2018年5月30日
JAIA輸入二輪車試乗会より 「DUCATI SuperSport S」試乗 『伝統の“SuperSport”の車名が久々に復活 本来あるべき姿の“SuperSport”』
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗
■DUCATI JAPAN http://www.ducati.co.jp/
“スーパースポーツ”という名前と、ショートテールに鋭い目つきの精悍な顔つきから、スポーツライディングに特化したものすごいヤツというイメージを持つかもしれない。「DUCATIのスーパースポーツっていうとパニガーレもそうじゃないの?」と思う人がいてもおかしくない。でも、これは各メーカーの旗艦スポーツモデルをくくった一般的な“スーパースポーツ”とはちょっと違う。
DUCATIでスーパースポーツの名が付いたオートバイが登場したのは1970年代だった。ベベルギアでカムシャフトを駆動する空冷Lツインのクラシックな900SSは知っている人も多いだろう。その“SS”はスーパースポーツの略。SSモデルはその後も登場している。1980年代終わりから1990年代終わりまであった二代目は日本市場で400SSから900SSまで存在し、SSの文字が排気量数値の前にきた三代目(SS900、SS750など)は2006年まであった。だからスーパースポーツカテゴリーがそう呼ばれるようになる前からDUCATIにはスーパースポーツがあったのである。ちなみにパニガーレは同社ではスーパーバイクカテゴリーになる。
そのスーパースポーツが久しぶりに復活した。多くのライダーの記憶にある二代目と三代目は、程よいスポーツ性能でストリートでのパフォーマンスを重視したバランスのとれたオートバイだった。この新しいスーパースポーツもそのフィロソフィーを受け継いでいる。攻撃的な見た目とは裏腹に、ハンドル位置は低くなく、グリップが近い。足つきは、身長170cmで短足のライダーでも両足が車体を充分に支えられるくらい届く。適度な前傾姿勢でまったくキツくはない。これならツーリングなど長時間のライディングも負担にならないだろう。それでいてタイトな車体はコンパクトで、体とのフィット感が良く、ちゃんとスポーツモデルらしい部分はちゃんとある。このへんが絶妙なんだ。
その絶妙に感じた印象は、エンジン、ハンドリングにも続く。937cc水冷4バルブのテスタストレッタ11°エンジンは、低回転域から力強いトルクが出て、スロットルの開け始めからグイグイと気持ちいい加速をしながら、街中にあるストリートでも重要な、スロットルオン・オフでの動きに神経質なところがない。ピックアップが良く、高回転までフラットなトルクを維持し右手の動きに気持ちいいほど反応しながら、扱いやすさを兼ね備えている。最高出力110psというのがちょうど良くて、軽い車体もあって、数値以上にパワフルに感じる。それでも「スポーツ」「アーバン」「ツーリング」とあるライディングモードの「スポーツ」でもスロットルをワイドに開くことをためらうまでじゃないところがミソ。試乗したのはシフトアップだけでなくダウンにも対応したクイックシフトが装着されたスーパースポーツS。広い駐車場に作られた試乗コースで、レブリミットまで回し、つま先だけでパンパンとシフトアップして加速するのが楽しくて、楽しくて。
Sバージョンはスタンダードモデルと違い前後にオーリンズのクッションユニットを使う仕様。ライダーの体重は69kgで、前後のサスペンションはゴツゴツするような硬さはなく、しなやかに動く。ソリッドな効きのブレーキングで鋭い減速をしながらのコーナー進入はとても軽快。バンクしてからもフロントの接地感がダイレクトに伝わってきて、サスペンションが入り込んだ状態を維持しながら安定しながらさっと向きが変わる。リアタイヤのグリップを常に把握でき、立ち上がりでの加速でのトラクション性は良く、リアタイヤが縦に縦に押し出すよう。トラクションコントロール(DCT)のお世話にならなくてもいい感じ。コーナーリングの自由度は高く、難しさはなく、自然な動きで、幅広いレベルのライダーが気持ちよく走れると太鼓判を押す。
ライディングポジション、エンジンパワー、ハンドリング、ブレーキ、どれもスポーティーながら寛容で、思うように操れる面白さ。短い試乗時間だったけれど、ずっと「これはいいねぇ」とひとりごちていた。DUCATIの新しいスーパースポーツを、私の”お気に入り”に登録した。
(試乗・文:濱矢文夫)
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