濱矢文夫プレゼンツ 東京23区区役所巡り・銅像見物の旅
最近のミスター・バイクは
「遊び心というかおバカ企画が少ない」とお嘆きの貴兄へ
「東京23区の区役所に銅像があるんですよ。見に行きませんか?」
ほうほう、ちょっとタモリ倶楽部っぽくておもしろそうじゃない。
「でしょ!僕はナビ付きのフォルツアでぐるーっと」
僕は? んじゃオレは?
「電車大好きなんでしょ」
へ?
こうして久々の意味のありそうでほとんど無い
「区役所の銅像巡り」+「バイクvs公共交通機関」異種格闘技戦が決定した。
ルールは単純明快。23区区役所を全て巡り、銅像の写真を撮って先にゴールした方が勝ち。
師走前の23区を銅像を求め駆けずり回ったその結果は!?
「ウサギとカメみたいになったりして。はははっ」
「駐車場探してる間に先に行かれちゃったりして。へへへ」
午前6時半、 濱ちゃんは嬉しそうにナビを操作しながらこう言った。余裕ぶっこきプルコギの、ウサギ目線で。
確かにバイクは小回りが効くし渋滞にも強い。燃費もいいから経済的でもある。最大のネックは駐車スペースが充分に確保されていないという、政治的人為的な点だけなので、濱ちゃんが勝利を確信しているであろうことも、また心配している点も至極最もな話。
区役所という公共性の高い施設にバイクの駐車スペースくらい用意されているだろうが、北海道カントリーサインの旅(解る人激しくうなずいて下さい)や、讃岐うどん屋遍路ではなく、東京都内、しかも公共交通機関が整備されている(であろう)区役所巡りならば、いい勝負になるのではないか。
さらにナビに頼り切って下調べを一切していない(であろう)濱ちゃんに対し「みんくるガイド」をよだれべったりにして一夜を共にするという艱難辛苦幾星霜(かんなんしんくいくせいそう=間単位言うと「苦闘」した)で順路を練り上げた(=でっちあげと読む)。
「みんくるガイド」とは都バスの路線図で、都営地下鉄の駅で無料配布している。地図にもなるし、主要な施設も掲載されているから、都内を駆けずり回る時は一部もらっておくと便利なすぐれものである。
お金を掛けず(経費でない=自腹)、できるだけ歩かなくて済むようにみんくるガイドで路線を捜しtobus.jpでおおまかにバス時刻を調べればテレビ東京「路線バスの旅」だ。できるだけ歩かずに楽に安く回れるように考えた(つもり)だがしかし、銅像捜査にどれくらいの時間がかかるかまではわからないので、正確な時間までは読めない。
みんくるガイドにあるバス路線でも1時間に1本とか朝夕のラッシュ時のみとか、中には1日1本という23区内とは思えないようなドローカル路線もあるので、tobus.jpと組み合わせて活用する。なんたってタダだし。
タダの地図でとタダの検索サイト(通信料はもちろんかかりますが)で計画しても、あらゆる所に人がへばりついている発展途上国(最近はあまり聞かなくなった言葉です)のバスじゃないんだから、さすがに運賃はタダにはできない。
公共交通機関が比較的安い(初乗りJR130円、東京メトロ160円、都営地下筒170円、都バスはどんだけ乗っても1回200円)東京だが、単純計算でも23回は乗り降りするのだからまともに支払っていたら結構な金額になる。
そこで登場するのが「都営まるごときっぷ」。東京都交通局の運営する都営地下鉄(浅草線、三田線、大江戸線)、都電、都バスそして日暮里舎人ライナー(今回乗ることはないだろうけど)が一日乗り放題で、たったの700円。区他役所巡りのためにあるきっぷではないか(ではないけど)。
これで用意は調った。もう達成した気分になってしまう。夏休みの勉強計画を作っただけで宿題全部終わった気になる、あの危険なあの達成感……。
それはさておき、みんくるガイドには23の区役所が全て掲載されて……いなかった。むむむ……
今回改めて気がついたことは、東京都が運営する東京都交通局なのに、他の交通手段を使わなければたどりつけない区役所が4つも存在したこと。ちょっと驚いた。
みんくるガイドを眺めていると都バスは東高西低というか、世田谷、目黒あたりの城西地区はほぼ皆無。同じ税金を支払っているのに700円で乗りまくれる地域と、皆無の地域があるのに暴動が起こらないのはなぜなのか?
いわるゆ下町と呼ばれる地域はそれこそ網の目のように都バスが走り回っているのに、ハイソ(死後)な雰囲気の城西地区は、運転手付きの車で送り迎えが当然で公共交通など使わないのだろうか?
地域住民のみなさんに文句がないのに、都民でもない私がごちゃごちゃ言ってもしょうがない。
で、区役所の直近に東京都交通局の駅やバス停があるAランク、おおむね徒歩10分圏内にあるBランク、都営以外の手段でしか行けないCランクと、あくまで都営地下鉄、都電、都バスの駅や停留所からどんだけ近いかという「都営まるごときっぷ」視点で区役所を分類してみた。
都営三田線の駅が真下にある文京と板橋は文句なく超特A。
目の前に都バスのバス停があり、なおかつそこそこ本数もある江東、江戸川、豊島、足立、杉並は特A。
徒歩ですぐ(おおむね徒歩5分圏内で坂道とかなくて気分的にもすぐ)の港、中央、墨田、台東、荒川、中野がA。
10分圏内(繁華街の中とか階段の上り下りがあるとか気分的にも遠い)の千代田、新宿、渋谷、品川、練馬、葛飾、北がB。
最寄りにないけど歩いて行けないこともないけど、歩きたくない距離の世田谷、目黒はC。
みんくるガイドにすら出ていない太田はDというランキングになる。
これ、あくまで「都営まるごときっぷ」視点なので住民のみなさま起こらないように。
フォローしておくとEランクになった太田区役所はJRと東急の蒲田駅から徒歩1分という他を圧倒する地の利があったりする。
世田谷は東急バスが目の前まで乗り入れているし、目黒は天下の東急東横線中目黒駅の近く。泥棒慶太こと始祖五島慶太の東急グループ牙城ゆえ、都バスがのこのこ入りこんでいく余地がないのかも……
というような予備知識を片隅に入れておくと、このヨタ特集もちっとはためになるような気がしてくるし、23区区役所スタンプラリー(区役所にスタンプはないけれど、お子様の夏休みの自由研究にいいかも)に多いに役立つことだろう。
とまあ、長々と予備知識を並べたのは、要するに負けたから。その顛末は、もっと長いけど……それでは烏賊(以下)蛸(タコな)本文。
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濱ちゃんの後ろ姿を見送って、ぽつぽつ雨も降ってきてまだ薄暗い中、1本目の都バスに乗って運転手さんから都営まるごときっぷを買う。他のお客さんの迷惑にならないよう、おつりなきよう700円用意して最後に乗って買うのがエチケット。でも、この時間大井競馬場からやってくるのお客は誰もいない。
早朝の都内は静かで人も少ない。あと1時間もすれば、あちらこちらからわんさか勤め人や学生さんがやってくるのだが、6時台はの都内は前日の眠りの延長上にいる(←カッコつけてみました)。ほどよく暖房の効いた車内に座っていれば、こちらも前日の眠りの延長上。うつらうつらして、はっと目が覚め、乗り過ごしていなくてホッとして、瞼が重くなりを繰り返す(※以下乗り換える度繰り返す)というスリル満点で品川駅に到着。京急に乗り換え最初の目的地港区役所へ。大門駅で下車してくてくと5〜6分で歩いて記念すべき第一関門港区役所に到着。と、書けばすんなり到着したようだが、地下鉄は出口がたくさんあるので、ちゃんと表示を確認しないとえらい大回りになってしまう。急がば回れ、いや急いでるんだけど回れ(って、どこへ回るの?)で、駅は案内表示をしっかり確認し、案内図もじっくり見て頭にたたき込んだ。そのおかげで迷うことなく到着。 銅像は……すぐに見つかった。しかし、朝っぱらから裸とご対面。ちょっと照れる。そう言えば銅像ってなんで裸なんだろう。しかもお堅いイメージのお役所に裸。高貴なる芸術作品をそういう目線で見ること自体、冒涜なのか?でもなんで裸の女の人?「金太郎じゃダメなんですか?」(白いスーツの某議員風で)。
あと22。先は長いから余計な事は考えず先を急ぐ。中央(足を組んで座っているスレンダーなおねーさん。服を着ているけど、それが妙にセクシー)、江東(困惑気味の裸のお母さんにおんぶされた泣き叫ぶ裸の息子。なんだか震災から逃げているようで心が痛むよ……)とこなすとだんだん(NHKドラマ「坂の上の雲」でよく出てくる松山弁ではない)通勤ラッシュになっているようで、都バス、地下鉄新宿線、都バスと乗り継ぐ。さすが東京の平日朝、座れないどころか満員のぎゅーぎゅーすし詰め状態。「江戸前のすし詰め」を思いうかべ、濱ちゃんはずーっと座って移動できるからいいなあ……と、思いながら4つめの江戸川区へ。
区役所を見回しすも……ない、銅像がない。受付のおねーさんに「銅像みたいなものないですか?」と尋ねると「銅像ですか?う〜ん……ないと思いますよ」とつれない返事。ないものはしょうがない。しょうがないので江戸川区なのに江戸川じゃなくて荒川の水位を表示する塔を「平日の朝っぱらになにやってんだコイツ?」という通勤客から痛いの視線を程感じつつ、そそくさ撮影。ついでに水たまりのような小さな池も撮っておいた。
「なんでとまんねーんだよ」とぶつぶつ言い続ける(酒臭い)オヤジを乗せた都バスから、新小岩駅前で京成バスに乗り換える。
びゅんびゅん飛ばす都バスに慣れてしまった身体に、狭い道ををのろのろ走る京成バスは、田舎のバスに乗っているようで旅気分。しかも葛飾区役所は、なんいもないところにあるの? という閑散とした住宅地の中にあった。
腰にカーディガンを巻いた裸のガタイのいいおにいさんを事務的に撮影し、ちょこっと離れたバス停までてくてく歩いていると、突然の大雨。たまたま目の前にあったコンビニに飛び込む。あめは強くなるばかり。“安物買いの銭失い”にならぬようすぐ壊れるビニール傘ではなく、1000円もする傘を購入。葛飾区で1200円も使ってしまった……。
冷たい雨の中とぼとぼとぼとぼとぼとぼと結構歩いて国道6号沿い青戸車庫バス停へ、到達し時刻表を見れば1分前に出たばかりで15分待ち。雨だし寒いし腹は減ったし、目の前のファミレスで暖かいもんでも食べたいところだが15分は中途半端。
乗り遅れても困るので、バス停で待つ。もう10分くらい経っただろうと時計を見てもまだ1分。ぼーっと立っている15分は結構長い。するとぼちぼち人が集まり1分前には結構な行列になった。結構な人数と結構でない人数の境目を知りたい人は「お願いランキング」にでも投稿してみてください。
ジャスト10時30分時間通りに浅草寿町行きのバスは来た。結構な交通量のある水戸街道を定時運行するとは、さすがプロ。日本の公共交通機関の正確さは間違いなく世界一と心で拍手。、金町(亀有の先)始発ですでに結構人が乗っていた。さらに結構な人が乗ると大結構な混雑になった。
目の前の車庫から出てくる始発だから楽に座れると思い込んでいたからショックは大きい。しかも浅草まで結構な時間乗らねばならない。さらに途中のバス停からも次々に結構なおじいおばあが乗り込み、結構だらけで結構な時間は結構つらい。しかし、ホントにおじいおばあだらけ。草39系統はとげぬき地蔵と肩を並べるすごい人気だ。
ぎゅうぎゅう江戸前すし詰めで、おじいやおばあは浅草寿町ではなく、冥土に行ってしまうんじゃないかと心配になるが、「今日は混んでるねえ、ははは」「昨日も混んでたよ、ふふふ」と平然としている。買い出し、引き揚げと戦後のどさくさ、モーレツ高度経済成長期時代を力強く生き抜いたおじいおばあにとって、この程度は混雑に入らないのだろうか。
ああ、濱ちゃんは今頃どこを走っているんだろう……などと考える余裕など一切無く、臥薪嘗胆、おじいおばあの間から東京スカイツリー見えるリバーピア吾妻橋というしゃれたバス停でやっと下車。降りたのは私ひとりだった。
ふらふらになりながら墨田区役所へ。豊流というおすもうさんのようなタイトルの銅像は室内にあった。鳥(鳩?)付きの裸の女性。ちょっと幼くないか……児ポ法は大丈夫か……その奧にライオンみたいなのもあったのですっかり気がゆるんだ。目の前にあった墨田区役所前バス停にいたががらがらのバスにそそくさと乗り込んでしまった。だから隅田川沿いにあった超大物の見逃してしまった……
「え〜っ!!!!!! 勝海舟を見なかったんですか!!ふ〜ん(ニヤッ)」勝ち誇る濱ちゃんの顔を見るのはまだ10時間後の話。
隅田川を挟んですぐ隣の台東区役所の裏手の小公園にでんでん虫に乗った?子供に時計の支柱にでっかいせみ、ダックスフンドと味のある銅像を発見。しかしカップ焼酎を足下にできあがったおじさんが、闘志満々で眼を飛ばしまくるので早々に退散。じっくり観察したかったなあ……
上野バイク街を横目に昭和通りを横断し上野駅からはいつ乗っても混んでいる地下鉄日比谷線-東武伊勢崎線で大団地のある竹ノ塚へ向かう。竹ノ塚まで北上し都バスで足立区役所に南下という、急がば楽して回れの頭脳派ルートを描いた。しかし電車の中で路線図を眺めていたら次は梅島駅。梅島? 足立区役所はたしか環七の梅島陸橋近くのはず、三角形の二辺を大回りすより一辺を歩いた方が早いんじゃないかとひらめいてしまった。ピタゴラスの定理である(違うと思う)。しかも別払いの東武の料金が20円も節約できる。なんという僥倖。素早く電車を飛び降り、梅島駅を出れば「足立区役所→」の道案内もある。
が、しかし足立区役所は遠かった。10分以上歩いて疲れ果てて20円の得。銅像を探し広い庭をうろつくも、ハクション大魔王のツボ、ありがちな金属製のぎざぎざ、意味不明の平べったい石のオブジェしかなかった。
あまりに熱心に捜したので1時間に2本しかない浅草雷門行きのバスに乗り遅れた。また歩くのかよ……思いながらバス停を見ると北千住駅行きのバスがある。
え? わざわざ梅島や竹ノ塚まで行かなくても、手前の北千住駅から足立区役所に行くバスが結構ある。しかも始発が竹ノ塚駅って……木を見て森を見ず。始発を見て終点を見ず。初めから北千駅から都バスに乗ればよかった。なにがピタゴラスだよ……策士策に溺れる、いや無策士、無策に溺れるだな、歩き疲れた上に心の翼も大きくしなった。
このロスタイムに濱ちゃんはずんずん進んでいるんだろうなあ……と暗澹となるが、濱ちゃんも結構右往左往していたことを知るのはこの9時間後である。
それはさておき6時間近くかかって8ヶ所。一区役所平均45分。まだ半分も回っていない。単純計算すると(23-8)×45=約11時間半……今日中におわるんだろうか。さらに気分が重くなる。
三ノ輪で地下鉄を降り、ちょこっと歩いてレトロな雰囲気の三ノ輪橋から都電荒川線に乗る。荒川線沿いの荒川、北をパパぱっと攻略して……と思ったら、荒川で結構時間を食った。 その理由はきっと濱ちゃんが詳細に書くだろうから、ここで書かないけれど。ホントにここは区役所なの? という不思議空間であった。じゃあ、もう一度と言われても行かないだろうけれど。
都電の王子駅前と飛鳥山の中間点という意地悪な北区役所の入口にあった激走する馬上で横笛を吹く女性を見ても、荒川の後ではインパクトが半分以下。しかし、この銅像、ちょっと目立たない所にあったためバイクの濱ちゃんは見逃していた。むふふ。「歩くのも悪いもんじゃないね」と、ニヤリし返し勝海舟の仇を取っるのは、まだ9時間先の話。
新庚申塚で都電と別れ中山道(国道17号線)を少しあるいて三田線西巣鴨へ。そろそろ歩くののがしんどい。この途中にすごくおいしい立ち喰いそば屋さんがあるのだが、腹が減りすぎ歩き疲れ、時間に追われ食欲が湧かずパス。
無感情な銅像探査マシーンになりつつ2駅乗ればその名も板橋区役所前。階段を上れば国道17号の上を首都高速道路高架が通り、その脇にそびえ立つ板橋区役所。板橋という名前から、のんびしした雰囲気を想像していたが、車はぶんぶん走り高速道路が視界をふさぐ人工的な場所にあった。
巨大な建築物に対抗するかのように銅像も力強くでっかいのがどーんとあった。これが葛飾区役所など閑散とした所なら、数十倍大きく見えることだろう。やるねえ、板橋区。
巨大銅像を堪能し階段を下りて三田線で二駅戻って西巣鴨、また満員の都バスに乗り換え豊島区役所前へ。豊島区役所はバス停の目の前。池袋駅も近い大都会東京を控える豊島区役所だが、立地条件とは裏は裏腹に23区区役所中1〜2を争うような無機的な昭和チック(=古い)。入口両脇にオブジェががあり(これもちょっと古くさいイメージ)、館内も手狭で薄暗い(イメージ)。銅像は……なぜかポスターを貼った衝立に隠されるよう裏に2体発見。警備のおじさんに撮ってもいいですか?と尋ねたがなぜか無視された(聞こえなかったのかも?)ので衝立の間にカメラを突っ込んで無理矢理撮影し「なにやってんだ?」的視線を感じる前に速攻で退散。衝立に隠れていたので濱ちゃんは見逃していた。ふふふ!と溜飲を下げるのは8時間後。
池袋駅東口まで人混み(人ゴミと書くと無機質で都会的……)に流されて〜♪移動。そこそこ混んでいる(=結構混んでいるより空いている)と楽に座れた都バス都02乙系統で文京区役所へ。
東京ドームの真横、文京区シビックセンターというCVCCマニアにはおしっこちびりそうになる巨大なビルディングの中に区役所があった。豊島区役所とは真反対のおっしゃれ〜&巨大なシビックセンターは内部が吹き抜けで、高層階には円盤のように張り出しておりレストランがる。それよりもオブジェは?と探し回りるが広すぎて一苦労。屋上庭園(天空の緑)というのを見つけ行ってみると、中途半端な空間(とはいえ普通の住宅なら庭付き一戸建てが立つくらいの空間)に中途半端に樹木が配置され、なにを思ったのかチェス盤のオブジェがどーんと作られていた。こんなもんで空間占有するなら普通にベンチでも置けばいいのに……。ちなみにこの庭園の真横は後楽園遊園地で、ビルの上を走り抜けるジェットコースターが見え、ぎゃ〜っと閑静を破る歓声が感性をくすぐ……らない。
庭園のオブジェはともかく、文京区役所は各所へ向かう都バスが集まる春日駅前バス停の前、地下には三田線春日駅とアクセスはバツグン。荒川から3時間で5ヶ所と大幅にアベレージアップで気分がいい。というか歩く距離が少なくて単純に嬉しい。三田線で古本屋さんの街神保町まで2駅、新宿線に乗り換え1駅、であっというまに九段下。「
東京だよおっかさん」で有名な靖国神社や「大きなたまねご」の武道館がある東京の真ん中だけあって、人がすごいすごい。しかもなにかの会合があったようで揃いの茶封筒を持った老若男女がと塊となって駅へと押し寄せてくる。その巨大なうねりに逆らい千代田区役所を目指すも、わんさか押し寄せる「人混みに流されて〜♪」思うように前進できない。
距離的にはそれほど離れていないはずだが、疲労困憊して千代田区役所に到着。文京区に対抗するように近代的で「そこでカメラをかかえてうろうろしているおまえは明らかに不審者か!」的視線の鋭い警備員さんが立っており中に入りづらい。という言い訳を即座に考え、外に丸いやつと竹藪みたいなのがあったのでちゃっちゃと撮って、「人混みに流されて〜♪」引き返す。
茶封筒の人達と共に満員の新宿線で3駅移動し新宿三丁目。さすがは新宿の「人混みに流されて〜♪」というかかきわけて地下街を結構歩いて新宿区役所へ。荒川〜文京のドアtoドア感覚から一変し、千代田、新宿と歩く距離が長い、いや人混みで非情に長く感じて疲れが倍増。荒川以来、久々に対面した裸の女性象は「ふん、今更あやまっても遅いわ。ちゃんちゃらおかしくって、へそでお茶が沸いちゃうわよ」と完全に手遅れになった男女関係を感じさながらも、裸ということはこの後意外な展開で関係修復か!と深読みさせる、まこと新宿に似合った銅像だった。
「人混みに流されて〜♪」歩き疲れた頃、がらーんとした大江戸線新軸西口駅にたどりついた。ここから一駅乗って都庁前でまた乗り換え。
大江戸線は都庁前から9の字を描くようにぐるーっと都内を巡り練馬方面(9の字のさきっぽ)に向かうので、9の字始点の一駅先になる新宿西口から練馬方面に向かう場合、ぐるーっと9の字をトレースすれば乗り換え不要だが、時間がかかりすすので一駅戻って始点となる都庁前で乗り換えが必要になる(この説明で理解してもらえるかどうか心配)。石原都知事が「こんなもん環状線じゃない!」とご立腹されたのが実感できるまんどくさい瞬間でもある。
大江戸線はリニアモーターで走るハイテク(でもリニア新幹線のおように浮上するわけではない)だが、建設コスト削減=トンネル断面を小さくする=電車も小さい=狭い。普通の地下鉄から乗り換えると遊園地のおもちゃの電車みたいに感じる。でもこれがリニアモーターで走るハイテク(でもリニア新幹線のおように浮上するわけではない)らしい。
ラッシュ時には草43系統の都バス並にぎゅうぎゅう大江戸すし詰めになるだろうと、心をいためつつ練馬へ。地上に上がると外は真っ暗。練馬駅前が真っ暗ではなく、陽が堕ちて真っ暗ということなので誤解なきよう。時刻はまだ17時なのに、まこと秋の日はつるべ落としじゃ。真っ暗だけど賑やかで明るい練馬駅から練馬区役所へ歩く。荒川→文京の反動か、千代田から一変して歩きが続く……とはいえ、自分で練った順路だからしょうがない。座ったまま移動できるバイクって素晴らしい……
お役所仕事という言葉のとおり市役所は17時で閉館。とぼとぼ歩いてやってきた練馬区区役所はたいそうりっぱなビルであったが、玄関前は真っ暗。目を懲らして見ると桃太郎のような子供と、そびえ立つ長〜い銅像を発見、真っ暗な正面玄関前でばしゃばしゃフラッシュを炊くのも不審者まるだし。写るかどうかは定かではないし、どうせ濱ちゃんが撮ってるだろうとほとんど投げやり撮影。すると目の前の京王バスのバス停に「中野駅」とあんどんえおともしたバスがやってきた。
当初の予定では都営まるごときっぷを最大限活用するため、練馬駅までもどり大江戸線で東中野まで戻ってJRで中野という、三角形の二辺を回る回り道だけど追加料金130円コースを予定していたが、梅島の恐怖を思い出し京王バスに飛び乗った。追加200円と70円増だけど、暗くなってきたしタイムイズマニー、すっかり忘れていたがこれは濱ちゃんとのタイムトライアルなのだ。と泣いて馬謖を斬る心境で今度こそ三角形の一辺でワープ。ホントはもう歩きたくないからだけど。
がらがらのバスで一息ついて中野駅前のの中野区役所へ。歩く距離が少なくてほっとするも、区役所はすでに閉館し玄関前のスロープがロープで閉鎖されていた。銅像の玄関前に見えるが遠すぎてとフラッシュは届かない……うーん困った。三脚なんて持ってきてないのでスローシャッターで撮ってもブレブレで使いものにならない。まあとりあえず撮っておけ、どうせ濱ちゃんが撮ってるだろうし。
ポジティブ指向で手持ち長時間露光に挑戦し、不審者扱いされるまえに退散。JRで阿佐ヶ谷に2駅移動し都バスで杉並区役所へ。ひさびさにバス停前区役所で嬉しい。練馬、中野、杉並は京王バスワープ効果でアベレージ20分強をマークした。それはいいが、が、杉並区役所前はホントに真っ暗。しかも道路を挟んだ向かい側は杉並警察署で立ち番のお巡りさんに監視されている(ような気がする)。 銅像を壊すとか盗むとか、もちろんそんなアホなことはするつもりもないが、はちきれんばかりの少女像を疲れたオヤジが、ニヤニヤとフラッシュ撮影するのは不審者か不審者ではないかと言われれば、明らかに不審者だ。裸像でないのが不幸中の幸いだが、杉並区役所前で待ち合わせをしたのに58分遅れてきた彼氏に説教ぶちかましている風なこの少女、微妙にミニスカートひらり。フラッシュに浮かび上がった太もも様が妙にセクシー。中央区のおねーさんもそうだったが、裸像より服像(というのか?)に軽い興奮を覚えるのは、どうしてだろうなぜだろう? そうだ、今日はコスプレ7連発のDVD借りて帰ろーっと。
なぜかちょこっと元気が回復。時間的には中野駅まで戻りJRで渋谷に出る方が早い(約15分)が、160円も追加になるので目の前のバス停から都合良く出ている渋谷行きのバスに乗る。。都バスならタダ(じゃないけど、都営まるごときっぷがあるから)。マネーイズタイムということで。乗り換えでがめんどくさいからでけしてない……。ほどなくやってきたバスはなぜか京王バス。運転手さんに尋ねると「共同運行だから、まるごとパスで乗れますよ」とのこと。へ〜え、最近流行の国際線コードシェア便みたいでかっこいい。青梅街道、環七、甲州街道、山手通りと大幹線道路を走り渋谷駅前に到着。1時間もかかるとは思わなかったが、バイクでやるとあの世に行ってしまう居眠り移動が出来たからので、よしとしておこう。
そうか、今日は金曜日だった。ハチ公前はものすごい人。本日イチバンの人だかり。この人の山をかきわけて渋谷区役所まで歩いて行くのかと思うと、杉並区区役所前の回春パワーと、居眠りで回復したわずかなHPはびゅ〜んと減ってマイナスに。間違いなくこれからハッピータイムを過ごし、あわよくば「君と夜明けのコーヒーが飲みたい」または「送ってきたんだから、ちょっとお茶飲ませてよ」的めくるめく週末の予感のカップルと、「マジやべえっすけど」「ちょーありえね〜」なヤング団だらけの中、カメラをぶらさげた疲れたおっさんは盗撮目当ての不審者かカツアゲの標的……。しかもだらだらと続く登坂。足が痛いよお、カメラ重いよお、ハラ減ったよお。
渋谷区区役所ももちろんすでに営業終了。銅像を捜して真っ暗なバイク駐輪場をうろうろ。バイクやパーツが盗まれていたら容疑者一直線、なので「あれ〜?銅像はこっちじゃないのかな〜」とつぶやいてみるも不審者度さらに倍。発見できず表にまったら、な〜んだあるじゃねえか。石碑の上に三人座る子供、くるくる回っている三人の児童。渋谷区は3人子政策なのか? ほのかな街灯の明かりの中にぼんやり浮かぶ少年の顔は、酸性雨の影響なのか白い跡が……はだしのゲン……ちゃんと掃除してあげてくださいね。
気持ちまで重くなりとぼとぼ渋谷駅にもどる。ぺちゃくやいちゃいちゃだらだら歩くアベックにヤング、綺麗なOLさん、それほどでもないOLさん、……なOLさんはさらに増加。ペースが合わずう゛ぁ〜イライラする。新宿ならばおっさんもいるがほんと渋谷では見ない。狩られるからなのか? 新橋や神田でガキどもがうろうろしていてもガキ狩りに遭う心配はないが、渋谷はオヤジ狩りのメッカ。いやメッカなどというとそっち方面の神様に怒られる。オヤジ狩りの総本山……これもマズイか。
本日最高のスーパー満員な田園都市線で三軒茶屋へ。乗るまでの乗ってから降りてまでも人まみれ。毎朝毎夕これを定年まで続ける勤め人のみなさま、ストレスたまることでしょう……お疲れ様です。
三茶で降りて三茶から東急世田谷線に乗り換え。同じ三茶でも田園都市線と世田谷線の三茶までちょっと歩く。もう歩きたくないが、歩かないことには電車に乗れないのだから歩く。 小さな満員電車にゆられて約4分、松陰神社前に到着。たった4分が長く感じたのは電車のスピードがのんびりだったからだろう。さわやかな休日の昼下がり、見知らぬ町歩きというシチュエーションならばそれも大いによかろうが。ほんとにここでいいの? 渋谷から15分でこれほど変わるのか、ひとも歩いていない、店もない、車もそれほど走ってねえ、なとてもとてもとても閑静な住宅街。こんなところに区役所があるのか? 案内表示もなく、聞こうにも人はいない。間違って引き返す体力も気力もない。途方に暮れていると、中学生くらいの女の子が犬を連れて現われた。「あの〜すいませんが〜」と声を掛けると顔を引きつらせて猛ダッシュ、犬も吠えるどころかおびえるように猛ダッシュ……おいおい、なんなんだよここはそんなに治安が悪いのか??
重い足取りをさらに重くする出来事に直面し、しょうがいのでみんくるガイドを見て……あれ? 世田谷区役所が出ていない……弱り目に祟り目。世田谷区に拒絶されているんじゃないか? そうか、そうなのか、ならば自力で捜してやろうじゃないか! 「あああ〜ああ、ああ〜あああ〜」頭の中に鳴り響く映画「八甲田山死の彷徨」のテーマソングをバックグラウンドミュージックに予想を付けて歩きだす。そういえば、北海道はワインで有名な池田駅前でバイクを止めて地図を見ていたら、すれ違う小学生が「こんにちわ〜」「こんにちわ〜」と次々に大きな声ではっきりと挨拶してくれた。されたこっちがどぎまぎして、「ああああ、っちち、ちわ〜ぁ」と大マヌケに返す始末。池田の少年少女たち、いつまでも北の大地のようなすがすがし大きな優しい気持ちわすれないでね。
池田の優しい子供達の導きか、すんなりと世田谷区役所に到着。もちろん真っ暗。久しぶりに裸婦像とご対面。裸でスキンシップする母と子。突っ込みどころあるけれど、まあ、いいんじゃない。ということにして先を急ぐ。
残るは目黒、太田、品川の3つ。小さい電車に乗り三茶へ。三茶から三茶へ急ぐ途中、濱ちゃんに「あと3つ。むふふ」とメールでもと、携帯を取り出すとメールが着信していた。
“終わりました。感動のフィナーレです19時49分」 えっ? 今は20時40分って、ことはもう1時間前に終わってたの……気がつかなかった……メシも食わず、道草もせず、ひたすら乗り換え(乗車延べ約6時間)歩き続けた(歩行延べ約4時間)のに、あっさり敗れた。
ポキッ。
心のつばさがぽっきり折れた。
気がつくと餃子の王将の中にいた。「とりあえず中生とぎょざーざ」 んぎゅんぎゅうと中生をむ、五臓六腑にしみわたる。ははは! バイクじゃできまい!! でも、濱ちゃんは酒飲まないか……。
もう、いいや。どうせ真っ暗だし。と、目黒、太田、品川をほっぽり出してリタイア。へへへ。笑って下さい。この負け犬を。
バイク誌(WEBだけど)だから出来レースなんじゃねーの?と思う輩は実際やってみるがいい。まず、やるわけないだろうけど。
実はスタートした瞬間に悟っていた。わかっていた。「あっt、おねーさん、ウーロンハイと野菜炒め追加ね」そうだ、すぱぱぱっと走り去るハマちゃんの後ろ姿を見つつ編集部近所のバス停まで歩いていくと、寸前で都バスがずごごごっと走り去った。
次のバスまであと10分。バイクなら10分あれば一番近い品川区役所くらい到着してしまう。
「ダメだこりゃ」
ぷわぁぷわぁぷわぁ♪(ドリフの効果音)が、ほろ酔い気分を加速させた。








