Ninja 400Rと兄弟車
キャスター/トレールの値などがわずかに違うが
走りの性格ははたして!?
エンジンからフレーム、そして足回りと、このER-4nとフルカウルバージョンのNinja 400Rの違いはといえば、あくまでカウルとノンカウルの違いと言っていい。事実スペック上ではキャスターがER-4nの方が30′少ない24°30′、トレールがNinja 400Rの106mmに対して102mm、あとはカウルの影響といえる全高と最低地上高、そして車重が4kg違うだけだ。
カウル付きとノンカウルの違いがあってもハンドルは同一形状に見える。リリース上ではER-4nの方にのみ“D断面スイングアーム”を採用している、と記載されていたが、これもNinja 400Rと同一だろう。
Ninja 400Rでは段付ウインドスクリーンを備えたフルカウル中央にはダクト状のくぼみがあり、Ninja一族のイメージを踏襲した顔つきだったが、ER-4nでは上下二眼のヘッドにさらに上部にポジションランプを備えた独特の面長フェイスとなっている。
まるでウインカーのようにも見えるのだが、本来のウインカーはラジエターシュラウドに埋め込まれている。
以上がNinja 400RとこのER-4nの違いだ。
今やスーパー・スポーツとスーパー・ネイキッドは全くの別物、共通するのはエンジンベースくらい、というリッタークラスの“兄弟車”たちとはずいぶん事情は異なる。
それもそのはずで、わずかな販売台数しか望めないの国内400クラスのマシンを、2車種も開発する余裕はどこのメーカーにもないだろう。それだからこそあえて400クラスに新型マシンを投入してくれたカワサキといい、グラディウス400を放ったスズキといい、メーカーの心意気を感じる、というものだろう。
重箱の隅をつつくような解説はやめにして、バイクは走りがすべて、さっそく濱矢のインプレッションをお読みいただこう。
カワサキのお家芸、スポーツパラツイン
存在感のあるスタイルと気ままに走れる楽しさ
大型二輪免許が取りやすくなったこともあって、昔ほど400クラスが盛り上がらないのは事実だ。だけど、普通二輪免許所有者のため、エントリーユーザーのためにも400クラスは必要なわけで。使い手側も「もうだめ」と諦めたりなんてしたくないし、メーカーもそう思って欲しくない。400は死なない。
だから400クラスに、カワサキからNinja400Rに続いて、また新しい、魅力的な1台が加わったことを両手放しで喜びたい。運転中に両手放しで喜ぶのは危険だからやめましょう。
Ninja400RがER-6fの排気量ダウン版であるように、ER-4nはその名から推測できるとおり、基本はネイキッドスポーツモデルER-6nの構成のままボア・ストロークを小さくして排気量を下げたモデルだ。
ER-6nがベースだからといって、車体は大柄ではなくコンパクト。身長170cmのボクが乗っても足つきは良好で、ハンドルグリップは無理のない位置にある。
しかし、なんと存在感のあるデザインだろう。間違いなく他のバイクと見間違えることはない。ちらっと見ただけで、ER-4nだと判る。日本車っぽくないダイナミックな面と線。
エンジンは水冷DOHCパラツイン。スポーツパラツインは、実はカワサキのお家芸なのである。同じ400クラスには、古くはZ400、80年代はGPZ400Sがあって、下の250クラス、上の750クラスにも昔から多数存在している。ずっとスポーツパラツインを送り出してきたメーカーだ。
ER-4nのパラツインはものすごく低回転で粘るエンジンだった。東京の街中でもトップ6速に入れっぱなしのまま流して走れる。6速、2千回転で約40km/h。3千回転で約60km/h。そこからも当然、もっと回転数が下がったアイドリングに近いところからでもギアはそのままスロットルを開けるだけで加速していける。
そんなに豊かでフレキシブルな低回転粋があるから、試乗中、間違って2速発進をしてしまったけれど、何事もなかったように普通に走り出せた。
スポーティーな加速を楽しむなら、7千回転から。しかし、そこでビュンビュン走るよりも、高めのギアに放り込んで4千回転以下で流して走る方が、大きくはないが確実にあるパルスを感じられて、快適で気持ちよかった。4千回転から7千回転までの間は、人によって少し退屈に感じられるかもしれない。
アグレッシブな見た目と違って、トコトコと走る方が楽しい。そっちの方が燃費も良いだろうしね。
ブレーキは必要かつ充分。効きもタッチも申し分はない。試乗は雨模様の街中だったので、動きの全てを体感できなかったのは残念だったけれど、スポーツネイキッドらしい軽快で素早い安定した動きを見せてくれた。もうちょっと長くいろんなところで乗ってER-4nの魅力をディープに探ってみたい。
400に個性的なモデルが増えてきた。少しずつだけど盛り上がってきている。ER-4nから起死回生の大役を担うに充分なポテンシャルを感じた。面白くなってきたぞ。