロッシは27ポイント差、3番手のヴィニャーレスとは38ポイントを開き、4番手につけているザルコは42点差である。シーズンは1/3を終えたところで、今後まだ12戦を残しているために、順位の逆転などいくらでもあり得るだろうが、とはいえ、着実なポイント積み上げは良い手応えではあるだろう。ちなみに、シーズン当初にマルケス最強のライバルと目されていたアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Ducati Team)は今回も転倒ノーポイントで終えたために49点差。同点でロレンソがつけている。
あと、今回のレースで目立ったことと言えば、全26台中約半分の12台が転倒もしくはリタイア。完走は14台。土曜まではタイヤアロケーションに対する不満、特にミディアムコンパウンドがワークしないという声もちらほらと聞こえていたのだが、決勝レースではリアにミディアムを選んだダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が5位フィニッシュ、ヨハン・ザルコ(Monster Yamaha Tech3)が7位と健闘を見せ、各コンパウンドは結局のところそれなりにしっかりと作動をしたようである。で、そのペドロサの来年以降の去就がこの週末は大きな注目を集めたが、おそらく次戦までには何かしらの方向がクリアになっているのではないか、と予測される。
それにしても、木曜のペドロサ記者会見に集まった人数の多さには驚いた。マルケスとペドロサは、いつもホスピタリティの二階バルコニーで囲み取材を行うのだが、床が崩れて皆落ちてしまうんじゃないか、そうじゃなくとも建材が人の重みで歪んでしまうのではないかというくらい、たくさんの人々が取材(見物?)にやってきた。おそらくあそこにあれだけ人が乗ったのは初めてなのではないだろうか、という気もしないではない。会見で席に着いたペドロサが、「レースで優勝したときよりもたくさんの人数だね」と苦笑したほどである。
結局、この会見は当初に噂されていたような引退発表ではなく、翌金曜日から走行が始まってペドロサの走行後定例囲み取材が夕刻に行われた際には、いつも集まる十数名ほどの常連取材陣のみに落ち着いていた。前日に物珍しそうに集まってきた人たちは、いったいどこで何をしてたんでしょうね。いや、いいんですけどべつに。
というわけで、今回は全体的にいつもよりややあっさり目ですが、ひとまずはこんなところで。ではまた次回。
■2018年6月17日 第7戦 カタルニアGP バルセロナ・カタルニア・サーキット |
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順位 | No. | ライダー | チーム名 | 車両 | ||||
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1 | #99 | Jorge LORENZO | Ducati Team | DUCATI | ||||
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2 | #93 | Marc MARQUEZ | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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3 | #46 | Valentino ROSSI | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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4 | #35 | Cal CRUTCHLOW | LCR Honda CASTROL | HONDA | ||||
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5 | #26 | Dani PEDROSA | Repsol Honda Team | HONDA | ||||
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6 | #25 | Maverick VIÑALES | Movistar Yamaha MotoGP | YAMAHA | ||||
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7 | #5 | Johann ZARCO | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
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8 | #9 | Danilo PETRUCCI | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
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9 | #19 | Alvaro BAUTISTA | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
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10 | #29 | Andrea IANNONE | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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11 | #44 | Pol ESPARGARO | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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12 | #45 | Scott REDDING | Aprilia Racing Team Gresini | APRILIA | ||||
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13 | #17 | Karel ABRAHAM | Angel Nieto Team | DUCATI | ||||
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14 | #21 | Franco MORBIDELLI | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
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RT | #55 | Hafizh Syahrin | Monster Yamaha Tech 3 | YAMAHA | ||||
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RT | #53 | Tito RABAT | Reale Avintia Racing | DUCATI | ||||
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RT | #43 | Jack MILLER | Alma Pramac Racing | DUCATI | ||||
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RT | #38 | Bradley SMITH | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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RT | #30 | Takaaki NAKAGAM | LCR Honda IDEMITSU | HONDA | ||||
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RT | #42 | Alex RINS | Team SUZUKI ECSTAR | SUZUKI | ||||
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RT | #4 | Andrea DOVIZIOSO | Ducati Team | DUCATI | ||||
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RT | #10 | Xavier SIMEON | Reale Avintia Racing | DUCATI | ||||
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RT | #41 | Aleix ESPARGARO | Aprilia Racing Team Gresini | APRILIA | ||||
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RT | #12 | Thomas LUTHI | EG 0,0 Marc VDS | HONDA | ||||
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RT | #50 | Sylvain GUINTOLI | Suzuki Test Team | SUZUKI | ||||
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RT | #36 | Mika KALLIO | Red Bull KTM Factory Racing | KTM | ||||
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