2018年6月13日
JAIA輸入二輪車試乗会より 「BMW R nineT Urban GS」試乗 『都会にもマッチする デュアルパーパスよりもっと舗装路向きに仕上げたモデル』
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗
■BMW Japan – Motorrad http://www.bmw-motorrad.jp/
“G/S”とは、G(ゲレンデ=オフロード)とS(シュトラッセ=オンロード)の略で、言わばデュアルパーパスモデルという意味。その前にアーバン=都市というのが付いているのがキモである。「名は体を表す」とはよく言ったもので、そう、これはデュアルパーパスよりもっと舗装路向きに仕上げたモデルなのだ。
今も熱狂的なファンがいる1980年代のR80G/Sのイメージを持って登場したR nineT アーバンG/Sは、その名から分かる通り、空冷水平対向2気筒エンジンやスチールパイプを使ったフレームのレイアウトなどR nineTがベースになっている。赤いシートにスリット入りビキニカウルなど、ディテールは違うけれど、R80 G/Sを感じさせる雰囲気がそこはかとなくあり、写真より実車はスタイリッシュで魅力的に感じた。
前後17インチホイールでフロント倒立フォークを履いたR nineTとは違い、ワイヤースポークでデュアルパーパスらしさを出したホイールは、フロント外径が19インチとより大きい。フォークはインナーチューブ径43mmの正立のテレスコピックタイプ。これに合わせて、ステアリングヘッドのアングルが変更されている。幅の広いパイプハンドルのグリップを掴むと身長170cmの私だと、ちょっとだけ姿勢が前傾する。アップライトなポジションで背筋がシートに対し垂直になるようなオフロード的なものとはちょっと違う。
フロント外径が2インチ大きいホイールを履いたハンドリングは、ヒラヒラとした軽快性があって好感触。リーンしながら曲がっている時の動きが素直で自然なんだ。試乗車が履いていたタイヤはストリート向けエンデューロタイヤという、MetzelerのTourance Nextだった。フロント120mm/リア120mm からフロント125mm/リア140mmとホイールトラベルはR nineTより若干増えているが、本格的にオフロードも走れるものと比べるとロードスポーツに近いスペックだから、高速での切り返しも軽快で、よっこいしょ、となる的な動きが小さくて気持ちよく操れる。コーナーでのナチュラルな動きは個人的に17インチで独特な乗り味のR nineTより好きだ。気張ること無く、どのシーンでも安定性が高いので怖くなく、簡単に走らせることができる。とにかくクセがない。
フラットツインエンジンは、ブリッピングすると車体が傾くほどトルクリアクションが明確に出て存在を主張する味付け。スロットルを開けて加速すると、バサバサとした歯切れの良い音とともに、適度な鼓動が心地よい。1169ccの豊かなトルクで押し出すように加速する。驚くような速さではないけれど、物足りないと思うことはない。エンジンパワーとハンドリングのバランスがいい。高いギアに入れてスロットルを大きく動かさず、流すように走ると、滑らかさが出てきて気持いい。ちょっと気合を入れてスポーツ走行をすると、吹け上がったエンジンの回転数が、スロットルをオフにしてもなかなか落ちないのがもどかしく感じるけれど、逆にオートバイから、そうやって走らずにもっと気楽に行こうと諭されているようだ。
これまで多くの優れた車輌を送り出してきたBMWの方向性とはひと味、いやふた味ほど違う。走行性能よりテイストフルな雰囲気を楽しむために割り切ったように作られたこのシリーズだが、このアーバンG/Sは、その中でも使い勝手が良いと思った。ハンドルのキレ角はそれほど大きくないけれど、2車線くらいの幅のUターンで困るようなこともない。今回はダートに持ち込んで試してみることはできなかった。それでもより舗装路向きと表現したのは、この舗装路でのハンドリングからだ。デュアルパーパスというよりスクランブラーやネイキッドに近い動き。この往年のデュアルパーパス風テイストのネオレトロオートバイは、目を見張るような性能ではないけれど、二輪ライフを彩り豊かにしてくれそうだ。走る楽しさは一元的に語れない。それをアーバンG/Sは改めて教えてくれる。
(試乗・文:濱矢文夫)
『R nineT URBAN G/S試乗インプレッション』のページへ http://www.mr-bike.jp/?p=138039
■BMW Japan – Motorrad http://www.bmw-motorrad.jp/