2018年6月12日
第42回「選手、関係者、そして観客。みんながんばるニッポン・トライアル!」
2輪モータースポーツの最高峰クラスでタイトルを獲得した唯一の日本人といえば、トライアルのフジガスこと藤波貴久選手!
今年ももてぎに世界チャンピオンがやってきましたヨ!
パドックは絶対王者のトニー・ボウ選手やアダム・ラガ選手といったもてぎ常連組に加えて、今大会から開催のウーマンクラス(TRIALGPとTRIAL2)で女性ライダーが多数参戦のため、いつもより華やかな雰囲気でした。
TRIALGPは金曜から予選が行われ、第1セクションのコース変更して、予選専用コースを作ってのタイムトライアル。もちろん足着きは減点対象になります。ここで停止をとられて最下位になったジェロニ・ファハルド選手(イケメン)が決勝で奮起することになるのです。 日本人ライダーはガッチこと小川友幸選手が14位、野崎史孝選手12位、黒山健一選手11位、フジガス10位と、13位にチャンピオン、トニー・ボウ 選手を挟んでまとまった感じ。決勝は両日ともこの予選の順にコースを回ります
今年で〇回目を迎えるもてぎラウンド、日本人的にはDay1が今回のハイライトだったのではないかと。選手権全体で見れば、ジェロニ・ファハルドの優勝が2009年以来の2度目であったり、ハイメ・ブスト選手のレプソルホンダからGASGASに移籍後初優勝が話題筆頭ということになりますが、年に1度の日本グランプリでフジガスが表彰台にあがる以上に大事なことはない! 4月のスペイン選手権で頭から転落、肩を負傷し顔にも大けがを負い(スペイン選手権の痛いクラッシュは本人のFacebookでご覧いただけます)、それから2週間後の開幕戦をなんとかこなし、70パーセントの回復で挑んだもてぎでした。
なんと1ラップ目は第10セクションまで連続クリーンで走破、トータル8点で折り返しました。続く2ラップ目、フジガスの気持ちを察したのか、全日本チャンピオン小川友幸選手が隣に立ち、ラインやギアのアドバイスをしたり、順番を先に譲るなど、とにかく愛情たっぷりの兄貴サポートで送り出す様子。もちろんガッチにもガッチの戦いがあるのですが、世界でたったひとりで戦い、結果を出さなければいけないフジガスの気迫には何にも勝るもので、幼いころからの付き合いで気心もなにもかも知ったうえでのサポート体制には心を打つものがありました。
そこに黒山選手、野崎選手も重なり、まるでチームジャパンの戦い。そして会場で見守るお客さんたちの温かさはトライアルならではだなぁと。
「日本ラウンドには特別の思いがある」と言うフジガス、勝つためにできることは全てやるスタイルで、前日も暗くなるまでトニーと下見をしていたそうです。 トライアル界では日本人で唯一の世界選手権ライダーであり、プレッシャーは計り知れないと思いますが、それを上回る日々の練習と強靭なメンタルで の全開の走りは、見る人をとても勇気づけてくれるし、レース後の表彰台からの笑顔はみんなに元気をくれる。表彰台で名前が呼ばれるときの高揚感は図り知れず、Day1の喜びをみんなで分かち合えたことを心から嬉しく思いました。
決勝の翌日、来年のトライアルGPもてぎ開催が発表になりました。レースが毎年行われるのは関係者の尽力があってこそ。日本では海外ライダーのためにインポーターがバイクを準備したり、普段はトライアルで使用していない場所の整備をしたり大変な時間と費用が掛かっています。日本ラウンドが開催されることはほんとにありがたいです。レースは生もの、ちょっとでも気になったら会場に足を運んでほしいと思います。
ここまで3戦、トニ・ボウ選手、ジェロニ・ファハルド選手、ハイメ・ブスト選手と、すべて違うウィナー。若手ハイメ選手の優勝でいよいよトライアルも世代交代か?? なんて思いきや、やはりトニー選手は別格なんだそう。再びヨーロッパに戻ったらトニー劇場が待っているのか?
日本勢はTRIAL2クラスのライダーも含め、世界選手権のノンストップルールに慣れればもうちょっと行けたんじゃないかなという気がしました。ライディングの進化の波に乗っていかねば、日本はどんどん置いて行かれるのではないかという危惧をじわじわと感じつつ、外国人勢に混ざって戦うライダーを間近で応援したり、トップランカーの素晴らしい走りを見、トライアルという競技の魅力を多分に感じた2日間でした。
日本人ライダーのコメント
●藤波貴久選手(TRIALGP 3位・9位)
「日本グランプリでの表彰台というのは特別なものです。ケガのこともありましたが、期待してるお客さんも沢山いるなかで、表彰台に登れたというのは すごく嬉しかったし、”まだいける”と思えたこと、ゾーンに入る走りができたこと、自分自身に自信がついたのがDay1でした。Day2はやはり、ケガのあとの乗り込みが足りずに体力不足を感じました。ゾーンに入ろうと思っても入れない焦りもあり、焦りから抜け出せなかった自分がいました。Day2の9位 はランキング3位以内を目指しているものとしてはあってはならない成績。ライダーは成績が大切だし、そのためにいいバイクに乗せてもらっているので、常に表彰台を狙っていけるように取り組んでいきたいと思う。幸い身体のほうも調子が戻ってきているので、今後に期待していてください!」
●小川友幸選手(TRIALGP 14位・13位)
「コースは、13、15セクション以外はそれほど難しいというところではありませんでした。Day1は良いところとそうでない部分にばらつきがありました。ノンストップルールでの焦りやミスがありましたが、このルールのほうが、一気に集中していけますし、下りは休憩なので自分には合っているかも? と思いました。Day2は、足のケガもありましたが、それは大きな問題ではなかったです、今日の出来からいくと10位以内には行けたかもしれないが、ちょっとのミスで開きが出るなど、世界ライダーとの技量の差はありました。世界戦で自分のレベルがどの位置にいるかを確認すること、足りない部分を見つけて自分自身のレベルアップにつなげていきたい。そのうえで、トライアルデナシオンに向けて修正してチャレンジしていきたい」
●黒山健一選手(TRIALGP 9位・15位)
「Day1(9位)は真面目に成績を出したいと思って挑みました、前のダビル選手とは10点の開きがありますから、自分が今できる精一杯だったと思います。Day2の最下位は初めてですし、全日本でもやらないような5点を連発してしまいました。気持ち的には、次のフランス、ベルギーに向けて、ノンストップルールの感覚を覚えておきたいと思い、いろいろ試していましたね。勉強になり、いい2日間だったと思いますし、世界の選手に対して体力不足も感じました。フランス、ベルギーは先日発表されたヤマハのエレクトリックバイクTY-Eで出場するのですが、それまでに準備できることを精一杯進めていきたいと思います!」
●野崎史孝選手(TRIALGP 15位・14位)
「Day1の朝イチの練習でぎっくり腰をしてしまって、めっちゃ痛いままのレースになりました。『なんで今日なるの!』と思いながらレースをしていて、今日も寝ていたかったのだけど、荒治療なみに乗ったらちょっと楽になった?(笑)今年はセクションもメンバーもキツかったですね、レベルの高いレースでした。海外勢は年々進化していますが、僕らはルールに関しても停滞していて、世界戦の予選(スピードを競う)のような練習はしませんから、それでも差がついてしまいますし、ノンストップルールでの失点も多かった。海外勢の進化に負けないように、僕らも進化しなければいけないなと思いました」
●小川毅士選手(TRIAL2 10位・7位 日本最上位)
「トライアル2クラスは、割とイージーな感じのセクションだったのですが、レギュレーションでいつもより排気量の少ないバイクでの出場だったこともあり、1つのミスが大きく響きました。結果は満足とはいきませんが、自分の実力を出すための走りを考えたり、今後の全日本のレースの取り組みにたいして得るもの は多かったと思います」
●西村亜弥選手(TRIALGP Women 13位・13位)
「レベルの差、ルールの違いに戸惑うこともありましたが、全然走れないとか、歯が立たないとかではなく、自分はいけてるのになぜ? という悔しい気持ちです。向上心に火をつけられました!今はとにかく上手くなりたい!そのためには世界をみて練習していかないといけないと思いました。そしてまた一緒に走る機会があったときに、いい勝負をしたいと思いました」
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